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呉伊甸 華南師範大学

2017-12-22 11:24:42     cri    

私と日本―文学で結ぶ絆

 日本文学との素敵な出会いから、日本の全てが繋がってくるのだと感じている。

 私は小学校1年生の時から本を読み始め、余裕が出るにつれて本を読むのが少年時代の大きな楽しみとなった。読めば読むほど、各国の文化の魅力にどんどんと引き込まれていった。中3の時、友達に薦められたのが村上春樹と東野圭吾の作品であった。しかし、当時の私は「どうして中国にも日本文学の愛読者がいるのだろうか」と不思議に思ったのである。

 高校時代に漠然とやりたい事を探していたが、言葉では表現できない戸惑いに悩んでいた自分に苛立ちが抑えられなかった。高2の冬のある日、ふと現実逃避の為に本屋を歩き回り、三島由紀夫の「仮面の告白」を見つけた。その本を軽く数ページ読んだ時、オーラが差しているような文に私は強烈に惹きつけられたのである。修辞に富んだ詩的な文句、絶妙な表現技法が溢れており、三島氏が「文豪」とされる理由、また優美な文章から現す独特な美意識、精神や文化の素晴らしさがわかったような気がした。三島氏の著作をきっかけにして、他の日本作家も手を伸ばし、ますます興味を深めていた。『源氏物語』『枕草子』のような古典文学。近現代文学は夏目漱石、森鴎外、太宰治などは訳本で読んだのだが、異国の文化や歴史に触れるうちに、思わず憧憬の念を抱いていた。

 日本文学について詳しく調べてみたところ、中日両国は文学の絆で結ばれていると感じだ。中国の詩経、漢詩や古典小説などが日本の古典に多大な影響に与え、平安文学の代表作『枕草子』に『白氏文集』が登場し、『源氏物語』が『長恨歌』から影響を受けたという事実のほか、近代においても、『聊斎志異』が芥川龍之介、佐藤春夫、太宰治などの作品の中で触れられることもある。一方、辛亥革命以降、日本文学の流入により中国文学も大きな変化を遂げ、魯迅や郁達夫のように日本文学の影響を受けた作家も少なくない。文学が文化の懸け橋となり、美意識・価値観・死生観・ものの考え方などの文化全般について、古くから現代への事象が幅広く含まれる。日本に対する認識が現在とは著しく異なっていることに思い至ったのである。

 現在の中国において、領土問題や歴史認識問題で日本によくないイメージを持っている人が多い。日本のマスメディアでは中国に関するマイナスの報道も少なくない。確かにこれらのよく語られた様々な問題は、現実の一部であることは否定できない。ただし、本質的な原因は一体何だろうかという疑問が頭から離れない。

 日本の文学を遡ると、日本文化の中に孕む矛盾が体感できる。「もののあはれ」のような繊細な部分がある一方、「武士道」のような固い部分も併せ持つ。また、「本音と建前」のような曖昧な部分もあり、その複雑さが窺い知れる。それらを描いた文学作品に触れることは、日本文化を深く理解するにはうってつけではないだろうか。日本文学をじっくり味わうと、日本文化の長所短所が再認識できるようになる。国々の文化の違いをマイナスにとらえるのではなく、その違いをお互いに理解し合い、両国が共生できる関係を求めながら生きたいと思う。

 私は現在、大学で日本語を勉強し、日本文学本来の持つ魅力を自分の目で確かめるように努力している。両国間の溝を埋めるのはまだ時間を要するだろう。それでも私は、人々を魅了してやまない文学から受けた感動が国境を乗り越え、共通の気持ちを持ち互いに伝え合う力になることを強く信じている。

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