「老舎記念館」の張文生さんの案内で、中の散策を続けましょう。正面の母屋は生活の拠点でしたが、両脇の部屋には、老舎の足跡や作品が並んでいます。老舎が苦労して学校を出たことは前回、お伝えしましたが、最初から小説を書いたわけではなく、北京や天津で教育の仕事に携わりました。1924年から5年間は、イギリスのロンドン大学東方学院に招かれ、中国語を教え、ひまを見つけては創作活動に取り組みました。
1930年に中国に戻った老舎は、山東省の大学で教鞭をとり始めました。夫人と知り合ったのもこの時代。職業作家としてはじめて取り組んだ作品「駱駝祥子」もこのころのものです。この作品は日本でも翻訳、出版されており、映画も公開されました。舞台は旧社会の北京です。農村育ちで身寄りもない祥子が、北京に出てきて人力車夫になります。必死で働き、お金をため、底辺の生活から脱出を果たそうとする祥子。しかし、次々に襲ってくる悲惨な運命。人をけだもののように変えた旧社会を強く非難するメッセージを発した作品でした。
張文生さんによりますと、老舎は生涯で900万字にのぼる作品を残したそうです。それがすべて、出版されているわけではありません。抗日戦争の多くの文芸作品を書き、新中国成立後は新劇作品にも取り組みました。いま、彼の作品は38カ国語に訳されているそうです。
その一つは「四世同堂」です。三部作からなり、4年がかりで書かれたこの作品の舞台も北京。抗日戦争のさ中、胡同に住む二つの家族の生活を描きながら、抑圧と苦難に耐え、やがて侵略者に立ち向かっていく姿を描いています。
もう一つ、紹介しましょう。「茶館」です。茶館は中国茶を飲ませる喫茶店です。清朝末期から、抗日戦争、国民党政権という三つの時代を背景に、茶館で繰り広げられる人間模様があぶり出されます。没落した役人、貧富の差、封建思想。華やかだった茶館は時代にのまれ、人々の心はささくれだっていきます。これは新劇用に書かれた作品で、古い中国の社会像を描いたものとして、国際舞台でも大きな反響を呼びました。
茶館は北京や上海に、いまなお健在です。店によっては、寸劇を見ることができたり、中国の楽器演奏を楽しむことができます。時間のある方は、どうぞ足を向けてください。
住所:北京市灯市口西街豊富胡同19号
電話:6514ー2612
ホームページ:http://www.bjlsjng.com
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