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詩情の秋

2016-01-05 17:17:44     cri    

                           ナビゲーター 黄競

 秋は一年で最も詩情溢れる季節と言われます。秋風に舞う落ち葉も、凛とした秋の花も、枝に蓄えた秋の果実も人々に秋の詩情を感じさせます。中国では秋を讃える多くの詩作が残されてきました。今回の中国メロディーは秋の詩と音楽作品から秋の詩情を味わいましょう。

水墨画のような「芳草無情」

 仏教には「一花一世界,一叶一菩提(1輪の花に世界があり、1枚の葉に仏が宿る)」という禅の教えがあります。秋の詩情も自然界の一輪の花と一枚の葉に宿ります。風に吹かれてひらひらと舞う黄色い落葉は、秋の心寂しさを感じさせます。宋の名詩人・范仲淹の詞「蘇慕遮・懐旧」はこんな秋の詩情を描いた名作と言われています。詩の中の「碧雲天、黄葉地、秋色連波、波上寒煙翠(青き空、紅葉の絨毯、秋の色 川波にせまり、川面を立ち込めるうすもや、さびし)」という句は黄昏時、尽きることがない秋の気配が水面を覆う光景と旅人が故郷を思う寂しさを表現しました。

 1980年代、この詩を元にアレンジした唄「芳草無情」は名歌手・テレサテンに歌った後も、広く歌われ続けています。中国伝統文化の情緒溢れる歌詞がテレサテンの表現力豊かな歌声と相まって、まるで水墨画のように清らかで美しいと評価されました。

最も美しい夜景「平湖秋月」

 秋は詩情に溢れる季節で、こういった詩情は静かな夜にもっとも味わうことができると思う人もいるでしょう。特に、江南地方の名勝地・西湖からのぞむ満月の夜景は昔から秋の最も美しい夜景の一つとして讃えられます。その広々とした水面と湖の周囲にあるあずま屋や楼閣はまるで古代美人のように上品です。宋の詩人・蘇軾の「初晴後雨(湖上に飲す)」は西湖の景色の麗しさと中国四大美人の西施の美を比べて詠いました。その中の「若把西湖比西子、淡粧濃抹總相宜(もし西湖をあの西施にたとえるとしたら、淡い化粧も濃い化粧もいずれも似合う)」という句は最高の傑作と称えられています。

 そんな詩情に溢れる西湖の美しい夜景を描くピアノ独奏曲「平湖秋月」は1975年作曲家・陳培勛が同じタイトルの広東音楽の名曲を元にアレンジしたものです。秋の夜に輝く明るい月。西湖の周囲にあるあずま屋や楼閣はまるで薄絹のように優しく美しい月光に覆われ、西湖はまるで童話の世界のよう。曲は、こんな詩のような情緒に溢れる世界を描き出しました。

愛の唄「鵲橋仙」

 中国では秋の詩情と言ったら、秋の儚さ、寂しい気持ちを思い浮かべますが、また、愛情も秋の詩情における恒久的なテーマとされます。例えば、宋の詩人秦観の詞「鵲橋仙」は最も美しい愛の誓いと讃えられます。その中の「兩情若是久長時、又豈在朝朝暮暮(二人の愛がもし永遠ならば、どうして毎朝毎夕逢うことにこだわることがあるだろうか)」は今でも愛の名句として伝えられています。この詩は、詩人・秦観が才女である蘇小妹と結婚する日の夜、新婦が新郎の才能を試そうとした時、秦観が即興で創作した作品だと言われています。詩人はこの詞を通して、好きな人といつも一緒にいなくても、心は通じ合うもので、愛情は永遠のものという真摯な気持ちを告白しました。そんな詩を元に編曲した唄「鵲橋仙」は、織姫と彦星の説話をもとに書かれたものです。

郷愁に満ちた「涛声依旧」

 「姑蘇城外の寒山寺、夜半の鐘声客船に到る」は唐の詩人・張継の「楓橋夜泊」と言う詩の中の名句で、この詩は晩秋の旅愁を詠じた名作として今でも広く伝えられています。また、この詩をモチーフにした音楽作品も多く残されています。例えば、人気歌手・毛寧が1993年に歌った「涛声依旧(懐かしい波の声)」はこの詩の情緒を元に作られたものです。唄は古い詩の境地を現代人の思いとうまく融合させ、別れた友人や恋人との再会における感慨無量を表し、今でもカラオケの定番として愛唱されています。

番組の中でお送りした曲

1曲目~ 芳草無情(つれなくも芳しき草)

 テレサテンが唄ったこの曲は中国伝統文化の情緒溢れる歌詞がテレサテンの表現力豊かな歌声と相まって、まるで水墨画のように清らかで美しいと評価されました。

歌詞

碧雲の天 黄葉の地

秋色は波に連なり

波上 寒煙 翠なり

山は斜陽に映じ 

天は水に接す芳草 無情

更に斜陽の外に在り

暗たる郷魂

旅思を追う

夜夜 除非(ただ)

好夢の人を留めて睡らしむるのみ

明月 樓は高く 独り倚(よ)りて休めよ

酒は愁腸に入る化して相思の涙と作(な)る

2曲目~ 平湖秋月

 この曲は江南地方の名勝地・西湖の美しい夜景を描くピアノ独奏曲です。元々は広東音楽の名曲で、1975年作曲家・陳培勛がこれをアレンジしたピアノ独奏曲を創作しました。秋の夜に輝く明るい月。西湖の周囲にあるあずま屋や楼閣はまるで薄絹のように優しく美しい月光に覆われ、西湖はまるで童話の世界のよう。曲は、こんな詩のような情緒に溢れる世界を描き出しました。

3曲目~ 鵲橋仙

 鵲橋とは、カササギでできた橋です。七夕の日(中国では旧暦の七夕を祝います)、カササギが集まり、天の川を渡る橋を作ります。宋の詩人秦観の詞「鵲橋仙」を元に編曲したこの唄は織姫と彦星がその橋を渡って会うという伝説をもとに書かれたものです。

歌詞

繊雲は巧を弄し、

飛星は恨みを伝へ、

銀漢迢迢として暗(ひそ)かに度(わた)る。

金風の玉露一たび相ひ逢ふは、

便(すなは)ち人間(じんかん)の無数なるに勝却す。

柔情水に似て、

佳期は夢の如く、

忍びて顧みるは鵲の橋の帰路。

両情若し是(これ)長久ならん時、

又豈(あに)朝朝暮暮たるに在(あ)らんや。

4曲目~ 涛声依旧(懐かしい波の声)

歌詞

漁火が私の目を暖め

あの真心は橋のたもとに残されていた

長年にわたり、再び貴方の傍に戻り

その懐かしい鐘声が 眠れない夜空に響き渡る

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