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二時間目 中国の現代詩人とその作品 第5回 顧城

2015-07-06 18:45:40     cri    


 月曜日2の時間目、<スペシャル番組>として中国の現代詩人とその作品にクローズアップしてお送りいたします。5回目にご紹介するのは、「都市遊民」や「童話詩人」と呼ばれる中国の現代詩人、顧城(こ・じょう)とその作品です。

 顧城は、1956年に北京で生まれた現代詩人です。1980年代から90年代の初期にかけて、若者を中心に人気を呼び、世の中と隔絶した理想を描き、子供のような純真さをもつ作風から、「都市遊民」や「童話詩人」と呼ばれています。彼は、僅か14歳の時に、デビュー作「生命幻想曲(生命の幻想曲)」を作り上げ、「天才詩人」と評されました。当時の中国は文化大革命の真っ最中で、顧城は父に連れられて、山東省の農場で少年時代を過ごしました。自然の美しさに感動し、数々の詩を作りました。

 1980年代、文化大革命が終わった中国には、混乱から立ち直り、暗喩を用いて感性を婉曲的に訴える「朦朧詩(もうろうし)」という現代詩の新しいスタイルが誕生しました。顧城はそのスタイルを得意にした代表的詩人の一人です。文革が終わり、北京に戻った顧城は大工を初め様々な職を転々としましたが、詩の創作は諦めず続けました。1977年、デビュー作の「生命幻想曲(生命の幻想曲)」をついに正式に発表し、その後、「一代人(一世代)」や「遠和近(遠くて近い)」などの作品を続々に発表。「朦朧派(もうろうは)」を代表する詩人の一人として認められ、中国国内や香港でも受賞しました。

 1988年、ニュージーランドのオークランド大学に招かれて教鞭を執り、中国古典文学や現代詩などの講義を開きました。しかし、大学生の愛人がいたことが発覚し、大学を辞めました。ですが彼の才能を認めている妻は、愛人との3人の世界を容認し、3人はニュージーランド北部の孤島に移り住み、隠居生活を送りました。だが、現実の生活における現実世界の煩わしさは、やがて理想のエデン園を崩壊させ、愛人はついに家を出て行ってしまいました。振られた顧城は悲しみのあまり、何度も自殺を試みましたが、未遂に終わりました。そんな彼を見ていた妻は失望して、彼のもとを離れようとしました。それを知った顧城は絶望し、1993年10月8日、斧(おの)で妻を斬殺し、自らも首を吊って命を絶ちました。享年37歳でした。天才詩人のとても悲しい結末ですね。1998年、波乱に満ちた顧城の一生をモチーフにした香港映画「顧城別恋(邦名:詩人の恋)」が上映され、話題となりました。

 彼の詩集から、「一代人(一世代)」、「远和近(遠くて近い)」、「小巷(小さな路地)」「水离开杯子(水とコップの別れ)」という三つの作品を選んでご紹介します。

作品一:

 この詩は顧城の一番の代表作で、とても短くて、2つのセンテンスしかありません。現代詩の体裁が非常に自由であることが十分表されていると思います。この詩は、1979年に創作、1980年に詩刊『星』に発表したのち、顧城の詩集『黒眼睛(黒い目)』に収録されたもので、中国朦朧詩の代表作ともいわれています。短い詩ですが、少年期に文革を経験した世代の、自らの信念を貫き自由を求めるという強い意志が反映されているといえます。

《一代人》

     ――顾城

黑夜给了我黑色的眼睛

我却用它寻找光明。

『一世代(ひとせだい)』

――顧城(こ・じょう)

闇夜が僕に黒い目をくれた

僕はこの目で光を探す

作品二:

 これも顧城が創作した朦朧詩の名作の一つです。とても簡単なセンテンスで子供っぽいとも思える言葉が並んでいますが、二人の距離感を婉曲的に非常に絶妙に描いていますね。一説では、この詩は、顧城が妻と出合った時に作ったものといわれています。当時、顧城は、後(のち)に彼の妻になる女性と上海の電車で偶然に出会いました。彼女に一目惚れした顧城は何回もチャンスを作ってデートに誘いましたが、相手の気持ちがなかなか確認できず、告白しようかやめようか、たいへん悩んでいました。そんな中、この詩を作ったといいます。心の動揺など、非常に繊細な気持ちを描いています。

 すべての恋の始まりは美しいものですものね。

《远和近》

——顾城

一会儿看我

一会儿看云

我觉得

你看我时很远

你看云时很近 『遠くて近い』

――顧城(こ・じょう)

君は

時に僕を見て

時に雲を見る

しかし、僕にとって

僕を見つめる君は遠く

雲を見ている君は近い

作品三:

 これは顧城の中期の代表作の一つとされています。「ドアや窓一つもない黒くて狭い路地は、紆余曲折が多く、なかなか出口が見えない。そのような苦しい窮地に陥っても、希望を失わず、古い鍵を持ってぶ厚い壁を叩き続けていく」、これはまさに顧城自身の当時の苦しい心境を語っているとみられています。当時、顧城はニュージーランドに移住して愛人と出会い、妻や愛人と3人で一緒に暮らすエデンの園を作ろうとしていました。ですが、3人の関係をバランス良く取ることはなかなか難しくて、精神的に疲れきってしまい、人生に対する困惑や不安などの苦しい想いがこの詩を書かせたのではないでしょうか。

《小巷》

――顾城

小巷

又弯又长

没有门

没有窗

我拿把旧钥匙

  

敲着厚厚的墙 『小さな路地』

――顧城(こ・じょう)

小さな路地

曲がりくねって長い

ドアも

窓もない

僕は古い鍵を持って

厚い壁をコツコツ叩く

作品四:

 これも顧城の中期の作品の一つです。理想と現実のギャップに悩まされながらも走りつづける詩人は、リアルな生活や現実の煩わしさに負けてしまい、理想への未練と、現実への無力感をこの詩に描いています。読んでいても、その悲しみが伝わってきます。

《水离开杯子》

——顾城

水离开杯子

杯子里只有水昔日的影子

杯子对着水的影子流泪

泪蓄满整个杯子

我不再敢用心经历什么

也没有力量走出固有的生活

去奢想什么完满和浪漫

我等待着时光在我面前源远流长

在其他匆忙的映照中

模糊自己和一切故事 『水とコップの別れ』

――顧城(こ・じょう)

水はコップから離れた

コップには水の面影しか残っていない

コップはその面影に涙を流す

涙はコップいっぱいに満ち溢れた

僕はもう、心を込めることは何もしたくない

いつもの生活から抜け出す力はないから

ただ、完璧でロマンあふれる夢を見る

僕は時が流れるのを待つ

忙しい日々に照らされ

自分のすべてがぼかされていく

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