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慶應義塾大学准教授・神保謙スピーチ

2016-04-29 17:11:45     cri    

「北東アジアにおける安全保障アーキテクチャ」
「安心供与」のための3カ国間協力
北東アジアと安全保障アーキテクチャの三層構造

 アジア太平洋地域おける安全保障のアーキテクチャは、米国を中心とする同盟ネットワーク(第1層)、問題領域別の安全保障協力(第2層)、広域地域制度(第3層)の三層構造によって成り立っている。日本と韓国は米国の同盟国であり第1層を支えているが、北東アジアでは(第2層)と(第3層)がミッシングリンクとなっている。安定した地域秩序のためには力の均衡と安心供与を同時に進めることが重要で、日中韓3カ国の協力は主として安心供与のための地域アーキテクチャを補強する基盤となる。

 問題領域別の安全保障協力(第2層)

 そのために日中韓3カ国は問題領域別の安全保障協力を強化すべきである。これは「互いの価値を共同で守る」ことが基盤にあり、危機管理・信頼醸成・相互協力のメカニズム形成といった幅広い概念が含まれる。この(第2層)を強化することは、日中韓3カ国が外部の力に頼らず、自らの意思と能力で安全保障上の課題を解決出来る能力を醸成することに繋がる。日中韓3カ国が推進すべき協力としては以下のような問題領域がある。

 朝鮮半島をめぐる問題:朝鮮半島の非核化の実現、朝鮮半島の安定化のために、北朝鮮を巡る政策対話を強化する。そのために①北朝鮮に対する安保理決議2270号(2016年3月)の履行の評価を実施、②北朝鮮の6者協議及び9.19共同声明への復帰を強く促す、③韓国政府の提案した5者協議や北東アジア平和協力メカニズム、そして朝鮮半島情勢が変動した場合の危機管理等について対話を強化する。

 人道支援・災害救援(HA/DR):東アジアでは毎年のように大規模な自然災害が発生し、域内の軍・警察・消防・海上警備当局には災害発生後の緊急展開体制、事後の災害救援など幅広い役割が求められる。日中韓3カ国でもアジア災害救援に関する野心的なイニシアティブを発揮すべき。①HA/DR分野における3カ国間のTTXを実働訓練への格上げ、②ASEAN地域フォーラム(ARF)、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)における共同訓練の場において、日中韓が積極的に協力を拡大する、③災害救援に関する「日中韓人道支援調整センター」の設立(ASEANのAHAセンターをモデルとする)などが具体的提案として挙げられる。

 海上における信頼醸成:日中韓の軍及び海上警備当局者同士が緊密に連携し、海上の安全に関する行動規範やホットラインを設置し確実に運用することが重要。その際に、国際規範である海上衝突回避規範(CUES)や米中のMOUなどに準拠した形で策定されることが望ましい。また海上における捜索救難(S&R)や事故防止のための協力も促進すべき。

 安全保障協力制度構築(第3層)

 北東アジアには安全保障協力を推進する多国間の制度的枠組みが存在しない。これまで地域協力のエンジンであったASEANの中心性を尊重しつつも、北東アジアにおいてもASEAN(特にADMM)を参考とした制度構築を目指すべき。定期的な国防大臣級の閣僚会合の実施(=日中韓国防大臣会合)、HA/DR、捜索救難、PKO等の分野における合同訓練の実施、部隊交流、セミナーなどが定期的に開催されることが望ましい。

 日中韓3カ国の安全保障協力に関するトラックII会合も積極的に実施されるべきである。3カ国の主要な大学・研究機関(シンクタンク)が(第2層)(第3層)協力のあり方について研究を進める枠組みや、「ヤングリーダーズ・プログラム」や奨学金といった形で、次世代の3カ国の安全保障協力に関する研究や提言を促す枠組みが設立されることも望ましい。

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