未来の中日関係に向けて

互いにステレオタイプな考えを捨てよう

 　「大丈夫？」「大丈夫？」「ここは…」頭がくらくらしてきた。人に囲まれた。私は交通事故に遭った。

　人生の中で、初めて担架に乗せられ、救急車で病院に行った。「障害者になるかな」「顔が傷ついたかな」「日本で死ぬのかな」様々な恐ろしいことが頭の中を駆け巡り、怖くて泣いてしまった。十数名の医者が様々な診察をしてくれ、幸い内臓も骨も大丈夫だったので、なんとか落ち着いた。運転手さんも旦那さんを連れてきて、私に謝ってくれた。良い人だなと思って、「大丈夫ですよ。」と私は言った。

　しかしこの後、予想外の展開になった。信号のない交差点で相手に気付かなかったのは双方で、傷ついたのは私だけだ。また、相手は車、私は自転車だ。運転手さんの責任の方が大きいと思ったが、警察は私にも半分は責任があると判断したのだ。また、運転手さんも入院の日以降、連絡が途絶えた。学校の先生も「もし相手が医療費を払わなかったら、自分で払う？」と私に聞いた。

　一体どういうことだ。なぜ責任が同じなのか全く理解できない。だが、その時は日本に行ったばかりだったので、日本語も下手で、言い争えなかった。保険があるからお金の問題はないと考えた私は、何も言わなかった。ただ、その日本人たちは冷たいと思った。先輩たちも「日本人の優しさは建前だよ、中日関係はよくないし、差別されることも普通だよ。」「前学期ほかの国の留学生も交通事故に遭ったみたい。怪我してなかったのに、多額の賠償金をもらって、警察もきちんと案件を処理してくれて、今回とは全く違う態度だったそうだよ。」と私に言った。それからというもの、日本人にやや悪いイメージを持つようになった。

　案件の処理は終わったが、事故でできたまだ直りきっていない傷を見ると、冷たい日本人のイメージがいつも頭の中に思い浮かんでしまう。周りの日本人たちの笑顔を見ながら、「これも建前かな」と戸惑っていた。

　いくら不満があっても、これからの一年間は日本で過ごさなければならない。何とか気持ちを切り替えて留学生活を送り、外国人交流協会に参加を申し込んだ私は小沢さんと出会った。60歳を過ぎているが、いつも私をあちこちにドライブに連れて行ってくれる。「元気で、優しいおばあちゃんだな」と思い、日本人へのイメージが徐々に変わってきた。ある日、「小沢さんは何で外国人留学生の活動にそんなに積極的ですか。」と小沢さんに聞いてみた。「みんな若くて、元気で、私も元気になりたい！それから、外国人と交流しているうち、お互いの文化とかも交流したい…中日関係はちょっと微妙だけど、中国人のみんなと付き合ってよかったと思うよ。」小沢さんの話を聞いて、私は感動した。

　日本人と言っても、みあ同じタイプではない、これは小沢さんと接していて感じたことだ。国で人を分類した私が悪かったのだ。バイトで友達になった愛美さんは「艾さんは中国人の感じがしない。」と私に言った。なぜかと聞くと、「テレビや新聞などで見る中国人はうるさくて、世界のあちこちで騒いでいる感じ…でも、艾ちゃんは静かだし、仕事もてきぱきやってる。イメージと違う。」と答えてくれた。やはり、人々の行為は自分の国の教養を表すし、どんなイメージを外国人に伝えたいかは自分次第だ。

　現在、政治の問題で、中日関係があまりよくないのは事実だと思う。こういう状況で、中日の国民はどうすればいいのか。国の関係がよくないので、その国の人を悪く扱うのがいいのだろうか。日本製品の不買を呼びかけることが正しいのだろうか。これらは友好関係を改善することにはつながらず、逆の道に進ませてしまうのではないだろうか。一人の力で、中日関係を改善することは難しいが、自分の行為が他国の人にどんな影響を与えるのか、考えなければならないと思う。国の友好関係を結ぶことは国民の友好関係を築くことと同じだと思う。中日友好のために、ステレオタイプから飛び出して、一視同仁すれば、友好の道に進むことができるだろう。

　最初日本に来て大変なことに遭ったが、今は「日本人にどんなイメージを持っているか」と考えてみると、「まあ、人それぞれだ」と思う。今まで付き合ってきた日本人は様々だ。一人二人の日本人から日本人全体を見るのは偏った見方だと思う。日本語ができる大学生として、普通の中国人より日本人と接触する機会が多く、中国人の留学生であった私が、日本滞在の一年間で日本人にどんなイメージを与えたのか、皆の中国へのイメージを変えさせることができたのか。もし、愛美さんの話通り、「中国人は全てうるさいわけではない」と少しでもイメージを変えてもらえたなら、これも中日友好のために力を捧げたことになるだろう。