現在、共同通信社では、英語、中国語と韓国語の三言語を使って海外向けに報道を行っており、国際局多言語サービス室は中国語と韓国語の報道を担当しています。日中関係にしろ、日韓関係にしろ、歴史問題と領土問題における対立などの原因により、2012年以降いずれも大きく悪化しました。特に、日中関係については、「1972年の国交正常化以来最悪の状態」とも言われています。このような情勢の下で、私が編集を担当している中国語報道は「報道の中立性の確保」を一貫して重視しています。
歴史問題を例にしますと、日本政府は自らの歴史に対し、その立場と出張を持っています。一方、中韓両国もそれぞれ同様に自らの立場と主張を持っています。日本国内では集団的自衛権など、政府の主張を支持する意見もあれば、政府とまったく違う意見を持っている人もいます。忘れてならないのは、我々は政府の主張を宣伝する政府筋の報道機関ではなく、政府から独立した報道機関ですので、政府の立場を伝えるだけでなく、日本の国内外の様々な意見や分析を発信することにも取り組んでいます。
メディアの海外向けの報道については、その最も重要な役割の一つは相互理解を促すことにあると思います。海外の読者に信頼されるメディアになるために、国と国の間に対立が存在する問題においても意見を伝え、中立性を確保するよう努力する必要があります。
2014年11月、日中首脳会談を契機に、両国関係には改善の兆しが見えてきました。また、日韓関係においても、昨年末に両政府は慰安婦問題について基本合意に達してから、これまでの緊張関係が緩和の方向に向かっています。しかし、政府間関係がいくらか改善できても、国民間の感情が改善できなければ、真の意味の良好関係は期待できないでしょう。相互理解を促すことは国民感情を改善する最も効果的な方法だと思います。
日中関係・日韓関係の改善のテンポが遅く、今後も新たな摩擦や対立が引き続き生じてくるだろうと予想しております。メディアの報道を通じて相互理解を増進させることができれば、摩擦と対立を緩和させ、ひいては地域間の交流をより一層促すことができるかもしれません。しかし、相互理解を促すためには、メディア一社の力だけではなかなか足りません。我々は今後も引き続き中立性を重視しながら、各国メディアとの協力を積極的に拡大して行きたいと思っております。
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