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一時間目 河南省安陽市の殷墟

2015-02-06 19:13:48     cri    


 殷墟は、河南省安陽市北西部のエン河の両岸に位置しています。中国商代後期(紀元前1300年~1046年)の都の所在地であり、当時の政治、経済、軍事、文化の中心でした。紀元前14世紀の末期に商王の盤庚がここに遷都して以来、商の紂王の時代に国が滅びるまで、8世12人の王を経て273年間都が続きました。 

 商王朝が周王朝によって滅ぼされたのち、都はすっかり荒れ果ててしまいました。この地はもともと「北蒙」という地名でしたが、別名を「殷」と言ったため、後世の人によって「殷墟」と名付けられました。

 1899年のある日、清朝の翰林(皇帝の秘書官)であった王懿栄は、服用している漢方薬の「竜骨(古代の動物の化石で漢方薬では強壮剤として用いる)」に、青銅器の銘文とよく似た記号を発見しました。偶然に発見されたこの手がかりによって見つかったのが、「竜骨」の産地である河南省安陽の小屯村(現在の殷墟所在地)です。こうして埋もれていた商王朝の3000年余りの秘密が少しずつ明らかにされていきました。

 考古学者はこの発掘から、敷地面積24平方キロメートルに及ぶ殷墟が、配置のきちんと整った厳密な構造の都の跡であり、高度に発達した奴隷制社会の縮図であったことを裏付けました。ここには壮大な規模の宮殿や宗廟もあれば、庶民の居住区や奴隷の居住区もありました。また、銅器鋳造、骨の器、陶器などを製造する手工業の工房もありました。面積の広い皇族の陵墓だけでなく、庶民の墓地もありました。

 エン河の南岸に位置する宮殿宗廟区は、殷墟のもっとも重要な構成部分の1つです。南北約1056メートル、東西約650メートルで、総面積は68万7000平方メートルに及びます。ここは商王が政務を執り行い、寝起きをする場所でした。現在、80余りの宮殿宗廟の突き固めた土で造られた基礎建築の跡が発掘され、整理されています。非常に大きな規模であったため、発掘の際、その配置によって遺跡は甲、乙、丙の3つに分けられました。

 殷墟遺跡の保護のため、地下部分を覆い、地上部分に模型をつくり展示する方法を採用しました。宮殿宗廟の遺跡区の乙二十宗廟遺跡には、殷代の「茅茨土階(茅で屋根を葺き、突き固めた土の階段)、「四阿重屋」(斜めになった四面の屋根の二重ひさし)」の様式になぞらえて造られた建築があります。考古資料と古文献の記載をもとに、専門家たちの度重なる論証を経て建てられたものです。3000年あまりの時を経て、今日に至っても商代の建築の壮麗な輝きを感じることができます。

 ここ百年あまりの間に、殷墟からは16万枚以上の甲骨片が発掘されました。これまで中国で発見された甲骨文字の大部分は、ここで出土したものです。甲骨文字の専門家たちは、これらの甲骨片に4500以上の字を発見、そのうち1700字あまりを判明判読しました。  

  甲骨文字は、エジプトのパピルス文字、古代バビロンの楔形文字、古代インドの文字とともに世界の四大古代文字の1つであり、中国最古の熟成した文字としても知られています。判明可能な文字から、甲骨文は「象形」「会意」「形声」「指事」「転注」「仮借」の六書の造字法からなっていることがわかっています。その書き方は3000年あまりの間に変化を重ねてきたものの、現在世界の4分の1の人口が使用している漢字に、形、音、義を特徴とする文字と基本的な語法は依然として、当時の原型をとどめています。独自の風格をもつ甲骨文の文字は、いかなる外的要素にも影響されることなく、数千年にわたって一貫して用いられ、衰えることはなかったのです。他の三種の古代文字がもはや失われてしまった今でも、依然として粘り強い生命力を誇っているのは、世界の文化史上、稀なことです。

 乙二十宗廟遺跡の北西部に、 YH127と呼ばれる甲骨が見つかった穴蔵の展示ホールがあります。ホールの中央にある土の坑に、当時の様子が復元されています。1936年6月12日、この地で中国の考古学者が甲骨片を発見しました。その後、この坑からは1万7096枚の甲骨が出土しました。中には無傷の亀甲300枚余り、卜骨(占い用の骨)8枚も含まれます。出土した際、これらの甲骨は一体の人骨と一緒に積み重なっていました。これは占いの後にわざわざ商王が埋蔵したもので、専門家はこの人骨は保管係であろうと考えています。  

 これを見た国連ユネスコの専門家は、「私の知る限り、人類の最古の古文書に違いない」と述べたことがあります。

 現在でも、殷墟は考古調査と発掘がまだ続いています。皆さん、漢字の起源に興味をもつなら、是非、河南省安陽市にある殷墟を訪れてみませんか。

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