「農民工」と呼ばれている農村出身の出稼ぎ労働者は、中国で2億人近くいると見られています。中国の第二次産業と第三次産業の従業員の中、5割以上が農村出身で、農民工の経済発展や都市建設における役割が益々重要になっています。このような動きにつれ、最近、農民工の給与水準や待遇改善に乗り出した企業が相次いでいます。

　今年のメーデーの大型連休期間中には、有給休暇制度を利用して帰省した農民工が現れました。これまで、有給休暇は公務員や企業、団体に勤務する正社員しか享受できませんでしたが、こうした動きは農民工と都市部出身の従業員の待遇を平等にする上で、大きな意義があるものと見られています。

　劉慶さんは、河南省汝陽県の辺鄙な農村の生まれです。2年前、天津の埠頭へ出稼ぎに来た劉さんは、今年、有給休暇制度を利用して、2年ぶりに故郷に戻りました。往復の交通費は会社側の負担で、このほか、毎日50元の手当ても支給されます。劉さんの会社は、勤務年数が二年以上の従業員は、有給休暇を利用して帰省する権利があると定めています。

　天津のほか、山東省青島港も今年、埠頭で勤務年数が一年以上に達した人は、年間10日間の有給休暇が認められると発表しました。また、福建省アモイ市の労働監督部門は、労働保障基本基準の年度審査に合格した企業のうち、3分の2の企業は農民工の有給休暇制度を導入したと発表しました。

　このような動きについて、天津市社会科学院都市経済研究所の閻金明所長は、「中国は、取って代わることの出来ない農民工の役割を認識し、その待遇の改善に乗り出している。有給休暇はその具体策の一つだ」と述べています。このような動きの背景には、経済が比較的発達している沿岸部で、最近、農民工の人手不足の問題が起きたことが関係しているのではないかと見られています。中国政府は去年、『農民工問題を解決するための若干の意見』という文書を発表し、農民工と都市部住民との間にある処遇の不平等の是正を求めています。この後、かなりの都市は、人為的な障壁を撤廃し、農民工に平等な待遇を提供するよう政策を改めています。さらに、一部の企業も、農民工の待遇改善は企業にとってもメリットのあることだと認識するようになりました。

　天津の物流運搬会社の責任者は、「会社は農民工の休暇、手当てと往復交通費に、年間40万元を拠出している。大きな出費だが、こうした措置により、農民工は前よりも、安心して仕事に取り組めるようになったため、労働者の流動性が弱まった。熟練工の人数が増え、新人募集のためのコストが削減できたため、企業の利益は改善された」と話しています。

　しかし、現在、中国で有給休暇制度の対象になっている農民工は、まだ数がたいへん限られています。専門家は、「農民工の問題を解決するには、お金と時間だけでなく、企業側の意識変化も求められている」と指摘しています。専門家はまた、農民工の有給休暇制度の導入は、一部の企業が農民工への差別を解消する方向に向けて、一歩踏み出したことを意味し、これにより、農民工の生活の質が少しずつ向上するだろうと見ています。（新華網より、王小燕整理）