中国政府は、電気自動車など環境にやさしい新エネルギー車の普及を促すため、今年6月から、電気自動車などを購入した人に最高6万元の補助金を出す制度を上海や深センなど5つの都市で試験的に導入しています。導入して1ヶ月が経ちましたが、メーカーや消費者の反応はどうでしょうか。
この補助制度で対象となる都市は上海、長春、杭州、合肥、深センの5つの都市ですが、中でも合肥、安徽省の中心都市、合肥が、新エネルギー車の研究開発で、国内のほかの都市に比べて先頭を走っています。地元の自動車メーカーが開発した新エネルギー車およそ200台が今、北京や大連などで利用されていて、また、地元でも、市内を走る公共バスに電気自動車を導入しています。国内では初めて、バスの全路線を電気自動車で運行しているということです。合肥の大型バスメーカーの安凱自動車の汪先鋒副社長の話では、電気自動車は大体1キロ走れば1キロワットの電力を使うため、今の電気代で計算すると、普通の車に比べて1キロ当たり2元、節約することができるということです。
今回の補助制度では、プラグイン型の充電式ハイブリッド車に対しては1台につき最高で5万元、電気自動車は最高6万元、補助することになっていますが、この制度を試験的に導入している5つの都市は、さらにその上で様々な工夫をしています。例えば、深センでは、政府の補助の上にさらに2万元、補助金を足すことにしているのです。そうすると、例えば、中国の自動車メーカーBYDが開発したハイブリッド車を買う場合、今、市販価格は17万元ですが、補助金は政府が出した5万元にさらに2万元が加えられて7万元になります。それで、消費者は10万元出せば手に入れることができます。
また、安徽省の合肥などでは、深センのように補助金額を増額しているほか、駐車料金を免除したり、高速道路の利用料を減らしたりしています。これによって、電気自動車を買いたい、使ってみたいという人が増えているようです。杭州のタクシーの運転手、羅さんの話です。
「今使っている車は、あと1年くらいで廃棄しなければならないから、そのときに、タクシーに相応しい電気自動車があれば、使ってもいいのではないかと思っています」
しかし、中国では、新エネルギー車の性能はまだ不安定で、それを使うための施設もまだまだ不足しているのが現実です。それが原因で、しばらくは電気自動車を考えないという人もいます。消費者から「電気自動車は、ガソリンを使わないのがいいのだが、充電の時間が長い。ガソリンを使う車は大体10分くらいで燃料を入れることができるが、電気自動車の充電は5,6時間もかかる」「電気自動車の性能、特にエンジンのパワー、動力は普通の車より本当に強いのかなと思うし、値段もまだまだ高い」との声があります。
今、中国は電気自動車の普及に踏み出したばかりであることから、足りないところは多少出てくるかもしれませんが、なによりも環境のための大事な取り組みですから、時間をかけてやっていけば、きっと効果が出てくると思われます。この点について、中国の自動車産業のアナリスト、郎学紅さんは次のように語りました。
「一般家庭への普及を実現するには、まだかなりの時間が必要かもしれません。新エネルギー車を市場に出す中で、技術やアフターサービス、関連施設の整備などいろいろな面で経験を積んで改善する、というふうに進めていくと思います」
また、業界でも、新エネルギー車の普及に意欲や自信を示しています。中国の自動車メーカーBYDの王伝福社長、それに広報担当の楊さんの話です。
「国の政策的な刺激によって、新エネルギー車の市場が徐々にできてくると思います。市場ができれば、電気自動車などの生産量も増え、メーカーも増えてきます。そうなると、競争のために生産コストが減らされ、値段が下がってきます。値段が下がると、市場はもっと活発化して、自然に車の生産が促されます。それで、この業界は良い循環に入ります」(王社長)
「我々メーカーから見ると、政府はこの補助金制度を打ち出すことで、新エネルギー車の生産会社にこれからの方向を示してくれました。つまり、電気自動車を中心にして、新エネルギー車を普及させていくということです。それで、企業のほうは、今までよりも自信を持って取り組むことができたと思います」(楊さん)
政府による補助金制度より先に、中国の10社の大手自動車メーカーでつくる新エネルギー自動車産業連盟は2015年をめどに、このような戦略目標を発表しました。
1、中国で利用される電気自動車の数を50万台にする
2、年間の自動車生産に占めるハイブリッド車の割合を30%以上にする
3、新エネルギー車の完成車や主な部品の産業化を世界の先進レベルにする
ということです。
中国の自動車メーカーは、本格的に新エネルギー車に取り組もうとしています。自動車生産大国の中国での新しく、大きなこの動きですが、これから見守っていきたいと思います。(鵬)
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