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二時間目 中国の現代詩人とその作品 第6回 瓊瑤

2015-07-13 20:25:15     cri    

 月曜日2の時間目、<スペシャル番組>として中国の現代詩人とその作品にクローズアップしてお送りいたします。6回目にご紹介するのは、1960年代から今でも人気を博している、台湾の女性恋愛小説家、瓊瑤(けいよう)とその詩作です。ぜひお楽しみください。

 瓊瑤(けいよう)は、台湾在住の人気女流作家で、恋愛小説を中心に創作活動を続けています。その作品の多くが映画化やドラマ化され、既に映画、テレビ界においても大きな存在となり、純愛ドラマの大御所作家と言われています。瓊瑤(けいよう)というのは、彼女が18歳から使い始めたペンネームで、本名は陳喆(ちんきつ)といいます。

 1938年4月、四川省成都に生まれ、父親は大学の教授で、母親は名家(めいか)のお嬢様で、11歳の時に両親に連れられて台湾に渡りました。高校を卒業し大学受験に失敗してしまうと、すぐに結婚して専業主婦になりました。最初は、暇つぶしのつもりで小説を書いていましたが、瞬く間に人気が出てプロの作家になってしまいました。1963年、初めての長編小説「窓外」(そうがい)を発表すると、ベストセラーになりました。その後、名作を続々に誕生させ、台湾だけでなく香港、中国大陸部、さらにはシンガポールやマレーシアなど、中国語圏で大ブレークを巻き起こし、今では愛読者は数億人以上にのぼっています。彼女の作品のほとんどは女性向けのラブストーリーで、特に少女マンガに近い純愛物語が多くあります。女性主人公は可憐な美人で、芯が強い。男性主人公は年上のイケメンで、男らしくてしっかりしている。そんな二人は紆余曲折を経てようやく結ばれる、というシナリオが定番になっています。非常にロマンチックで、驚きの展開だけでなく悲劇も少なくないため、女性読者の涙をずいぶん誘いました。ですから、いま、中華圏で30代以上の女性に、瓊瑤の小説を読んだことがあるかと聞くと、答えは絶対YESだと思われます。

 瓊瑤の作品のもう一つの特徴は、文章が美しいことです。流麗(りゅうれい)かつ簡潔で、決め台詞(きめぜりふ)の格好良さにしびれてしまいます。また、ストーリーの展開に合わせて、表現力を最大限に生かした詩を綴り、登場人物のそのときの心理を的確に表した描写力が素晴らしかったです。そんな彼女の小説は1960年代からずっと映画化・ドラマ化され続けています。一部の統計によりますと、ドラマ化された作品はなんと22作もあるそうです。比較的最近の作品は、趙薇(ヴィッキー・チャオ)主演の「還珠格格(還珠姫〜プリンセスのつくりかた〜)」シリーズで、3部作で100話を超えました。1960年代から今までの長きにわたり、小説、映画、ドラマで、沢山の人々に感動を与え続けている瓊瑤、今でも、原作の純愛ドラマの脚本創作に取り組んでおり、これからも大ヒットを生み出してくれるのではないかと思います。

作品一:

 これは、瓊瑤の同名小説、『我是一片云(私は雲)』に収録された詩です。また、38年前の1977年、この小説が映画化され、主題歌の歌詞もこの詩からアレンジされました。

 ちょうど昨年、日本の中高生の間では、「壁ドン」が流行りましたね。実は、この映画では、台湾のイケメン俳優・秦漢(チン・ハン)と女優の林青霞(ブリジット・リン)が恋人役を演じ、「野外壁ドン」を行っているのです。ヒーロー役の秦漢(チン・ハン)が雑草の生い茂る空き地で、木を背にしているヒロイン役の林青霞(ブリジット・リン)に向かって「壁ドン」ならぬ「木ドン」をして、「もうかくれんぼは止めよう。僕をからかっているのかい」と、ささやきながらじっと見つめ、熱いキスを交わすという王道シーンが展開されました。

我是一片云

――琼瑶

 

我是一片云
天空是我家
朝迎旭日升
暮送夕阳下

我是一片云
自在又潇洒
身随魂梦飞

来去无牵挂

 

『私は雲』

――瓊瑤(けいよう)

 

私は雲

空が家

朝は日の出を迎え

夕方は日没を見送る

 

私は雲

自由気ままに

夢を追って飛び回り

どこに行くのも気兼ねしない

作品二:

