世界的な金融危機の影響で、中国では去年10月以来、一部の業界が経営難に陥っていて、それに伴って、大学生や出稼ぎ農民の就職が難しくなってきました。こうした状況の中、中国政府は、どのように対応しているのでしょうか。
「ウサギ1匹を売れば、10元の利益が得られます。私は今、600匹を飼っていますから、6000元儲かりますね」。これは、中国中部の江西省に住む農民、羅さんの話です。羅さんは、いわゆる「出稼ぎ農民」で、中国の沿海地域で仕事をしていましたが、去年、会社の人員削減によって解雇され、故郷に帰りました。仕事探しで頭を悩ませているところ、地元政府が、仕事を失った農民のためにいろいろな就職支援活動を行ってきました。その恩恵を受けて、羅さんは、無料でウサギの飼育技術を学び、品種の良いウサギと餌をもらいました。羅さんは今、ウサギの飼育場を持っていて、これから資金を調達して飼育場の規模をさらに拡大することを考えているということです。
実は、羅さんのように、金融危機の影響で仕事を失った出稼ぎ農民は2000万人余りもいます。これほど大きい人数の人たちの再就職は非常に緊迫した課題だと、中国社会科学院人口労働経済研究所の蔡所長は、次のように話します。
「農民の収入を見てみると、出稼ぎ者による収入が、全体の収入増加を大きく引っ張っています。それらの人々が仕事を失えば、全体の収入増加のスピードがかなり落ちることになります。それから、出稼ぎ者の中に、30歳以下の人は60%も占めています。これら若い人の就職を適切に解決しておかなければ、社会の安定にまで影響する恐れもあるでしょう」
こうした状況を受け、中国各地では今年2月から、仕事を失った農民の再就職に向けた取り組みが行われています。その中で、ほかの地方に出稼ぎに行く人が最も多い河南省では、地元で事業を起す農民に対して、税金を減額または免除する措置を取っています。農民の再就職対策について、中国財政指導弁公室の陳錫文氏は、このように述べます。
「主に4つありますが、まずは、都市部や沿海地域の企業に対し、出稼ぎ農民をできるだけ解雇しないよう要求すること。2つ目は、出稼ぎ者の技術訓練を強化すること。3つ目は、公共施設の建設事業で、出稼ぎ者をできるだけ多く雇用すること。そして4つ目は、出稼ぎ者の自らの起業を支援することです」
一方、大学卒業生の就職問題も、大きな注目を集めています。政府の統計では、今年の卒業生は610万人を超えるということです。学生たちは、大体卒業の一年前から仕事探しをしますが、理想の仕事にはなかなかたどり着かないようです。そんな1人、中国人民大学の張暁波さんの話です。
「もういらいらしていられません。毎日、いろんな就職説明会に行って、履歴書を提出したりしています。最初は、まじめに考えたり選んだりしていたのですが、だんだん期待が薄れてきて、履歴書を出すことだけを繰り返すようになりました。ただ任務みたいに、一日、10部か20部の履歴書を出しています」
そんな学生たちを助けようと、各地の大学は企業を招き、校内で就職説明会を開いたりしています。北京の名門、北京大学で学生の就職指導を担当する陳先生は「専門家を招いて、キャリア・カウンセリングや雇用状況などについて、学生たちに説明してもらっている。それと同時に、中小企業と連携して、学生の就職ルートを開いている」と語りました。
その一方、学生たちは就職の目標を調整しています。いままで外資系企業と沿海地域しか狙わなかった人たちは今、中国国営の企業と内陸部に目を向けるようになりました。その中に、社会の末端組織などで働くことにした人も少なくありません。これについて、中国教育省の報道官は、末端組織への大学生の就職を促していくと明らかにしました。さらに、「政府は、経済発展が遅れている西部地区でのボランティア活動や、農村部での教育、医療支援、貧困扶助など、大学生の就職支援のために様々な計画を立てている」と述べました。
このように、出稼ぎ農民や大学生を支援するほか、政府は、経営難に陥っているものの人員削減をしない企業を資金面で支援したりなど、企業のほうに対して優遇政策を実施しています。
これら一連の措置により、今年7月までの時点で、400万人以上の大学生が就職しました。中国国家統計局の発表によると、今年上半期、就職に関する統計データに回復の兆しが見られました。でも、就職の需要が依然として高いことから、今後、政府だけでなく民間による雇用拡大対策も必要だと指摘されています。
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