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春の夢 【吉林大学外国語学部 熊怡萱】

2013-09-26 15:00:57     cri    

 ある日私は故郷に帰った。それは懐かしい変わらない春の故郷である。

 私の故郷は中国の北にあるハルビンだ。この時期のハルビンはまだ肌寒いが、大地にはもう春の兆しが見えた。

 私は一人で故郷を流れる松花江のほとりに立って厚い氷の下で半年も動いていないこの川を眺めていた。すると、突然、氷が割れて、ずっと地面のように眠っていた川が今動き出した。めりめりと氷が砕けた音がはっきりと耳元で響いていた。「やっとはるらしくなってきた」と私はぽつんと呟いた。

 北国の春はいつも強い風が吹いていて、凧揚げにはいい時期である。子供のとき、春になると、父はいつも私をここに連れて凧を揚げに来たが、今水面に映るのは私一人だけだと寂しく思っていたら、ふと父の影が近づいてくるのを見たのだ。私は思わず立ち上がって、振り返った。先日、母から電話があって、父は足を骨折してしまい今入院しているところだと聞いたが、もう大丈夫なのかと思って嬉しくて声をかけたのだけれども、声は聞こえず、手を振っても思うように見えなかったのだ。父は片手に凧を持って、もう片方の手は一人の小さい女の子と手をつないでいた。「その子は誰なの。何で父と手をつないでいるの」と思って、私は思わず自分の手に目を向けた。昔、父の暖かくて大きい手に包まれた私の小さい手は、いつのまにか、こんなに大きくなったのか。また父が私の手を包んでくれるかと心配になった。父とその子が走ったり笑ったりして凧を揚げていると、知らず知らずのうちに、日が川に沈んだ。私は二人の後ろについて帰っていった。

 バスを降りて道を渡ったら、昔住んでいた家があった。それは八年前に売った古い家だった。家の前の桃の並木は八年前の春と変わらないまま静かに花を咲かせていた。リラの木の下に立っている好きだった男の子がホワイトシャツを着て微笑んでいた。子供時代の友達は私が見えないかのように、笑いながら私のそばを走って通り過ぎていった。辺り一面、リラの香りに満ちていた。

 私は父とその子の後ろについて、昔の記憶を辿り三階に上った。父は「トントン」と二回ノックした。昔よく聞いた懐かしい音である。ドアが開けられた。ドキドキして、母かなと思ったら、意外なことに四年前に亡くなった大好きだった祖母だった。祖母がまだ生きていたのかと私はあまりにも嬉しくて、「おばあちゃん」と声をかけようとしたが、声にはならなかった。この時、「お帰り」と母の声がした。声の聞こえた方に目を向けると驚いた。料理をテーブルに運んでいる母はまだ若く白髪もなくなっていた。料理がそろうと、四人はテーブルを囲んで一家団欒を始めたのだ。ぺちゃぺちゃ話している女の子、やさしく微笑んでいる祖母、笑っている母と、ご飯を食べながら黙って聞いている父。泣き出しそうになるぐらいの幸せな光景だった。

 「消えないで、消えないで」と私が叫び出すと、ふっと目が覚めた。

 寮にいたのだ。誰もいなかった。ある春に、四人がほとりで撮った写真だけが寮の机に立ててあった。夢だったのか。

 ある日、私は春の故郷に帰ったのだ、夢の中で。

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