若い男女がどのように知り合い、恋に落ち、結婚に至るかは、中国の56の民族ごとに異なります。
雲南省に暮らしているイ族にとって、この結婚に至る過程において、「娘の部屋」というものが大きな存在となります。
「娘の部屋」とは、「この家庭の娘さんが住む部屋」ではなく、女の子たちが男性と交際する機会を与えるために、村が、村のはずれに特別に建てた家屋を指します。
少女は成人式に参加した後、この家屋に住み始めるというのは、この土地の決まりになっています。
イ族の少女たちは、17、8歳になると必ず、物知りのお年寄りに縁起のいい日を選んでもらい、大人になるための特別な儀式に参加します。この日、少女の母親と親類のうちで女性たちは、線香を立て、水を汲んできて少女の体を清めていきます。そして、子供の頃からずっと穿き続けてきた白いスカートの代わりに、大人になったことを示す黒いスカートに着替えさせます。親類の女性たちは、少女が着替えをしているうちに、褒め言葉と祝福の言葉を浴びせるようにたっぷり聞かせます。この少女は、この日の夜から、「娘の部屋」に住むようになり、大人として認められた村のほかの少女たちと一緒に、夜の集団生活を送ることになるのです。村のほかの人たちから邪魔にならないように、村のはずれに建てられた「娘の部屋」は、小さいもので、4~5人、大きいもので、10数人を収容することができます。寝台や布団、椅子などの生活用品は、少女の家族が事前に用意しておきます。
朝になると、少女たちは自宅に戻り、野良仕事や家事などをします。晩ご飯の後は、綺麗な服に着替え、「娘の部屋」に入ります。糸紡ぎと刺繍は、少女たちが夜によく行っていることです。
男性と出会うきっかけは、大きくわけて3つあります。一つは、少女がその土地のお祭りや若者の集いに参加した際、好感を持つ男性が現れるケース。一つは、ほかの村の若い男性が「娘の部屋」を訪ねてくるケース。もう一つは、仲人の紹介によるケースです。
少女は、「娘の部屋」で手仕事をしながら、訪ねてくる男性とおしゃべりをします。時には、月琴などの楽器を奏でながら、気持ちを伝える歌を歌ったり、踊ったりします。部屋は愛が生まれるところであり、いつもロマンチックな雰囲気が漂っています。男性はその夜、この部屋に泊まります。少女と同じ寝台で寝ますが、体の関係を持つのは禁物です。これは、古くからのしきたりです
男性は朝早く目を覚まして、この部屋を去ります。もっと話をしたいと思ったら、またその夜の再会を約束します。このようにして、二人は、互いに理解を深めていき、結婚の相手になれるかどうかを判断していきます。ひとたび結婚する気持ちを固めたら、男性は女性の家を訪れ、結婚について相談します。
その後、結婚式を挙げて、円満な夫婦生活の第一歩を踏み出します。「娘の部屋」で過ごした日々は、二人の美しい思い出となるでしょう。(編集:GK)
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