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2月21日 火曜日

2017-02-21 20:19:24     cri    


 

 一時間目 中国現代文学の散歩道~李敬澤「趙氏孤児」(3-3)、中国人の結納金は今いくら?

 担当:王小燕、斉鵬

 日本各地では春一番が吹いたようですが、こちら北京では先週末、一時15℃にまで気温が上昇しました。おかげで、近くの公園の湖一面に張っていた氷も、すっかり融けてしまいました。

 今年も春が近づいてきた!・・・と思いきや、今日の昼ごろから突然の雪!降り出しから10分くらいで街は真っ白になりました。気温も氷点下に戻り、三寒四温を実感しています。ちなみに、気象局の発表では、今回の雪は「春雪」だそうです。久しぶりに降った「雪らしい雪」だけに、北京市民たちはとても喜んでいました。ソーシャルメディアには一時、自宅や会社近くで撮った雪景色の写真投稿でいっぱいになりました。CRIの庭にも、子どものようにはしゃぐスタッフたちの姿がありました。

 【旬の話題】

 最近、中国では結婚関係の話題がなにかと流行しています。先週は「向こう30年の中国、約3000万人の男性が結婚相手が見つからない」を紹介したところ、多くのリスナーさんが驚いたようです。今週は、婚約する際の結納に関して、最新の調査結果を紹介します。4年ほど前に、中国では「地方別結納金額マップ」が発表され、話題になりました。その時と比べて変化はあるのか?斉鵬アナが詳しく紹介します。

 【現代中国文学の散歩道~李敬澤「趙氏孤児」】

 中国文学の翻訳誌『新しい中国文学 灯火』の後援により実現したコーナー。『灯火』は中国で最も権威ある文学雑誌『人民文学』の日本語版として、2015年12月に創刊。これまで全3冊が刊行されています。李敬澤著「趙氏孤児」は、2016年3月に刊行した「特別版」に掲載された作品。翻訳は水野衛子(みずの・えいこ)です。

 ★第3部「少年夷皋と熊の手」~その3

 幼くして王位についた夷皋が15歳の少年になった。しかし、わがままで、不良少年の道を驀進していたのだ。史書によると、夷皋は「権力を笠に金を集め、壁に彫り物をした」、「パチンコで人を狙った」という二つの罪を犯したとされている。

 今回はいよいよタイトルにも出てきた「熊の手」殺人事件の核心に触れる。夷皋は自身が起こした事件により、中国の歴史上、最も残忍な暴君とされていた遥か昔の記憶を呼び覚ましたのだ。

 ★用語の解釈

 ①『左伝』(さでん)=「春秋左氏伝」。「春秋」の3大注釈書の1つ。

 ②「宰夫、熊蹯を熟さず、これを殺す」=熊の手を煮込んだ料理人を、十分に煮込まれていなかったとして殺してしまった。

 ③『公羊伝』(くようでん)=「春秋公羊伝」ともいう。「春秋」の3大注釈書の1つ。

 ④「天道」(てんどう)=元々は太陽が天空を通過する道をさすが、ここでは人知の及ばぬ天の理を指す。

 ⑤『太平御覧』(たいへいごらん)=宋代初期の類書の一つ。

 ⑥「纏子」(てんし)=「太平御覧」の巻の一つ。

 ⑦桀王(けつおう)=中国の夏王朝の最後の王。暴君。

 ⑧紂王(ちゅうおう)=中国の商の時代の最後の王。暴君。

 【背景】

 ★李敬澤について

 1964年天津生まれ。 北京大学卒。中国作家協会副主席、中国で最も権威ある文芸雑誌『人民文学』の元編集長。著名な文芸評論家で、中国の作家たちから畏敬される存在でもある。

 幅広いスタイルの作風の作家としての顔もあり、『検証千夜一夜――21世紀初の文学生活』、『文学のために申し開きをする』、『反遊記』、『小春秋』、『理想的な読者へ』などの著書がある。

 ★「趙氏孤児」について

 司馬遷の『史記』にも出てくる史実をもとに、元代の劇作家・紀君祥が元曲として創作した中国の有名な悲劇の一つ。18世紀にはフランスの作家ヴォルテールによって翻案され、ヨーロッパで舞台化された最も古い中国の芝居です。

 中国でも繰り返し京劇などの伝統演劇や話劇の舞台、テレビドラマに取り上げられ演じられてきました。近年では、陳凱歌監督が映画化、『運命の子』の日本語タイトルで、2011年に日本でも公開されています。

 これら良く知られた「趙氏孤児」は、あだ討ちの物語。内容は、霊公殺害の冤罪で趙家が将軍・屠岸賈(とがんこ)から一家全滅の罪に問われます。この時、趙盾(ちょうとん)の孫・趙武のみが、趙家に恩のある公孫杵臼(こうそんしょきゅう)や程嬰(ていえい)らによって助け出され、一人生き延びる。やがて趙武が長じて一家のあだ討ちを果たすというものです。

 李敬澤のこの小説はその有名なストーリーのエピローグ、またはスピンオフともいえる内容になっています。霊公と趙盾との確執に、中国の現代にも通じる諸問題を織り込み、単なる歴史小説を超えた語り口になっています。

 二時間目 妖怪博士とそのお友達~民俗学者・小松和彦さんに聞く(下)

 聞き手:王小燕

 国際日本文化研究センター所長で、2016年度日本の文化功労者に選ばれた小松和彦さんに引き続きお話を伺います。

 中国伝来の「妖怪」という言葉が日本社会でどのようにして定着したのか。そのプロセスを遡っていくと、なんと、「妖怪撲滅」というキーワードにつながる・・・?

