中国のオフィスビルに入ると、エレベーターを待っているところに、液晶ディスプレー(LCD)が取り付けられていて、様々な広告が放映されています。これは、日本ではあまり見かけないが、中国で今、急速に広がっている「ディスプレー広告」です。このビジネスモデルを創設したのは、現在、この分野のビジネスを事実上、取り仕切っている「フォーカス・メディア」社のCEO江南春氏。
江氏は1973年、上海の生まれ。1995年、華東師範大学を卒業。大学在学中は、詩を愛する青年で、『抒情時代』と題した詩集を出版。他にも、学生の自治組織・学生会の主席を務めた彼は、すぐれた経営の手腕も見せました。三年生の頃、自力で100万元の資金を調達して、広告会社「永怡コミュニケーション」を創設。その会社は、90年代末には、年間売上が1億元を超え、華東地区最大のIT広告代理店にまで成長しました。
しかし、市場競争が激しくなっていく中、広告業の荒利益が低下し、ビジネスモデルの転換を模索せざるを得なくなりました。そんな時、2002年初め、上海のあるデパートでエレベータを待っている時、偶然にひらめきました。「エレベーターを待っている間に、CMを流して見せてもらえないか」。すぐにビル会社と交渉し、試作品を作り、提供して、12月には上海のオフィスビルにLCDを設置することが実現しました。
「オフィスビルに出入りする人たちは高所得、高学歴、高購買力を持つホワイトカラーである。彼らは毎日少なくとも4回もエレベーターを待っている。そのわずかの時間を狙ってCMを半ば強制的に見てもらうことができる。一方、その費用は従来のテレビ広告より10分の1に削減できる。これはだれもが着眼しなかった巨大な広告市場である。」
03年5月に 分衆伝媒(フォーカスメディア)を設立。その後、欧米のベンチャーキャピタルより巨額の融資を受け、全国でディスプレイ広告を展開。
「成功の鍵はロマンチックな詩人気質にあるのではなく、一刻も休まずに働き続けていることにある」と打ち明けます。
2005年に、オフィスビルからマンションのエレベーターにも進出し、全国10万台のエレベーターで広告を展開するようになり、同じ年の7月、ナスダック上場を実現。
2006年、全国75の都市をカバーし、98%の市場シェアを獲得し、この分野でのリーディング的な地位を不動なものにしました。現在は、対象エリアをビルのLCDから携帯電話やインターネットに拡大し、広告コミュニケーション分野におけるその影響力を強めています。(Yan)
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