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洛陽牡丹紀行を終えて

2015-04-20 10:47:53     cri    

 「洛陽は石も牡丹を咲きにけり」20余年ぶりに訪れた龍門石窟で以前は無かった「牡丹石」(黒い御影石のような石の中に無数の牡丹の花の形をした結晶のようなものが見える石)を見た時に一茶が桜草を「我が国は草も桜を咲きにけり」と、日本人の桜への熱愛ぶりを句にしたもの思い出した。この石以外にも高速鉄道で洛陽入りした私たちを迎えたのは駅の花壇で咲き誇る真っ白な牡丹だった。市内を車で走ると中央分離帯には濃い紫の牡丹が植えられていた。もちろんホテルのロビーも薄ピンクの牡丹が溢れていた。今回の取材は「牡丹紀行」と名付けてみたが、まさに洛陽の街には牡丹が溢れていて、石の中にも牡丹の花が咲いていた。

牡丹の力

 世界の工場と言われていた中国も最近では、第三次産業が注目を集めている。中でもここ数年は観光業へ強いスポットライトが当たっているようだ。日本へ爆買いに行っている中国人はほんの一部で、多くの中国人は国内旅行を楽しんでいる。日本が中国人観光客の誘致に必死なように、国内の地方都市も同じだ。景色や歴史、輩出した偉人など何かPRできる観光資源を見つけては公園や施設を作って入場料を徴収する。去年あたりから中国でも各地で盛んに「桜まつり」が開催されているが、観光資源がなければ、桜を植えて観光客を誘致しようということなのか。北京の玉淵潬や無錫の罨頭渚など中日友好の証としての桜の方がむしろ少数派のように感じる。花産業はすそ野も広く、これからますます注目され各地で花まつりが開催されるようになるかもしれないが、洛陽の牡丹まつりは今年で33回を数える老舗だ。20余年前に洛陽の牡丹まつりを観光した時は、市民がのどかに公園で牡丹を楽しむというイメージで、観光産業とは結びつかなかったが、今回は[牡丹]が産業になっていることを感じた。しかも、牡丹はもはや「花」を愛でるだけでなく「文化」になっていて牡丹まつりの正式名称も、「第33回牡丹文化フェスティバル」。花だけでなく、歴史、舞踊、グルメなど多方面でのイベントが行われる。

 「牡丹」という歴史ある観光資源を持つ洛陽にも「桜」が咲いていた。中国初の仏教寺院白馬寺の境内では、日本から贈られたという桜が1本だけだが、記念撮影ポイントになっていた。この寺には日中友好25周年の文字とともに空海の像もあった。牡丹咲き乱れる国花園にもポツンポツンとではあるが、少なくとも10本は桜の木があった。「中国牡丹VS日本桜」と捉えられがちだが、2つの花を目の前にすると「中国牡丹&日本桜」と言った感じで、競演というより共演の文字がふさわしい。それぞれに美しさがあって、それは対峙するものではなく補い合うもの。主役は一人ではなくていい。

一帯一路

 今の中国を読み解く1つのキーワード「一帯一路」。30年ほど前に日本ではNHKで紹介され、喜多郎の音楽とともに大流行、注目された「シルクロード」。当時はその砂漠と廃墟、オアシスの景観や少数民族の暮らし等に関心が集まった。現在は、一帯=「シルクロード経済帯」と一路=「海上シルクロード」と言うことで、「シルクロード」と言うキーワードがスポットを当てるのは、文化交流を通じて経済のつながりを密にして、ひいては政治的な信頼関係を強めようという戦略。

 今回の取材は各所でこの「一帯一路」=シルクロードを意識した。牡丹文化フェスティバルの開幕式では、開幕宣言に続いて情景舞台劇「シルクロードに咲く花(丝路花开)」が披露された。2日目の夜も「洛陽シルクロードカーニバル」というタイトルの出し物が披露された。こういったパフォーマンス以外にも洛陽を紹介する資料、映像では洛陽がシルクロードの起点であることが強調されていた。今までシルクロードの起点は西安だと思っていた私には少し違和感があったが、逆に中央の政策である「一帯一路」が地方の現場にも確実に届いている感じがした。

 このシルクロードとともにクローズアップされていたのが、ここに都を置いた則天武后。私にとっては中国、唐の時代の女帝くらいの知識しかないが、人気女優範氷氷のドラマがヒットし今、中国ではホットな歴史上の人物になっている。日本でも大河ドラマなどが町おこしになるといわれるが、中国でも同じようだ。

 また、洛陽の観光と言うと「龍門石窟」「白馬寺」が定番だが、古都ならではの新しい観光スポットも目を引いた。開園してから5年という「隋唐遺跡公園」。遺跡というと、掘り出されたまま、発見されたままで公開されている場所が多いのだが、ここは都だった場所を公園として整備し、都の正殿に当たる場所に立派な建物を建て、ガラス張りの床で遺跡を見学できるようにしていた。古都と言っても、当時はいきいきキラキラしていたのだろうが、どの建物もピカピカ過ぎて私には違和感が否めない。しかし、わび、さびのひなびた感じが好きなのは日本人だけで入場料をとるにはこのくらい豪華にしないと納得されないのかもしれない。

温故知新

 古都洛陽を取材し、中国の産業の軸足が観光業に移っていること、「シルクロード」が地キーワードであることなど新しい発見が多かった。20余年ぶりに訪れた洛陽は、私にとって全く新しい街だった。北京への帰路、高速鉄道の車窓の景色をぼんやりと眺めていると江南地方、河北、東北地方とは違う中原の景色が目に映る。のどかな春の陽の中、停車駅が近づくと直ぐわかる。建設中の高層ビル群が目に入ってくるからだ。マンションなのか商業ビルなのかいずれも20階以上と思われるビルが30棟、いやもっと多数建設中。高速鉄道の駅を中心にニョキニョキと生えている感じだ。完成した時にどんな人が住んで、どんな街になるのか。想像しがたいが、これだけの建物が建築中だからこそ減速したとはいえ7%の経済成長率が保てるんだと思う。中国は広い、人口も多い、そして、その中国がみる夢も大きい。

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