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日本の小説家・阿刀田高さん

2012-01-13 11:39:11     cri    

文学で日中の心を通わせ、深く親密な共存関係へ

 日本ペンクラブ前会長で、小説家の阿刀田高さんの短編小説は日本でよく知られています。ホラー小説、推理小説、ブラックユーモアなど多ジャンルの小説を書き、これまでの800以上の作品は様々な味わいを醸し出しています。中でも、特に読者に愛読されているホラー小説について、翻訳家の陳喜儒は「背筋に寒気が走るような物語を、何事もなかったかのように実に淡々とした語り口で語っている。それが更に怖さを深めている」と評価しています。

 ユニークな魅力が「奇妙な味」と読者の中で親しまれている阿刀田さんの作品が、今回中国で翻訳出版されることになりました。出版されるのは、800余りの短編小説の中から拔枠した『黒い回廊』『青い罠』『白い魔術師』『甘い闇』の4冊の作品集です。今回は阿刀田高さんに、翻訳出版の感想や阿刀田さんにとっての文学、中日間の作家交流などをお聞きしました。


























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 ■海外の読者で新たな価値が加わる

 ――作品が翻訳出版された感想はどうですか。

 北京はもう3回目になりますが、今回はじめて仕事で来て地元の人と接触し、今までとは違う親しみを感じました。自分の作品が海外で読者を得ることは大変嬉しいことです。物を書く者にとって読者というのは非常に大切なもので、また外国の読者に親しまれるのは全然別な意味で、新たな価値が作品に加わるような気がして、本当に嬉しいに尽きます。

 ――これまで大きな挫折はありましたか。また、心の支えは何ですか。

 今までは作品を作り出すまでは常に苦しみでした。とにかく早く終わればいいなと思うほど苦しかったんですが、でも、これでダメかもしれないというほどの挫折は今までにありませんでした。その中でずっと心の支えになってきたのは、自信だと思います。始めの頃はただひたすら一生懸命に書いていて、途中からは、「この前もこんなことがあったけど乗り越えたじゃないか」という自信みたいなものが支えになっていました。それが2度3度と続くと、ますます自信になって行くんですけれど、でも、年齢を考えると、いよいよ今度ダメかもと思った時は本当にだめかも知れませんね。

 ――これまで読者からの反応はどうでしたか。

 読者からの反応をどう読むかは難しいところがあります。100の中98は褒めていて、その98の美味しい言葉をその通り信じてはいけないわけです。その98のおいしい言葉から、読者が本当のことは何が言いたいのかを吟味するのも1つの立場かなと思っています。そこのところの吟味ができないのであれば、始めから読者の意見を聞かないほうがいいというふうに考えています。

 ■翻訳者と文学的オピニオンリーダーの養成を

 ――中国文学の翻訳環境はどうでしょうか。

 中国の現代文化に対する日本の関心は昔に比べると薄くなっています。ある時代までの日本人は漢文ができたものですから、中国の文芸を漢文として知ることができました。しかし、中国とも漢文とも縁がなくなってきて、ある時期から欧米の文芸に関心が移りました。そのため日本では現在、中国文学を専攻する人数や中国文学を翻訳できる人は、欧米の文学を翻訳できる人に比べるとずっと少ないです。また、漢文の時代だったら漢学者として優れた研究者であり翻訳者である人はいるんだけれど、今はそういう文化的なオピニオンリーダーになる人が全然思い浮かばないです。

 ――今の環境をどのように改善すればいいですか。

 まず大事なのは優秀な翻訳者を養成することです。翻訳というのは、作品として出す国の言葉を母国語にしている人でないとできない仕事です。従って日本人がこの問題をきちんと考えなければならないんです。また、優れた技術を持っている翻訳者だけではまだ足りません。文学のリーダーとして敬愛され、文化的オピニオンリーダーでならないといけないんです。

 現在、若い20代あたりに優れた翻訳者が出てきていますが、これからもっと時間をかけて文化的なオピニオンリーダーになっていって欲しい。そうすれば、その人に憧れて同じような道をたどる人もたくさん出てくると思います。これからはそういう人材の養成に努力していきたいと思います。

