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アートフェア「ART BEIJING」創設者・董夢陽さん

2010-09-21 19:21:09     cri    

 アジア一のアートフェアを目指したい

 1993年、中国初のアートフェア「中国芸術博覧会」が改革開放の最先端の町・広州で開かれました。中国では画廊の発展がまだ不十分だったため、アーティストたちの直接出展という変則的な形での開催となりました。アートフェアの準備にかかわったスタッフには、一年前に大学を卒業したばかりの青年がいました。中国山西省の生まれで、美術大学で版画を専攻していた董夢陽さんです。
 その後10年にわたり、董さんは「中国芸術博覧会」の現場で経験を積んできました。中国にも画廊が少しずつ成長してきた中、2002年、当時の会社をやめた董さんは「中国国際画廊博覧会」(CIGE)の創設に携わりました。その翌年、すべてがアートマネージャの参加によるアートフェアCIGEが行われ、韓国、日本、イタリア、アメリカ、オランダ及び中国の百軒以上の画廊が出展しました。
 2006年秋、董さんは独立して 行ったアートフェア「芸術北京(ART BEIJING)」は110軒の画廊を引き付け、成約額が2億元に達しました。
 その後、「ART BEIJING」ブランドの下に、現代アート、映像作品、ファインアートに特化したサブブランドを相次いで立ち上げ、毎年春と秋に開催、21世紀北京の新しい風物詩になろうとしています。
 夢は中国のアート、中国人アーティストの個性を世界に発信し、アジア一のアートフェスティバルを目指すことです。先日、北京農業展覧館で行われた第2回「経典北京」(ファインアート北京)の会場で、董さんにインタビューしました。

――「アートフェア」が中国に伝わって、十数年が経ちました。

 アートフェアは世界的には良く行われているイベントですが、中国に入ってきたのはまだ最近のことで、その発展もまだ初級の段階にあります。世界の様々な国、様々な土地から画廊やアーティストたちが集まってきて、来場者は一日でこれだけの数のアート作品に触れることができるという点で、とても良い形だと思います。

――これまでの十数年は、中国経済が勢いよく発展してきました。

 これまでの百年において、中国はたいへん遅れていたこともあって、世界に向かって文化を発信する力がありませんでした。しかし、今は、ようやくその時がやってきました。経済の成長に伴って、文化の発展に力を入れ、それを世界に推し進めていかなければならないと思います。
 中国はこれまでの数千年の歴史において、豊かな文化や芸術を作り出してきましたが、それをどのように知ってもらうかということが課題だと思います。ゴッホが浮世絵の影響を受けたのは、浮世絵が木版で紙に刷られされ、商品として欧州に大量に輸出されていたからです。中国は同じ時期に鎖国をしていましたが…。
 中国人は、本来は文化とアートが好きな民族ですが、これまでは生活に余裕がなく、文化をゆっくり堪能する余裕がありませんでした。だから、まずはもっと多くの人に本物のアートとは何かを知ってもらうことから始める必要があります。これにはそれなりの土台が出来てきていますが、本格的にはまだまだ時間がかかると思います。

――第2回「経典北京」の運営において、とりわけ心がけている点は?

 より多くの中国的な要素を取り入れることです。北京で行われるこのアートフェアに、より多くの中国的な要素を取り入れて、東洋と西洋の個性を合わせ持つ博覧会にできたらと思っています。
 中国人は自らの文化を語る時、むやみにコンプレックスに陥ったり、もしくは尊大ぶったりしてはならないと思います。

――「ART BEIJING」(芸術北京)のサブ・ブランドとして、昨年秋、「経典北京」が創設されましたが…

 率直に言わせていただければ、現代アートよりも、伝統芸術と近代アートのほうがより受け入れられやすいです。一般大衆の美意識に近いし、幅広いニーズと市場があるからです。中国人はとりわけ、伝統的な芸術に対してある程度素養があり、審美眼を持っている人が多いと言えます。
 市場にサービスする立場の人間としては、こうした人々の伝統芸術や近代アートに対するニーズを無視してはならないと思うのが一つです。
 次に、近年、中国の現代アートは大きな勢いを見せていますが、アートの発展には、本来、古代から現在に至るまでのプロセスがあるものです。しかし、中国ではその間の部分が抜けてしまいました。人間は小学校から直接大学に進学できないのと同様に、現代アートもそれまでのアートを受け継いだ形で現れてきたものなので、その間のプロセスを知らないとちゃんと理解できないと思います。だから、現代に至るまでのアートで、評価の定まったもの(「経典」)をテーマにし、言ってみれば、すっぽり抜けた部分の補講をする気持ちで「経典北京」を創設しました。

