中国の李克強副首相は4日、訪問先のスペインで、「中国は、状況を見て、引き続きスペインの国債を購入する」と表明し、金融危機の克服に関して、スペインとEU・欧州連合を支持していく中国政府の姿勢を示しました。これに対して、EUの主要報道機関は、中国との協力強化を呼びかける一方、一部には、中国の投資を懸念し、「これは欧州買収だ」という声があがっています。
金融危機以降、特にEUの債務危機に際し、中国政府は、「ユーロを信じている」として、国債の購入、EUでの投資拡大など、積極的な態度を取り、素早く対応してきました。温家宝首相は、昨年10月3日ギリシアを訪問した際、引き続きギリシアの国債を購入すると表明しました。EU第4の経済体であるスペインは、最も金融危機のダメージを受けた国の一つです。2010年7月から、中国は4億ユーロを拠出してスペインの10年国債を購入しました。これに対して、イギリスのメディアは、「中国が欧州の金融市場に再び進出するのは、ユーロ圏に信任票を投じたことになる。これで国際金融界はユーロ圏への信頼を回復するに違いない。中国の姿勢はEUの危機脱出に重要な意義を持っている」と評価しています。
経済協力は、互恵共栄のためのものです。中国がEUでの投資拡大で得た利益について、中国現代国際関係研究院欧州所経済プログラム担当の劉明礼氏は「海外での直接投資は、貿易障壁を避けることができるので、海外市場の進出や拡大に有利だ。2007年まで、EUは中国の投資を警戒していたが、金融危機以降、中国からの投資を歓迎するようになった。中国の投資家にとって、反ダンピングなどの貿易障壁がなくなる上、地元企業の資源をEU市場で生かすことができるようになった」とみています。
中国による欧州での投資は、EU債務危機が爆発した後で、好調になっています。これは双方の伝統的貿易にとって大きな変化だと見られています。これについて、劉氏は「変化としては、いままでは双方の貿易往来は密接だったが、投資の進展は緩やかだった。中国にとって、EUへの直接投資が海外直接投資に占める割合は2%しかない。金融危機とりわけ債務危機の爆発後、EUは中国からの投資に対して、今までにない前向きな姿勢を見せるようなった」としています。
中国は外貨準備が豊富であるのに対して、EUは資金援助を必要としています。このような協力は互恵共栄と言えます、EUでは、「中国はEUでの影響力を増強したい」「安い価格でEUの資産を買収しようとしている」と懸念の声もあがっています。これについて劉氏は「中国への懸念は理解できる。双方の理解が不足しているからだ。EUでは、中国が社会主義国家なので、EUへの投資拡大は戦略的、政治的なたくらみがあるのではないかと懸念している。欧州買収説は、欧州の微妙な心理を反映している。これを解消するには時間をかける必要があると思う」とした上で、「中国が海外への投資を拡大するのは、主に経済面の理由で、貿易障壁を避けて、直接相手の市場に進出できるからだ。債務危機以降、中国はイタリア、ギリシアなどEUでの投資を進めている。これらの投資は地元では歓迎されている」と述べました。
金融危機は、中国とEUとの距離が縮めたと同時に、EUの人々に、中国を見直すチャンスも提供しました。協力強化につれて、双方により大きな利益をもたらすでしょう。(朱丹陽)
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