 ■今だから非常に大切な"文学"

 ――阿刀田高さんにとってズバリ"文学"とは何でしょうか。

 今は、非常に大切なものだと思ってます。経済活動が非常に重視されている世の中です。人間にとって、経済性は確かにとても大切な要素で、だけど、それにばかり頼っていると、人間として大切な部分が失われていきます。アメリカも中国も日本も、少しその危機にさらされているようなところがありますね。お金を儲けるということが、人生で一番成功することだと単純に考えてしまうところがあります。でも、そういう世の中だからから、その価値観と違ったものに目が向くかどうかが、その民族、ひいては地球全体の人間的底力に関わることだと思います。

 確かに文化なんて無くたって生きていけるけれども、より良く生きるためには、経済とは全く別なこういうものが必要であり、私たちの先祖はそれを盾として、人間を豊かにしてきたんだろうなと思います。

 ■作品を通じて中日の心を通わせる交流へ

 ――中国から何か影響を受けましたか。

 日本の文化、特に歴史的文化を考えた時、中国の影響は非常に大きく、日本の文化そのものが中国の影響をうけています。そして、日本の古典や日本の伝統的な文化文芸を大切にするということは、その中に自ずと中国が入っていることをここ数年感じていて、北京に来てまた感じました。例えば、私が書く作品の「奇妙な味」というのは、もちろん欧米の小説の影響を受けていますが、同時に中国の怪談・綺談といったものからいろんな形で影響をうけています。非常に密接に影響を受けているということはないのですが、「ジワ~」と影響をうけるような形での影響というのはずいぶん受けている気がします。

 ――中日間の文学の交流の意義とは何でしょう。

 文学の交流というのは私たちが想像する以上に人間の心を通わせるということにつながるもんですから、例えば、経済的、政治的な交流をする前に、文芸的な交流があったほうが、ずっと外交と経済交流がしなやかにできると私は思います。それに、日本と中国がこれだけ近い距離にあって、共に世界の中で指折りの発展を遂げていて、この二つの国が外交的に、経済的に交流したほうがメリットが大きいことは実に自明な事だと思うんです。そういうものを支えていくものがやっぱり人の心がどこまで通じ合えるかということだと思いますので、その一つの手がかりとして、文学というものが存在していると思います。

 また、ヨーロッパの国同士でもずいぶん戦ったり、対抗したりしていましたが、いざとなれば、手を組んでいます。ドイツとフランスだって、ずいぶん色々な歴史があったけれど、結構互いに尊敬しあって、協力しあっているところがあります。アジアもアジアとして、欧米と拮抗していくには、日本と中国は深く親密であって欲しいと思います。フランス人とドイツ人の関係と同じように、日本人と中国人も互いに敬愛しながら、対抗していくという共存関係が成立したらいいなと思っています。

 ――今年は中日国交正常化40周年、中日間の文学交流への期待はいかがですか。

 文学の交流というのは、作品を知っておかないと交流が成り立たないんですね。お互いに顔を見合わせて話しあうことも大切ですが、本当の効果を上げるためには、文学の作品の交流が必要で、翻訳環境を整える必要があります。しかし、これは40周年だからと言って急にできることではなく、むしろ40周年を機に、少しでも弾みをつけることを考えることが大切だと思います。

 (聞き手・構成:劉睿 取材:劉睿、王小燕、白昊)

 【プロフィール】

 阿刀田 高(あとうだ たかし)

1935年東京生まれ。早稲田大学文学部卒。

1978年『冷蔵庫より愛を込めて』でデビュー。

1979年「来訪者」で日本推理作家協会賞

短編集『ナポレオン狂』で直木賞受賞。

1995年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞受賞。

2003年紫綬褒章。

2007年より日本ペンクラブ会長。

2009旭日中綬章受勲。

現在は新田次郎文学賞、直木賞などの選考委員。

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