 この詩は瓊瑤の創作した同名の恋愛小説『几度夕阳紅(夕日が何度も赤くなる)』に収録された作品の1つです。この小説は台湾を舞台に、抗日戦争中、戦渦(せんか)に巻き込まれた3人の若者の恋愛と運命を描いたもので、1986年にドラマ化され、大ブレークしました。しかも、この小説は初めてドラマ化された瓊瑤の作品でもあります。この詩はこのドラマの主題歌の歌詞にもアレンジされました。

《几度夕阳红》

——琼瑶

 

时光留不住 
春去已无踪。
潮来又潮往 
聚散苦匆匆。


往事不能忘 
浮萍各西东。
青山依旧在 
几度夕阳红。


且拭今宵泪, 
留与明夜风。
风儿携我梦 
天涯绕无穷。


朝朝共暮暮, 
相思古今同。
青山依旧在 
几度夕阳红。

『夕日が何度も赤くなる』

――瓊瑤(けいよう)

 

時の流れは止められず

春は過ぎ去る

満ちては引く潮

出会いと別れを繰り返す

 

昔を忘れられず

浮き草のように流れ漂う

青山は変わらず

夕日は何度も赤くなる

 

今宵の涙は拭い取り

明日の夜風に乗せる

風と共に夢を追いかけ

空の果てまで飛び回る

 

朝な夕ないっしょに

恋しい想いは昔も今も変わらない

青山は変わらず

夕日は何度も赤くなる

作品三:

 これは切ない恋を描く作品です。好きな人に近寄ろうと一生懸命努力しても、なかなか近づくことが出来ない、というもどかしい想いが表れていますね。日本語には「夜目遠目笠の内」という言葉があります。女性が一番美しく見えるのは、夜の暗がりで見る時、遠くから見る時、笠の下からちらりと見える時だという意味ですね。この詩も、このような情緒が込められていると思います。果てしなく生い茂った青草や、どこまでも広がる霧の向こうに、ぼんやりとしか見えない彼女の姿や面影こそ、想像力も加わり一番美しく思えるのではないでしょうか。

《在水一方》

――琼瑶

 

绿草苍苍,白雾茫茫,

有位佳人,在水一方

绿草萋萋,白雾迷离,

有位佳人,靠水而居。

我愿逆流而上,

依偎在她身旁。
无奈前有险滩,
道路又远又长。

 

我愿顺流而下,
找寻她的方向。
却见依稀仿佛,
她在水的中央。
 

我愿逆流而上,
与她轻言细语。
无奈前有险滩,
道路曲折无已。


我愿顺流而下,
找寻她的足迹。
却见仿佛依稀,
她在水中伫立。
  

绿草苍苍,白雾茫茫,
有位佳人,在水一方

『川の向こう』

―瓊瑤(けいよう)

 

果てしない青草、どこまでも広がる霧

愛しい人は川の向こうにいる

生い茂る青草、ぼんやりした霧

愛しい人は水際に暮らしている

 

川をのぼり

彼女のそばにいきたいけど

早瀬(はやせ)は険しく

道のりも長く難しい

 

川を下り

彼女の行方を捜す

微かにしか見えない

川の中央に立つ彼女の姿

 

川をのぼり

彼女に声を掛けたいけど

早瀬(はやせ)は険しく

道のりも長く難しい

 

川を下り

彼女の足跡を探す

微かにしか見えない

川に立つ彼女の姿

 

果てしない青草、どこまでも広がる霧

愛しい人は川の向こうにいる

作品四:

 名前のとおり、この詩は瓊瑤の書いた朦朧詩の一つで、同名の恋愛小説に収録されています。初恋のどきどきした気持ちや甘い愛のささやきを描く作品です。

      《月朦胧 鸟朦胧》

       ——琼瑶

 

月朦胧鸟朦胧

萤光照夜空

 

朦胧朦胧

秋虫在呢哝


朦胧朦胧

晚风叩帘笼

 

朦胧 朦胧

但愿同入梦

『朧月・朧鳥(おぼろづき・おぼろどり)』

―瓊瑤(けいよう)

 

月はおぼろで、鳥もぼんやり

蛍が夜空を照らす

 

山はかすんで、木もぼんやり

秋の虫がりんりんと

 

花もぼんやり、夜もぼんやり

夜風が窓を叩く

 

ともし火はかすみ、人影もぼんやり

共に眠りにつこう

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