先週、温家宝首相が中国の首相としては7年ぶりの日本訪問を行いました。今回の日本訪問期間中には、初めての中日エネルギー閣僚政策対話が開かれるなど、エネルギー分野での中日協力が具体的に動き始めました。中日間の今後の新たな協力では、エネルギー問題が大きな比重を占める可能性が出てきたと思います。
今回の温家宝首相の訪日には、石油や電力企業のトップなど中国のエネルギー関係者がおよそ100人も同行しました。この事から見ても、中国側が如何にエネルギー問題を重視していたかが分かります。中国は高度経済成長によってエネルギーを大量に必要としていますし、環境問題もあって、省エネやクリーンなエネルギーへの転換を推進する必要もありますから。その点、日本にはエネルギー資源はありませんが、1970年代の石油危機以来、省エネには一生懸命取り組みましたから、協力できる技術はあると思います。
12日の日に行われた初めての閣僚対話では、冒頭日本の甘利経済産業相が「日本と中国がアジアでのエネルギー効率の改善を主導して行くべきだ」と発言したのに対して、中国の馬凱国家発展改革委員会主任は「中国への省エネ投資は、大きなビジネスになる」と述べたそうです。
今回の対話では、省エネや環境対策、新しいエネルギー問題などで協力を強化する事は、両国が戦略的互恵関係を進めるに当って重要な内容になるということで意見が一致しました。
同じ日に開かれた「エネルギー協力セミナー」では具体的な成果が出ました。このセミナーは、中日の主要なエネルギー関係の企業のトップおよそ180社が参加したもので、これも初めてのことです。このセミナーに合わせて、6つの合意文書が交わされました。そのひとつが、中国石油天然ガス集団と新日本石油との間で結ばれた覚書です。中国石油天然ガス集団と言えば、中国最大の石油会社で、新日本石油は、これまでも中国石油天然ガス集団から石油精製を請け負うといった協力関係にありましたが、今後は石油や天然ガスの資源開発で協力を進めるほか、石油精製の技術協力や再生可能エネルギーの開発などでも協力することになりました。
そのほか、日本の九州電力と住友商事、それと中国の電力会社「中国大唐集団」との間では、風力発電など再生可能なエネルギーの共同開発について包括協議書を締結しました。また日本の国際協力銀行と石炭エネルギーセンター、それに中国の電力業界団体とが、石炭火力発電所の省エネに関する協力を行う覚書を交わしました。この他、研究機関同士の覚書の調印もあります。日本エネルギー経済研究所と中国国家発展改革委員会のエネルギー研究所との間で、省エネ政策に関する共同研究を行うことで覚書を調印しました。
中国の2006年から2010までの5カ年計画によりますと、GDP単位当りのエネルギー消費率を、2010年には2005年よりも20%減少させる必要があります。この目標を達成するためにも、この分野での中日協力が順調に進んで欲しいものです。今後、中国と日本は、エネルギー分野の閣僚会議を毎年1回程度定期的に開く事になりましたから、協力が深まって欲しいものです。
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