5色のもち米ご飯はまたの名を花米ご飯などと言い、チワン族のひとびとの大好物です。これは黒、赤、黄、紫、白の5色の米が使われています。チワン族の村では毎年清明節や旧暦の3月3日に、どの家でも、この5色のもち米ご飯を作ります。色が鮮やかで、おいしい5色のもち米ご飯を作れる女性は器用だとされています。

　毎年3月3日、夜がまだ明けないうちに、女性たちは5色のもち米をせいろに入れて、とろ火で蒸します。しばらくすると、もち米のかすかな香りが村全体に立ち込めます。ようやく太陽が出ました。子供たちはもち米で作った握り飯を持って、庭で一緒に食べながら、誰のが色が新鮮なのか、おいしいかを比べます。だんだん村がにぎやかになってきました。若者たちはきれいな民族衣装をまとい、刺繍のまりや５色のもち米ご飯を持って、歌いながら、集いに出かけます。

　チワン族はどうして５色のもち米ご飯が好きなのでしょうか、

　地元の民俗学者葛祥さんは次のような伝説を話してくれました。

　「昔、徳儂というチワン族の若者がいました。父がなくなり、半身不随で、寝たきりの母と助け合って生きていました。徳儂は非常に親孝行で、毎日、山へ薪を取りに行くときや畑仕事に行くときに、母にさびしい気持ちやひもじい思いをさせないようにと母の好きなもち米ご飯を作って、ベッドの横に置いて、いつでも食べられるようにしていました。

　ところが、ある日、野生のサルがこのもち米ご飯を見つけてしまったのです。サルは徳儂が山へ出かけるのを見はからって部屋に潜り込み、もち米ご飯を盗んだのでした。こんなことが何日が続き、母が飢えているのを見て、息子はなにかいい方法はないかとあせって考えましたが、よい方法を思いつきせませんでした。

　でも、じっくり考えているうちに無意識にそばにあった楓の葉を揉んだ手が真っ黒に染まったのを見て、ふっといい考えが浮かびました。さっそく楓の葉をたくさん集めてきて、石臼で砕き、一晩水につけ、翌日、もち米を絞り汁に入れ、また、一日浸します。そして、次の日の朝に黒く染まったもち米を釜に入れて炊きました。たちまち、部屋いっぱいに香りが立ち込めました。母は、いい香りだと喜んで大声で叫びました。この日は旧暦3月3日でした。

　あくる日、サルはこの黒いもち米ご飯を見て、毒だと思って触ってみることもなしに、逃げてしまいました。この若者も黒いもち米ご飯を食べて見ると、口の中がいつもより潤い、元気も出てきました。いつもよりたくさんの薪を取ることができたのです。それから、毎日のようにこの黒いもち米ご飯を食べるようになりました。

　その後、チワン族の人々は黒いもち米ご飯のほかに、また、赤や黄色、紫色のもち米ご飯を作るようになりました。米の元々の白も含めて、今日のような5色のもち米ご飯が出来ました。

　安徽省の観光客孫涛さんはこれについて、「このもち米ご飯は見る目にもきれいで、香りもよく、少し甘みがあって、おいしいのです」と話しました。

　このもち米ご飯は気温が高くなければ、常温で数日置いても色も味も変わらないのです。チワン族の女性たちはこの5色のもち米ご飯のいろいろなつくり方を考え出しました。

　チワン族の美食家覃宏さんはこれについて「５色のもち米ご飯に、炒めて細かく砕いた落花生やゴマの粉を混ぜて、新鮮な竹の筒に入れて、かがり火で筒が裂けるまであぶるともっとおいしくなります」と話しました。黄色いもち米ご飯の場合、金花菜やくちなしの実、黄色い生姜を利用して、黒いご飯と大体同じような方法で作ります。また、赤色や紫色のご飯を作る場合は、赤いフジバカマ草を水に入れて煮た汁に米を浸して染めます。この時、長い葉は色が濃いので紫色になり、丸い葉は色が浅いので、赤い色に染まるのます。この５色のもち米ご飯は薬効もあるそうです。

　赤いフジバカマは血液を作り、くちなしの実は熱や血液を冷やす作用があります。楓の葉は、疲労回復や強壮効果があり、胃腸にもよいのです。５色のご飯はチワン族のめでたさのシンボルでもあります。旧暦の3月3日、祭日、中元節、新年、また、赤ちゃんが生まれて1ヶ月ごろ、新居が完成したときなど祝い事の度に多くの家では、5色のもち米ご飯を作って祝います。

　チワン族の人々は楓の葉が好きなのです。この葉は邪気と悪魔を追い払う吉祥物で、心を安らげることもできるそうです。旧暦3月3日には、5色のご飯を作り、どの家の入り口にも、楓の枝を挿す慣わしがあります。

　ちょうど今の季節はチワン族の村には5色のもち米ご飯のいい香りが立ち込めているころです。村を訪れるお客さんも心を込めて作った5色のもち米ご飯でもてなされます。いつかチャンスがあればチワン族の村を訪ね、この5色のもち米ご飯を食べて見てはいかがですか？（トウエンカ）