先週の9日は旧暦では１月15日で、中国では元宵節という祝日です。この祝日が終われば正月も終わります。その次の日から、北京、上海、広州などの大都市では、市の中心部で爆竹を鳴らすことが禁じられます。元宵節は、団欒節とも呼ばれ、家族がみんな揃って、もち米のお団子を食べたり、お月見をしたり、提灯を飾ったり、提灯の上に貼られた謎を解いたりして、楽しく元宵節を過ごします。今年の元宵節では、北京の中心部にある、600年という歴史を持つ前門大通りで、さまざまな伝統的な催し物が行われました。

　前門大通りは長い歴史を持つ大きな商店街です。この大通りは、長さ840メートルもあり、道の両側には店舗が連なっています。この大通りでは北京の伝統的な建築スタイルが数百年にわたり保存されてきました。ここは、北京市のランドマークであり、中国で一番賑わう商店街でもあります。この大通りは歴史と文化の香りが漂う場所で、毎年、多くの観光客が訪れます。前門付近の歴史について、この大通りの管理委員会の李博さんは、次のように紹介しました。

　「前門大通りは、紫禁城の正陽門の南側にあり、紫禁城からも非常に近い場所にあります。皇帝が先祖を祭ったりするとき、この大通りを通りました。このため、この大通りは、『天街』とも、天子の町と呼ばれています。前門大通りは、16から17世紀にかけて、すなわち、明の時代から栄え始め、清の時代に最盛期を迎えました。この大通りは昔も今も、商業がずっと盛んな場所です。庶民はここでいろいろなものを売り買いするために、集まっていました。そのためこの大通りの両側に店が次々と増えていきました」

　20世紀の20年代から30年代にかけて、西洋文化が中国に入ってきました。それにつれて、前門大通りの建築スタイルにも西洋的な要素が取り入れられました。現在、大通りの両側に、西洋風のビルがあり、これらの洋風建築と中国伝統的な建築とが混ざり合い、独特の雰囲気を醸し出しています。李博さんによりますと、昔の風景を再現するために、文化財保護部門は昔ながらの建物を活かしつつ、この大通りに手を加えることにしました。

　「この大通りをどのようにして復元するかをめぐり、2002年、数十人の専門家を招き、意見を聞きました。この大通りの文化的な意味と商業的な価値を再現するために、1920年代頃の設計図を使ってこの大通りを再建することにしました。当時の写真や設計図によって、今あるような形に、建物の外見が再建されました。今では、前門大通りにやってきた観光客も100年前の賑やかな風景を思い描くことができます」

　修復された前門大通りは、去年8月、オリンピック開催前にオープンしました。昔ながらの建築スタイル、百年以上続く老舗が連なっているこの大通りを、中国国内と世界からの観光客が訪れます。現在の前門大通りは、歩行者天国となっていますが、清の時代、前門大通りを走っていた路面電車も登場しました。これが今、観光客の注目を集めています。この路面電車は1920年代の北京で走り始めたもので、当時の北京では重要な交通機関でした。昨年お目見えした路面電車は当時の設計図を参考して改めて製造されたものなので、外見こそ当時のままですが、先端技術を取り入れ、環境に優しい設計になっています。

　北京出身の王新路さんは、地方からやってきた友達を前門大通りに連れていき、この町の歴史を紹介しています。

　「昔この大通りを走っていた電車が、再びこの町を走り出しました。そして、お店も並んでいます。私は小さいころ、よくここへ遊びに来ました。とても賑やかでした。今は歩行者天国となりました。昔の人が使っていたものが今はこの町で全部見られます」

　前門大通り管理委員会は、今年の元宵節のため、中国各地の民間団体を招いて、この町でパレードを行いました。そのパレードの中に、昔から受け継がれてきた"踏町"という出し物がありました。これは外国の花車によるパレードによく似たもので、人々は、花車の上、あるいは、その周辺を踊りながらこの大通りを練り歩きます。9日の夜、大勢の観光客がこのパレードを楽しみました。これについて、北京市文化局芸術活動センターの張巍副主任は、次のように紹介しています。

　「伝統的な文化をこの大通りで再現することを考えて、このパレードを企画しました。民間の舞踊団体と大道芸人をこのパレードに招きました。中国南北の特徴のある民間舞踊など全部、このパレードに取り入れたのです」

　そのほか、主催側は、大通りに舞台も設置し、中国の伝統的な出し物、たとえば影絵、操り人形などを観光客に見せることにしました。特に、国家無形文化財の８人は、この舞台でその伝統的な技を披露しました。これについて、張巍副主任は、次のように語りました。

　「国家無形文化財の人たちは、先祖から受け継いできた技を持っています。私たちは、国家レベルと世界レベルの無形文化遺産を見てもらうことにしました。観光客はここで、玉の彫刻とか七宝焼きや漆器の作り方などを見ることができます」

　元宵節の夜、パレードのほか、お月見、提灯に貼られた謎を解くイベントもありました。観光客はこのような形で中国伝統文化に触れることができました。（担当：任春生）