映画界でブランドとは何か。張芸謀監督作品は1つのブランドであり、張偉平プロデューサーによるマーケティングも映画マーケットで得難いブランドとなっている。張偉平がいなければ、張芸謀ブランドはここまで大きく成長することはなかっただろう。張芸謀がいなければ、張偉平は創造性に溢れた才能を別の分野で発揮しただろう。この2つのブランドは運よく巡り会いチームを組み、中国映画界をリードする存在となった。北京オリンピック後、2人は意外性に満ちた新機軸を打ち出した。新作となるスリラー・コメディ作品『三槍拍案惊奇(Amazing Tales - Three Guns)』には、旧暦の大晦日に中央電視台放送の「春節聯歓晩会」で一躍人気者になった小瀋陽を起用。6月10日にクランクインする予定だ。
――中国映画の「海外進出」についてどのような認識を持っているのか。
中国経済が急速に台頭する中で、中国政府は中国の「ソフトパワー」を高める方針も打ち出した。国際的に我々の「ソフトパワー」を最も体現できるのは中国文化であり、中国文化を最も具現化できるのが中国映画だ。もともと国際的な賞の獲得が中国映画の「海外進出」状況を示すという誤った認識があった。しかし、『英雄』など数本の商業大作の製作を通じて、中国映画の真の「海外進出」とは、国際マーケットに実際に進出し海外の観客の共感を得ることだと我々は強く感じた。海外の観客が中国映画を理解し認めることによって、中国文化を理解するようになった時、ようやく中国映画が「海外進出」を果たしたことになる。こうした点から、国際マーケットに進出したか否かが、真の意味で中国映画の「海外進出」状況を表す唯一の指標であると言える。
――『英雄』は中国映画として初めて本格的に海外マーケットに進出したが、この作品の「海外進出」が成功した主な原因は何か。
『英雄』が海外マーケットにおいて興行的成功と歴史的成果を収めることができた原因は、張芸謀が約20年間積み上げてきたブランド効果にある。張芸謀は『紅高粱(紅いコーリャン)』から『一個都不能少(あの子を探して)』『我的父親母親(初恋のきた道)』に至るまで、多くの文芸映画で様々な国際映画祭の最高賞を獲得し、中国映画の海外マーケット進出の礎を築いた。しかし、文芸映画で多くの賞を獲得しても、その影響力は限定的であり、こうした状況は興行成績からわかる。これまで張芸謀が賞を獲得した文芸映画の興行収入総額は『英雄』1本にも及ばない。
2つ目の重要な原因として、『英雄』の形式と内容が海外の観客に受け入れられた点が挙げられる。複雑でないストーリーと登場人物が語り手となるスタイルを採用したことで、海外の観客の作品への理解が容易になった。特に張芸謀の武侠映画における革新的な試みは、海外の観客に新鮮に映った。国際マーケットへの進出を果たすためには、海外の観客に理解してもらえる作品であることが最も重要だ。北京オリンピックの開幕式では、数十分かけて中国の5000年の歴史・文化を様々なパフォーマンスで表現したが、世界中の人々に理解してもらえた。ただし、その表現スタイルはシンプルだった。偉大な芸術家の条件は何か。私の認識では、複雑なものをシンプルなものに変える創造的技術を備えていることだ。
また、『十面埋伏』がロケ地の重慶市永川区の茶山竹海を海外の観光マーケットに紹介し、『千里走単騎(単騎、千里を走る)』が雲南省麗江市の観光業に活力を与えたように、張芸謀映画は中国の観光業によい効果をもたらした。
――時代劇・武侠映画のほかに、中国映画のどのようなジャンルが海外市場に進出することが可能か。
我々はこれまでその答えを探し続けてきた。直面している課題は中国映画の「脚本家不足」だ。現在、脚本不足が映画に非常に大きな制約を与え、信じられないかもしれないが、張芸謀のような監督でさえ優れた脚本を手にすることができないでいる。これは事実なのだ。優れた脚本は素晴らしいストーリーだけでなく、マーケットも持っている。国内に限らず国際マーケットの要求も満たせる。中国映画が「海外進出」を目指す場合、我々は世界中の観客の要求を考慮し、海外の観客が新鮮さを感じられる作品を作らねばならない。現在、中国本土で最も国際的な影響力を持つ監督は張芸謀であるが、俳優にも一定の知名度を持つものがいる。しかし、中国には国際的に通用する脚本家がおらず、この点が中国映画の「海外進出」の大きなネックとなっている。 「チャイナネット」 2009年5月26日
| ||||
© China Radio International.CRI. All Rights Reserved. 16A Shijingshan Road, Beijing, China. 100040 |