先月末、インドのムンバイで起きたテロ事件の後、インドとパキスタンが進めてきた和平プロセスが突然中断し、両国の関係は非難合戦から軍事対立にまで緊張が高まっています。これを受けて、アメリカ軍総合参謀本部のマイケル・マレン議長は斡旋のため、ムンバイでのテロ事件以来2度目の南アジア訪問をしました。両国の間では緊張状態が続きますが、戦争が起こる可能性は高くないだろうと見られています。
先月26日、インド西部の都市ムンバイで同時多発テロが発生し、多くの人が死傷しました。事件発生直後、インド政府は「パキスタンの勢力が事件に関与した」と非難しましたが、パキスタンは冷静に対処していました。パキスタン政府は、政府機関の関与を否定した上で、テロ対策でインドと提携する意欲を示しました。また、積極的に取り調べ、テロ事件に関与した疑いのある人物を何人か逮捕しました。
しかし、インド政府は非難を強め、パキスタンに武力を行使するとまで主張しました。インド国民会議党のソニア・カンジー党首は21日「インドは平和を愛し、できるだけ隣国と良好な関係を保つことに努力しているが、そのことはインドが弱いと理解しては大間違いだ」と述べました。またムカジー外相は「パキスタンがムンバイでのテロ事件に関与した容疑者を取り締まらなければ、インドは必要なあらゆる措置を取る」と強調しました。
これに対してパキスタンは、ただちに猛反発しました。パキスタンのキアニ陸軍参謀長は22日「インドがパキスタンを攻撃すれば、パキスタンは数分間のうちに対等な反撃をする」と述べました。また、ザルダリ大統領は「パキスタンは、インドとの和平で誠実な関係を望んでいるが、インド指導者の脅迫的な発言はこの地域の平和を破壊している」と非難しました。
インドとパキスタンは、非難しあうとともに軍部隊を展開しています。インドは、パキスタンとの国境付近に陸軍や空軍を集結させ、これに対しパキスタンは特殊部隊や対空レーダーを投入しています。
両国関係は一触即発の危険な状態になっていますが、戦争が起こることはないだろうと見られています。パキスタンでは、国内経済が窮地に陥り、治安情勢も悪化していることから、政府はインドとの平和な関係を発展させ、経済協力を拡大する必要があります。一方のインドでは、近く総選挙があるため、与党の国民会議党はパキスタンに武力行使を警告するなど強硬な姿勢をアピールすることで国民から支持を得ようとする狙いがあると見られます。そして、インドとパキスタンはいずれも核保有国であるため、結果を考えて過激な行動を控えるだろうといわれています。(鵬、吉田)
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