中国西南部の雲南省。ここに、迪慶チベット族自治州があります。自治州の有名な観光地がシャングリラです。シャングリラはチベット語で「心の中の太陽と月」という意味です。「地上の楽園」とたとえられ、毎年、国内外から多くの観光客が訪れます。
観光業が発展すると同時に、環境汚染の問題が浮上しました。地元観光局は、美しい景観を守るため、いろいろな対策を取っています。
チベット族のチリンペツォさんは、毎日村人たちとともに、山の中をパトロールしてまわります。パトロール中は、無断で狩猟が行われていないか、ビニール袋などのごみが落ちていないかをチェックします。彼らは子供を守るように、山林を保護しています。チリンペツォさんは、「山林の環境を保護するため、村人が交代で山に入り、ごみなどを拾ってまわります。山や湖をきれいに保つためです」と語りました。
チリンペツォさんは、シャングリラ県プダツォ国家公園内にある村で暮らしています。公園内には、原始林や渓谷、湖、湿地、草原などが点在し、希少な動植物も生息しています。もっとも美しい観光スポットは属都湖と璧塔海という2つの湖です。この2つの淡水湖は、住民たちにとって大切な水源となっています。璧塔海には小島が浮かんでいます。小島にはチベット仏教寺院が建てられており、信者たちはここで宗教活動を行います。また、公園内の海抜4159メートルの地点にも、大きな池があります。ここは放牧エリアとなっており、池の周りではヤクが草を食べている姿が見られます。池の水は光を反射して色とりどりにきらめき、その光景に観光客たちは思わず見とれてしまいます。
10年ほど前まで、地元住民たちは環境保護の重要性をはっきり認識してはいませんでした。しかし、大量の原始林が伐採され、山が崩れた結果、土石流などの自然災害がたびたび発生するようになりました。1996年には洪水にも襲われ、大きな損失を被りました。
生態環境を保護し、自然災害を防ごう。地元政府は、森林の無断伐採を禁止するなど努力を重ねました。その結果、シャングリラの自然は効果的に保護されるようになったのです。
シャングリラ・プダツォ国家公園の丁文東副社長によりますと、地元政府は、公園内の自然環境を保護するため、属都湖と璧塔海の周辺の不法建築物を撤去し、汚染源を徹底的に調査しました。また、環境にやさしい大型バスを購入して、公園内の移動に使用しています。さらに、土砂災害を防ぐため道路の両側に植物を繁殖させたり、太陽エネルギーや地熱を使用したレストランやトイレを建設したりしています。丁文東副社長は、「環境保護の理念を徹底しています。環境にやさしい車を導入したり、レストランやトイレなども環境型のものを設置しました。これらの施設導入に総額2億3000万元を投資しました。これは投資額全体の3分の2を占めています」と述べました。
以前、チベット族の人たちは、2階建ての木造建築に暮らしていました。家屋の棟木が大きければ大きいほど良いとされ、シャングリラの原始林はどんどん伐採されていきました。これについて、ノシー村のツワンピンツォさんは「今にしてみれば、大きな柱や棟木を使うことには何の意味もありません。お金がかかりますし、環境にも良くありません。村の人たちの考え方もすっかり変わりました。地元政府も無料で太陽エネルギー設備を支給してくれました。政府は省エネや環境保全の面でいろいろ努力してくれています」と話しています。
ツワンピンツォさんによりますと、地元政府の支援を受け、現在村の人たちは太陽エネルギーやメタンガスなどを使っています。昔の生活と違って、クリーンなエネルギーを使っているのです。
シャングリラの湯堆村は、チベット式陶磁器の生産地として非常に有名です。陶磁器の生産には松の木が使用され、大量の煙が排出されます。煙による汚染を削減するため、職人たちは代わりのエネルギーを探しています。湯堆村陶磁器株式会社のワンドゥイ副社長は「今は、代替エネルギーとして、ガスかメタンガスを考えています。陶磁器の生産に影響はありませんし、汚染も削減できます。がんばって技術を改良していきたいと思います」と語りました。
昔ながらの景観をいかに保護し、観光業を発展させていくか。迪慶チベット族自治州のチザラ書記は「シャングリラの生態環境保護のため、長期にわたって対策を取っていくつもりです。ここ数年、シャングリラの観光業は急速に発展しています。今後も発展させていくためには、人間と自然が共存できる環境を作るべきです」と語りました。
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