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二時間目「CRIインタビュー」(建築家・黒川雅之さん(下))

2013-06-11 18:12:16     cri    

 

今週は引き続き日本人建築家・黒川雅之さん(写真左)と中国人の若者との交流にスポットを当ててお送りします。黒川雅之さんの北京個展を企画したギャラリー経営者の高大鵬さんにも話を聞きました。そして最後は、人生は美を探すためにあるものだという黒川さんにとっての「美」をめぐり、話を展開していきます。

黒川さんは、伝統工芸でのモノづくりは職人が手で素材と対話し、偶然を発見するプロセスなのに対し、近代的なデザイナーの設計によるモノづくりは「予定調和」を求める作業だと言います。また、、建築と産業に二分化され、互いに交流するチャンスが少ない日本の設計業界の現状を受け、業種を跨いだデザイナー同士が交流する「物学研究会」を十数年前に発足させました。デザインに関するこのような交流と研究は今後、日本国内を乗り越え、アジアを視野に入れた活動に展開していきたいと黒川さんは意気込んでいます。

さらに、何よりも自然との融合と調和を重んじる東アジアの文化は、人間と自然を対立的にとらえがちな一神教の文化に比べて、「世界に平和をもたらす」可能性があると黒川さんが強く訴えています。

一方、黒川さんの北京個展を企画したギャラリー経営者の高大鵬さん(写真右)は「黒川さんの作品と人柄にほれ込み、ビジネスよりも個人の趣味で打ち込んでいる」と言います。かくも黒川さんに惹かれた理由はどこか。詳しくはどうぞ番組をお聞きください。(王小燕)

 

■高大鵬さんのインタビューから

Q:最初に黒川さんと知り合ったのはいつですか。

A 2010年の上海でした。当時、上海で行われた展覧会に黒川さんの作品も展示されていました。先生の作品のみならず、人柄にも心を打たれ、一気にファンになりました。もっと多くの方たちにもその良さを知ってもらいたく、個展を始め、黒川さんを中国に紹介する一連の企画を始めました。

 

Q どういうところに惹かれたのですか。

A 黒川さんの作品には実に多くの素材が巧みに使われており、実際に手にとってみると、デザイナーが実に工夫を凝らしていることが良く分かります。

また、今年75歳にもなる黒川さんは、いまも毎月のように北京に飛んできます。何故このように一生懸命に働いているのかと聞きますと、「自分にはやりたい仕事がまだたくさんありますが、残された時間があとどのぐらいあるのかは分からないので、やれるだけのことはやりたい」と答えていました。若者も顔負けするぐらいの黒川さんの勢いにはいつも感心させられます。

 

Q 今回の個展の意義をどう考えていますか。

A 黒川さんは素材の特性を生かしたデザインを訴えています。今回の展示会のユニークなところは、来場者に陳列された品物を自由に手にとって、実際に触れてもらうことを大歓迎していることです。触ったりしているうちに、素材の一つ一つの魅力を体感してもらいたい。黒川さんが今度中国本土で出される本には25種類の素材が使われています。色や形ばかりを重要視する現在の社会に、素材の大切さを訴えたところに大きな意義があります。

この展覧には数多くの学生さんたちが来場し、楽しんでいただけました。特別展が69日に終わりますが、その後常設展に切り替えて展示を続けていきます。

 

Q 黒川さんとのビジネス的な協力をどう考えていますか。

A 確かに私はいま、黒川さんのことを中国に広めていく様々な企画をやっていますが、

ビジネスのために提携をしたというよりは、私が黒川さんの世界にのめりこんでしまったので、自分の趣味の部分から打ち込んでいる面が大きいです。

黒川さんとめぐりあったお蔭で、私は日本を知るようになりました。実際に行く前には日本に対する想像がありましたが、それが実際に行った後、現実の日本は自分の想像していたイメージと違うのだということを良く分かりました。

元々が中国から伝わったものですが、それがさらに精巧なものになって改良されたものが日本にたくさんあります。欧米に比べて、距離がずっと近いだけでなく、心理的にもなじみ深く感じます。知っているようで実は良く知らない、また新鮮に感じるものがたくさんありました。

黒川さんを通して知った日本はそんなたいへん魅力的な国でもあるのです。

 

Q 今後の計画は?

A 黒川さんの著書の翻訳については、6月の『素材と身体』のほか、9月にはあらたに「八つの日本の美意識」を翻訳、出版する予定です。来年にも引き続き3冊出す予定です。

 また、6月には黒川さんの案内で日本の職人を紹介するドキュメンタリの撮影を始めます。2年間かかる企画で、22人の職人にスポットを当ててお伝えしていこうと計画しています。日本の伝統工芸の魅力を黒川さんに案内人になってもらって、紹介していきます。これと同時に、中国国内でも職人をテーマとするドキュメンタリの撮影と制作を始めます。完成した後、中国のテレビ局での放映を目指しています。

 

Q 日本の職人のどういったところに惹かれたのですか。

A 私は黒川さんの案内で初めて日本に行った時、京都や金沢など伝統工芸の盛んなところを見学させていただきました。30歳から40歳の若者、中には海外留学の経験者もいましたが、勉学が終わった後、家に戻り、家業を受け継いで頑張り続けています。現代社会を生きながらも、彼らは外の世界の魅力に惑わされずに、古来の伝統工芸を大事に守るためにコツコツと頑張っています。

日本の伝統工芸や物づくりが高く評価されているのは、このような仕事に熱心に打ち込む若者がいるのと、何事にも真摯に取り組む精神があることを身をもって知りました。そういった日本の良いところをもっと多くの中国の若者に知ってほしいと思います。そうした勉強を通して、中国自身の物づくりの力を高められたらと願っています。

 

【黒川雅之(くろかわ まさゆき)さん】
 
1937年愛知県名古屋市生まれ
 
建築家・プロダクトデザイナー(金沢美術工芸大学博士)

 建築設計から工業化建築、プロダクトデザイン、インテリアデザインと広い領域を総合する理論として「物学」を主張して、物学研究会を主宰しています。
 
20074月には株式会社Kを設立して自分のデザインした作品を中心に製造するプロダクションを開始。

 著書に「八つの日本の美意識」「デザイン曼荼羅」「反対称の物学」等多くのプロダクトデザインを手がけ、多数の賞を受賞。

 主な作品にはN.Y.MoMA、デンバーミュージアム、メトロポリタンミュージアムN.Y.などに数多くの作品が永久コレクションとして所蔵、陳列されています。中国では、2010年に「(もっとも成功したデザイン賞)MOST SUCCESSFUL DESIGN AWARDS 」を受賞。

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