――だから、「経典北京」には画廊の出店ブースのみならず、1930年代から新中国建国後までの近代アートを紹介する「テーマ展」も同時に併設したのですね。

 そうですね。アートフェアは、本来は販売を目的に行われるものですが、私たちは同時に、中国におけるアート教育の不足を補なわなければならないと思っています。人々のアートに対する素養を高めて、何が良い作品なのかが分かるようになってほしいです。投資においても、何でもかんでもアートだからと言って価値が出るというものではなく、良い作品に投資してこそ価値が出ることをお伝えしたいです。中国社会において、これが私たちがやらなければならない仕事です。
 西側諸国においては、成熟した公教育のシステムがあり、美術館の数も多く、人々は常に良い作品に触れるチャンスに恵まれています。しかし、ルーブル宮殿のような美術作品が常設されている施設は、中国ではまだ多くありません。
 中国政府は今、低俗な文化をボイコットしようと提唱していますが、その一方、「雅」な文化とは何かは教えてはくれていません。やはり、大事なことは高尚で雅なアートを発揚していくことです。今回のアートフェアにおいても、「テーマ展」の部分においては、商業目的はまったくなく、良いアートをより多くの人たちに見ていただきたいという趣旨で企画しました。

――そういった人々のアート鑑賞力の向上、もしくはアート愛好者の層の拡大がアートビジネスへおよぼす影響をどうとらえていますか。

 仮に私たちのアートフェアに億万長者が現れ、その人がすべての展示品を買い上げてくれたとしても、それは個別例に過ぎないこと、市場全体を代表することでもなんでもありません。
 そんなことよりもアートフェアの主催により、社会全体のニーズを牽引し、人々に対するアート教育を促し、市場全体のパイを大きくしていくことが大きいと思います。そうすれば、皆で分かち合えるものも増えるからです。
 アートフェアのことをメディアが報道することにより、より多くの人に心の豊かさに関心を持つようになってほしい。人間にとって最高レベルの追求は心の豊かを求めることだからです。
 良いアーツとは何か、それを見極める能力の向上に役立ちたいと思っています。このことは民間の一会社にとってというよりも、むしろ国全体にとって大事だと思っています。こういったマクロ的な環境が整えばこそ、ビジネス環境が改善されます。逆にこうした取り組みがないと、ビジネスがどんどん展開しにくくなると思います。

――「ART BEIJING」(芸術北京)ブランドをアジア一のアートフェアにしていくとおっしゃっていました。

 今のアジアにおいて、私は北京ほど注目される都市はないように思っています。これまで世界各地を歩いてきましたが、多民族社会で、文化的にたいへん包容力があるという意味で、北京はニューヨークに近い都市だと私は見ています。
 今の北京は私たちに中国の文化、東洋の文化、アジアの文化を展示する大きなステージを与えてくれているので、このチャンスを最大限に生かしたいと思っています。
 「ART BEIJING」がアジア一のアートフェアになれるかどうかは、アジアのアーツをここに引き付けられるかどうかにかかっています。これからもこの夢に向けて地道な努力を重ね、影響力と魅力をどんどん大きくし、皆さんのご期待に答えられるよう頑張っていきたいと思っています。

(聞き手:王小燕、整理:王小燕、鄧徳花)

【プロフィール】

董夢陽(Dong MengYang)さん  

1998年~1992年 中央美術学院版画学部
1992年     中国文化芸術有限公司に就職
2002      北京中芸博文化伝播有限公司・総経理
2004年     第1回中国国際画廊博覧会(CIGE)執行総監
2005年     北京アートフェア有限公司を創設
2006年     「芸術北京」現代アート博覧会開催

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