一時間目は、世界自然遺産に登録された九寨溝をご紹介します。6月中旬、日本語部の専門家、高橋さんが四川省の九寨溝を訪れました。今日の番組では、高橋さんのリポートを交えて、九寨溝のいろいろな有名な観光スポット、長海、原始森林、箭竹海、パンダ海、五花海などをご紹介します。

　九寨溝は四川省の北部、岷山山脈南部のアワ・チベット族チャン族自治州に位置します。長江水系に属する嘉陵江の上流、白水江を源とする一大支流の渓谷です。九寨溝には、九つのチベット族の寨子（集落、村）があるため、そうした名前がついたといわれています。「Ｙ」字型をした三つの渓谷からなり、それぞれ「樹正溝」、「日則溝」、「則査窪溝」に分かれています。全長55・5キロ、総面積は1320平方キロ。渓谷には、大小の湖が114、瀑布が17、石灰岩化した浅瀬が5、泉が47、早瀬が11あり、水流の落差は1870メートルにも達しています。

　九寨溝の翡翠色の湖、幾重にも流れ落ちる滝、雪の峰、四季折々に色彩を変える林、チベット族の風情は、人々に「九寨五絶」、つまり九寨溝の五つの絶景と称えられています。都会とは遠くかけ離れたこの山岳地は、空気が澄んでおり、50キロ先まで見わたせるほどだといわれています。雪解け水が地中で濾過され、数珠のように連なる湖沼に流れ込みます。青々とした空の光をうけとって、湖の色は絢爛多彩に変化します。

　色彩の美しい湖といえば「五彩池」でしょう。精巧な青い宝石を密林のなかに嵌め込んだように、水が透き通っています。湖のほとりに立つと、湖の底6・6メートルの深さの小石の形やスジまでハッキリと見えます。

　また、九寨溝の絶景といわれる、「五花海」は、湖の底の石灰岩の堆積と色彩の豊かな藻類、沈殿する植物などが分布して、湖面に鮮やかな色彩を生み出しています。赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫など、湖はまるで多彩な宝石が嵌め込まれてできたかのようです。

　九寨溝にある17の瀑布のうち、よく知られているのが「樹正」「諾日朗」「珍珠灘」の三大瀑布です。「樹正瀑布」は、「九寨溝の縮図」と呼ばれる「樹正溝」に位置します。上流の河がゆっくりと浅瀬をすぎて、崖の端の樹木に分けられ、無数の水の束をつくります。その瞬間、弓なりになった崖から水流がほとばしり落ちていきます……