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「お米の絆」 董博文 大連外国語大学

2016-10-14 14:00:15     cri    

 私が小さい頃、父はよく子供時代の話をしてくれました。その中でふるさとのお米の話がとても印象に残っています。

 私の父は中国東北部の農村で生まれました。家の前には田んぼが広がっており、祖父母は春の田植えから秋の収穫まで、毎年繰り返し稲作を続けてきました。子供の頃の父は稲作は退屈で平凡な仕事だと思っていたそうです。当時の私の父の夢は農村を出て都市の大学に入学することでした。

 数年後、父は大都市にある大学に合格し、夢を叶えることができました。大学に向かう日の朝、祖父母は私の父に自分たちの作ったお米を持たせました。初めて大都市を見た父にとって都市の物は全て新鮮だったそうです。「これから僕は都市の人間なんだ。米なんかどこでも売っている。」と思い、父は大学の寮に着くとすぐに、家から持ってきたお米を自分のベッドの下に隠しました。

 大学の食堂のお米は父がそれまで食べていたものとは違いました。以前、当たり前のように食べていた自分の家で作ったお米がどれほど美味しいものだったのか父はこの時、初めて気づいたそうです。それから父は隠していたお米をベッドの下から取り出し、寮の友達と一緒に食べました。皆から好評を得て父は自分の故郷のお米を誇りに思うようになり、帰郷した時には農作業の手伝いをするようになりました。そして大学の四年間、父は家へ戻るたびにお米を持って帰って友達と一緒に食べたそうです。

 大学を卒業後、父は日本へ留学しました。日本にいる間、父はコシヒカリが大好きでした。コシヒカリは自分の家で作られた「東北大米」という品種と味がとても似ていたからだそうです。ほかほかの美味しいご飯は留学中の父にとって一番の慰めであり、それからの父の運命を決めることにもなったのです。今、私の父はより効率的に稲作ができるように日本の技術者と一緒に中国の大学の研究所で農業用ロボットの開発に取り組んでいます。

 私は先月、川崎広人さんという日本人が 3 年前から河南省で循環型農業を指導しているという記事を読みました。川崎さんによると、化学肥料は長期的には大きな害になるので、川崎さんの使用する肥料はすべて有機肥料だそうです。私は川崎さんの話を聞いて自分の父のことを思い出しました。川崎さんも、私の父も、自分のふるさとの美味しくて安全なお米をもっと多くの人に味わってもらいたいという夢を抱いてお米と関わり続けているのではないのでしょうか。

 お米はアジアの人々にとって最も大切な主食として長い間、多くの人々に親しまれてきました。お米は私たちにとって大切な主食というだけでなく、人と人、国と国を結ぶ力を持っているのかもしれません。今年の端午節に日本の「飯炊き仙人」と呼ばれている村嶋孟さんが中国を訪れました。村嶋さんは中国各地で中国東北産のお米で美味しいご飯を炊く方法を指導してきたそうです。

 私は母と日本でお寿司作りを体験したことがありました。お寿司の作り方を教えてくれたのは近所に住んでいた日本人の方でした。お寿司に使うご飯の炊き方から教えてもらい、私達は「お寿司は普通のご飯と炊き方も違うから美味しくなるんだなあ」ととても感心しました。端午節には私の家族が日本人の方を招いて一緒に中国の粽を作って楽しみました。こうして、お米は中日友好交流の架け橋になることもできるのではないでしょうか。

 私は、国と国との交流というのは、両国の多くの庶民の生活の上に成り立っているのだと思います。両国の主食である「お米」の研究、両国の庶民のための交流こそが今後の中日関係のあり方なのではないでしょうか。「自分の故郷の美味しくて安全なお米をもっと多くの人に味わってもらいたい」という気持ちに国境はありません。中日両国の「お米」の研究が庶民のくらしをより豊かにし、「お米」を通して暖かさのある民間交流が中日関係を新しい方向へ導いてくれると私は信じています。

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