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二時間目 「マンガデザイン」が国境を越える~中国伝媒大学客員教授・吉良俊彦さんに聞く

2017-05-02 19:01:41     cri    

聞き手:王小燕

 今回のゲストは東京から出張で北京にお見えのベテラン広告人・吉良俊彦さんです。
 吉良さんは大手広告代理店での仕事を踏まえ、日本オリジナルの「マンガデザイン」というコミュニケーション手法を開発、発展させ、それをビジネスに活用しています。
 吉良さんは先月、中国で広告人材やジャーナリストを育成する大学「中国伝媒大学」から客員教授に招かれました。それを記念するための特別講演会が3時間にわたって同大学で行われました。そのテーマは言うまでもなく「マンガデザイン」でした。
 「日本オリジナルコンテンツ」として位置づけられる「マンがデザイン」とは何か?この分野で現役として活躍中のベテランは、中国人若手クリエイターとの協力可能性をどう捉えているのでしょうか。            

       抜粋:吉良俊彦さんのインタビューから

◆「日中の若者の、目に見えない関係を作りたい」

――中国伝媒大学の客員教授へのご就任、おめでとうございます。
 素直に嬉しいです。いままで自分のやってきたことを中国ナンバーワンの大学の先生たちに理解していただけたと思います。大きな壁を乗り越えた気がします。また、未来を担う若い人と触れ合うことができるのも嬉しいです。僕は日本の大学でも教えていますが、これからは中国伝媒大学の学生の考え方を語れることがすごく大きいと思います。日本と中国のつながりの中に、微力ながらも若者同士の見えない関係を作ることができたら、本望です。

――今日はこの大学での最初の講義になりますが、手ごたえをどう感じましたか。
 僕は授業のポリシーとして、生徒が授業中に眠る責任は教師にあると思っていました。実際、授業中に30%の学生が寝ていたら、やめると決めました。今日もそういうふうに考えて臨んだのですが、この大学の学生は一人も寝ていなかったのです。それだけ、生徒の質が非常に高いのと、僕らの話を新しい話として捉えてくれたのかなと思っています。本当に良かったと思いました。

◆「マンガデザイン」は総合的なクリエイティブの手段

――ところで、吉良さんは「マンガデザイン」をどう定義しますか。
 マンガを学んだ人たちがグラフィックデザインを描いたら、すごく新しい世界が生まれるのではないかなと思って、原点は「マンガグラフィックデザイン」でした。最初は一枚絵を作ります。今度は、ストーリーを作ります。そして、これって動画にできないのかなと思います。それを僕らはマンガデザインの動画化という方向性として、「マンガデザイン・モーション」というのを作っています。
 今の時代では、テレビの15秒、30秒のために映像をつくる必要はないので、長尺で3分間ぐらいの映像を持っていると良いと思います。それを30秒にも、15秒にも作ることもできる。そういう新しい映像文化の中にうまく取り入れて、マンガデザインから、マンガデザイン・モーションへと、連動性のある展開をやっていければと思っています。

――「マンガデザイン・モーション」を先ほど見させていただきました。フレームが動いたり、吹き出しの中の文字が動き出したりして、アニメーションとは全然違う雰囲気の、新鮮な印象でした。
 僕らは、広告モデルが漫画デザインなので、どうしてもクライアントさんの広告費支出を想定した時に、そこの部分を抑えて媒体に出稿するというメディアプランをプロデュースしています。その結果として生まれたのが「マンガデザイン・モーション」です。僕らは総合的なクリエイティブ手段としてこれを使っています。

◆レイヤーを分けながらのチームワーク

――昨年秋、北京と武漢で開かれた「中日文化交流月間」のポスターも、吉良さんの会社が手掛けたものだと聞いています。これを例に、創作過程を説明していただけませんか。(写真右、映像イメージhttp://www.cj-jizhong.com/jap/beijing/
 私たちは今、日本と中国が良い関係を作るための全面協力をしたいと考えています。武漢にスタッフが行っているわけではないので、それがお金をかけずに良いものをつくるという新しい世界観なので、色々調べ、向こうから情報をもらい、こういう絵にしたのですね。
 写真を使うとなると、著作権が絡んできます。なので漫画だからできる試みをやってみました。この絵は40ぐらいのレイヤーに分けて、制作チームがパソコンで作ったものです。それぞれのレイヤーが全部フルで描かれていますので、ここの部分だけを直してくれとか、前面を後ろ側に回すとかの細かい調整も可能です。
 我々は漫画家ではなく、チームですので、たくさんの人たちが一つの作業にかかわります。これがとても大事な世界だと思っています。お互いに良い部分を吸収しながら、コミュニケーション能力も画力も上がります。

――ある意味、組織力から生まれたパワーでもありますか?
 考え方は日本的な「和」の精神によるものかもしれません。ただ、僕らのクリエイティブ・ディレクターチームの担当は韓国の方ですし、今、中堅で頑張ってくれているのは中国の方です。本当にいろんな国の人がうちに来てくれると、色々なボーダーレスな発想を持って作業に取り組むことができると思っています。

◆レイヤー分けの生き方、「強みをより強く、弱みは友達に」

 ――「マンガデザイン」の中国における応用の将来性をどう見ていますか。
 僕らは世界中の人たちと一緒に、それぞれの国に合わせてカスタマイズしたような絵を描いて、マンガ的なものに世界中の人が触れ合うことを展開できるようになったらいいなと考えています。今までは、どちらかと言いますと、中国の日本企業を考えながら、パートナーの人たちと話をしていましたが、これからは中国の国や省との間でぜひマンガデザインを展開していきたい。また、せっかく伝媒大学に来ているので、伝媒大学のデザイナーを使って、その絵を描きたいですね。

――最後に、「マンガデザイン」に興味を持ち始めた若者へのメッセージをお願いいたします。
 僕は、誰にでも自分自身の強さ、ストロングポイントがあると思っています。それは自分自身にも分からない可能性もありますが、ある程度の年齢になってくると、苦手な部分を伸ばすのではなく、強いところをより強くすることが必要です。自分に自信を持って、苦手なところを友達に補ってもらう。それがまさにレイヤーですね。何でもかんでも自分で抱え込まないように、コミュニケーションをしながら、自分の強さがあって、友達の強さもある。そうすると仲間が生まれてくるじゃないですか。そういう生き方を私は勧めたいです。

【プロフィール】
 吉良俊彦(きら としひこ)さん

 中国伝媒大学客員教授、マンガデザイナーズラボ株式会社・プロデューサー

 上智大学法学部卒業後、株式会社電通に入社。様々なラグジュアリーブランドをはじめ、各社のメディア戦略およびプロジェクト、FIFAワールドカップ等のスポーツ・文化イベントの企画プロデュースを行う。
 2004年、電通退社。
 2011年、マンガデザイナーズラボ設立。マンガデザインプロデューサーとして、「マンガデザイン」による公告企画のプロデュースを手掛け、マンガをコミュニケーションソリューションとしてビジネスに活用している。
 大阪芸術大学デザイン学科客員教授、日本女子大学講師
 2017年4月から 中国伝媒大学客員教授

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