日中の連携は“マスト” 〜AGC株式会社・島村琢哉会長に聞く〜
中国では2025年の経済運営方針を決める中央経済活動会議が先週、閉幕しました。閉幕後に発表された内容としては、「科学技術のイノベーションにより新たな質の生産力の発展を導き、現代化された産業体系を建設する」「高いレベルの対外開放を拡大し、貿易と外資の安定化を図る」などが、重点取り組み9項目に含まれています。中国が先駆けて開放措置を導入するという「自主開放と単方向的な開放を秩序立てて拡大していく」ことも強調されており、中国はこれまで通りに経済成長による利得を世界各国と分かち合う姿勢が明確に示されました。
中国に進出している外資企業は、中国での事業展開をどのように振り返り、また展望しているのでしょうか。中国に進出する日本企業の一例として、第2回サプライチェーン博覧会の視察を兼ねて先日北京を訪れたAGC株式会社の島村琢哉会長に話を伺いました。
CMG日本語部&央視新聞の共同取材を受ける島村会長
AGCは117年の歴史がある素材メーカーです。中でもガラス分野では、世界トップのシェアです。同社は40年余り前に、中国大陸部での事業展開を始めました。そして改革開放がもたらした高度成長の波にのり、1990年代は建築用やブラウン管用、2000年代からは液晶ディスプレイ用、最近では電気自動車(EV)用や車載ディスプレイカバーガラスへと、製品をグレードアップし続けてきました。
また、家電大手のTCLやパネル大手の京東方科技集団(BOE)などの中国のパートナー企業と緊密な関係を構築してきました。例えば、深センや恵州にあるTCL工場のすぐ隣に、TCLに専門に供給するための世界最大規模の第11世代ガラス基板(2940ミリ×3370ミリ)を製造する拠点を設けました。
これまでに、同社の中国での投資総額は累計数千億円に上り、現在は中国現地法人16社、従業員6000人余りを有し、中国事業は売上高の10%占める規模です。
■量から質へ 「世界の工場」からビジネスパートナーへ
――AGCのこれまでの中国での歩みをどのように振り返られますか。
中国との40年にわたる長いお付き合いの中で、AGCは中国市場の拡大を非常に重視してきました。これだけのボリュームを持つマーケットは世界を探してもそう多くないからです。
中国企業との関係は、投資を始めた頃は技術移転に参画する形でしたが、今ではビジネスパートナーとして、事業を広げていく役割に変わってきていると思います。
AGCは素材産業なので、我々自身が末端の消費者に直接接する機会は少ないのですが、ビジネスパートナーの製品を通じて、中国の社会の発展に素材で貢献してきた、支えてきたという自負があります。
第2回中国国際サプライチェーン促進博覧会でのAGC社のブース(提供写真)
――この11月、上海では第7回国際輸入博覧会、北京では第2回中国国際サプライチェーン促進博覧会が相次いで開催されました。AGCはどちらの展示会にも1回目から欠かさずに出展していると伺っておりますが、島村会長は実際に視察されて、どの様な手応えを感じられましたか。
これまでの出展では、中国でその時に欲がられるファンダメンタルな素材を展示することに対して、来場者が興味を持っておられました。けれども、今回の博覧会を通じて感じたのは、中国のものづくりに携わる方々が次の社会に提供していく価値に対しての関心が非常に大きかったようです。そういうわけで、展示の中身はこれから先、価値を生み出す、あるいは皆さんのビジネスを支えられる素材を意識して展示するようにしていきます。
昔は一口に「中国は世界の工場だ」といい、また、大量に消費される消費財を世界のどこよりも安く、大量に作れるということが、一つの特徴のように言われていました。しかし今では、デジタル化、AIなど技術の進化がものすごいスピードで起きていることが肌で感じられましたし。これから先、中国が大量生産型の生産スタイルから、質を上げた製品の開発・製造・マーケティングへと確実に動き始めたな、と展示会を見ただけで感じられました。
■中国国内のみならず 第三国市場での協力も追求へ
――中国は現在、「新たな質の生産力」の発展に注力しています。そういった一段と高い質の追求は、AGC社の中国での事業展開にも何か変化をもたらしているのでしょうか。
そうですね。今までは中国のお客様に素材を提供するというのが基本的なやり方でしたが、今は一つの戦略的なビジネスパートナーとして、新たな社会的な価値を生み出す製品の開発および製造をしていく段階に変わりつつあります。
ターゲットも中国のマーケットだけではなくて、グローバルベースで、一緒に展開していける可能性というのを非常に強く感じていますし、そこが追求していきたいところです。
第2回中国国際サプライチェーン促進博覧会を視察する島村会長(提供写真)
――中国日本商会が昨年末から、4半期ごとの会員企業向け調査を行った結果、日系企業の対中投資の意欲は安定していることが分かりました。そうした結果を島村会長はどのように受け止められていますか。
中国に進出した日本企業はちょうど今は発展の第2、第3の段階に来ているのかなと思っています。一つは今まで投資してきた事業を、きっちりとキャッシュフローを生み出す安定的なビジネスの基盤として、強くしていくということがあります。それに伴う投資は当然続けていきます。もう一つは、中国のパートナーと一緒に新しいものを生み出していくイノベーションにチャレンジしたい。その時に必要な投資はやるということになりますね。
AGCの場合、今までのガラスを中心にしたパートナーとの付き合いはさらに強くしていくとともに、将来の成長を目指したいのは、モビリティー(移動関連)、エレクトロニクス、ライフサイエンスという三つの分野です。これらについて、この5年ぐらいで相当に投資をして広げてきました。新しい戦略的な事業の中で、モビリティーを例にすれば、これだけEV化が進んだ中国において、我々が皆さんを支えられる新たな技術をまだまだ提供していけると思いますね。
実はEVだけに限らず、例えば、自動車のいわゆるメーター類というのが液晶に変わっているのにつれて、これ用のガラスも、私どもが中国で製造する主力製品になってきています。中国だけではなくて、ヨーロッパにもアジアの他の国にも提供しています。これから先は、「コネクテッドカー」など5G、6Gを使ったいわゆる、自動運転も含めた、自動車のEV化やAI化というところで、我々の素材はいろんな分野で価値を生み出せるものじゃないかなと期待しています。
■経済のブロック化を前に中日の連携は「マスト」
AGC社・島村琢哉会長
――2025年がまもなくやってきます。中日の経済連携についてどのように展望されますか。
中国も日本もそれぞれの課題に引き続き取り組んでいく必要がありますが、コラボレーションすることで、互いの国はそれぞれの経済成長を更に高めていく。これは「マスト」だと思っています。隣国である中国と日本が手を携えて、グローバルなマーケットに対面していく。このようなことをこれからますますやっていく必要があります。
現在、最も懸念すべき事態は、世界経済のブロック化の傾向です。過去は自由貿易協定(FTA)をベースに世界のサプライチェーンが組まれていたことが、ある意味では、世界の安定的な経済成長を支えていたと思うんですね。それが不幸にして、色んな理由で分断されてしまいつつあります。それをやはり改善していくことが大事だと思います。
アジアにおいては、中国と日本がこれまで以上に手を携えて、外的な要因に対してブレークスルーしていく関係を目指すのが、これから大変重要になってくると思います。お互いに目と目を合わせて語り合い、信頼することで、新たな発展や成長を一緒に広げていけるんじゃないかと思います。
(聞き手・構成:王小燕、校正:鈴木)
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4月3日ニュース
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