朝からしとしと降り続いた雨もようやく止み、しっとりとした空気の中、漢中博物館を歩きました。博物館と言っても、中は公園のようになっているため屋内の展示と合わせて植物の美しさも楽しむことができます。

漢中博物館
ここは、昔「古漢台」と言われ劉邦が漢中王だった頃の宮殿の中に位置し、3つの庭から構成されています。1958年に設立され、石刻の石門十三品陳列館、褒斜桟道史陳列館、出土文物陳列館などがあり、発掘された文化財、石刻、書画などを1000点あまり保存しています。特に、戦国時代に掘られ、世界最古の人工トンネルとされる中国の「石門」とその周辺の崖に刻まれた文字を写し取った「石門十三品」は、文学、歴史、書法の研究において価値を持っているため書道家から高く評価されています。

「石門」を描いた絵
3つめの庭に出ると、目の前にピンク色が広がりました。桜です。ひらひらと舞い降りる花びらが優雅。すっかり見とれてしまい、写真を撮り続けていました。

見事な桜

木のそばには「桜」と刻まれた石

花びらが多い
すると、この花びらがとても多い桜の品種について、同じ記者として取材に来ている方が「桜の色が緑色から次第にピンク色に変わる御衣黄(ギョイコウ)ではないだろうか」とおっしゃいました。どうでしょう。この桜が日本から寄贈されたものであるということを耳にした私は、そばに立っていた警備員の方にお話を聞いてみることにしました。すると、どうやらその日本人の方とは書道家の種谷扇舟(たねやせんしゅう)さんで、1985年に寄贈されたそうです。そして、私が日本人だと知った警備員さんはとても嬉しそうな顔をして、「こっちに来て」と手招きしました。

「漢中石門、日本之師」
大理石の石碑を指さすので、見てみると「漢中石門、日本之師」と刻まれています。そして右側には、種谷扇舟さんの名前があるではありませんか。そう、これは種谷扇舟さんの作品で、題詞の中の「漢中石門」とは漢中博物館にある摩崖石刻、「石門十三品」を指しています。
漢中博物館を訪れた種谷さんの「石門十三品」への熱い想いが、この石碑を通してひしひしと伝わってきました。種谷さんは、「書は古典の良いものに学ぶ」という考えから摩崖碑などの碑文を求めて中国を八十数回訪問したといいます。
桜に導かれ、一つの日中友好の物語を発見した、そんな心躍るひとときでした。 (林)

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