 「ゲゲゲの鬼太郎」などを始め、数多くの妖怪をモチーフに漫画を描き、また、数多くの妖怪画を描き残した作家の故・水木しげる氏、そして陰陽師を主人公にした作品など、妖怪文化の最新の研究成果をふんだんに取り入れた推理小説書く京極夏彦氏にまつわるエピソードも。

 そして、妖怪博士の「妖怪の好み」もお聞きしました。小松さんにも、妖怪の好き嫌いがあるのでしょうか。

 ジブリ映画の「平成狸合戦ぽんぽこ」(原作・監督・脚本:高畑勲、1994年)は、小松さんが高く評価している作品です。映画の中では、都市開発に負けてしまったタヌキたち。もし彼らに会えるなら、何を伝えたいのか。そこにどのような気持ちが込められているのか。

 今回も「CRIインタビュー」でしか聞けないエピソードが盛りだくさんです。

 ■抜粋:小松和彦さんのインタビューから

 ――妖怪学に心酔した理由は?

 神社に祭られている神様が、ある意味で人類の理想を表しているとすれば、人間の一番醜悪な部分を体現するのは、ひょっとしたら妖怪なのかもしれません。そういう目で見ていくと、神がいたら、セットで妖怪も考えたい、というのが、妖怪学を考える一つの理由ですね。

 ――「妖怪」と「ゴジラ」などの違いについて、どう捉えていますか。

 ゴジラやエイリアンは未来や、宇宙からやってくるもの。対して、妖怪は過去と深くかかわっていて、過去の文化を引きずっている。水木しげるさんの妖怪画を見ると、どこかノスタルジックな気持ちに誘われるのがその一例です。

 ――日本では、「妖怪学」は妖怪を撲滅する中で始まった学問とおっしゃいましたが…。

 基本的に妖怪はどんどん撲滅されていくのですが、同時に、撲滅するに値するだけの文化の発展もあったことかと思います。しかし、今度は撲滅ではなく、それを楽しむ文化をどんどん作っていけば良いのではないかと思っています。

 ――妖怪学を研究する学者として、外国人に一番伝えたいメッセージは?

 アニメやゲームなどを通して日本文化に関心をもった人なら、妖怪文化にもきっと出会えるだろうと思います。日本文化というのは、富士山や、源氏物語、能、茶道、華道などだけではありません。今まで知られていなかった、「妖怪文化」という大衆文化もあるんだということも理解してほしいです。そして、新しい日本研究の未来はきっとそういうところにあるんじゃないかと私は思います。

 

 ■抜粋:先週のインタビューへのリスナーさんの感想

 ★Senxia Heyanさん

 小松教授のインタビューを聴いていて、ふと柳田国男の遠野物語を思う私です。最近ああいう世界からは遠ざかっていたので何か懐かしい不思議な感じが自分の中に湧き起こって来ました。これはこれでなかなかいいものです。

 ★ゲンさん

 妖怪談義が北京を経由して日本で聞けるとはびっくり。

 小松先生の妖怪愛にどっぷり浸かれました。妖怪は人間が作った文化。

 妖怪を見ていると人間が見えてくるという、優しい温かな先生の語り口に魅かれました。

 ドラキュラも妖怪という、日本文化が取り入れた雑種性のお話は目からウロコでした。

 中国の妖怪のお話も聞いてみたいものです。来週も楽しみにしています。

 ★Jason_嘉言さん

 民俗学の資料を集めている最中です。とても面白い分野だと思います。先日、日本の『羽衣伝説』に関する論文を読んだばかり。そんな中での小松先生のインタビューですので、心から感謝しています。

 ご意見、ご感想はどうぞ riyubu@cri.com.cn宛にお送りください。

 この番組「CRIインタビュー」はPodcastや中国のネットラジオ「ヒマラヤFM」でもお聞きいただけます。

 【プロフィール】

 小松 和彦(こまつ かずひこ)さん

 国際日本文化研究センター所長

 1947年東京都出身。

 文化人類学者、民俗学者。口承文芸論、妖怪論、シャーマニズム、民間信仰などを研究。

 文化人類学の切り口の1つとして、妖怪について研究し、学問として確立。

 2016年10月 日本の文化功労者に選ばれる。

 中国では、学術界だけでなく、ACG(マンガ、アニメ、ゲーム)など日本のサブカルチャー愛好者から、「妖怪博士」として知られて

いる。

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