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柔らかい春の日差しが注ぎ込んで、うつらうつらしたくなるバスの中の出来事でした。
休日ということもあって、車内は買い物袋を手にした人たちですし詰めでした。私は座ったまま、窓の外の景色を見るとはなしに眺めていました。街はすっかり春の装いになっていました。
ある停留所で孫を連れたお婆さんが乗って来ました。私が反射的に立ち上がって席を譲ると、お婆さんは「ありがとう」と言いながら、お孫さんに向かってこう続けました。「あなたもこのお姉ちゃんのような大人になるんだよ」
老人に席を譲ることは当たり前のことで、それをそんなに大層に誉められると、嬉しさどころか居心地が悪くて、なんだか落ち着かなくなりました。そんな私を見て、小さい子供は「お姉ちゃんは何年生なの?」と訊いてきました。「三年生だよ」私は無愛想なまま答えました。私の答えを聞いてその子は突然、吹き出しました。そしてお婆さんに向かってこう言いました。「それじゃ、私の方が先輩だね。だって、私は4年生だもの」
その子の声が聞こえたのか、車内は大爆笑に包まれました。
私もつられて苦笑いをしたら、その子は更にこう続けました。「やっぱり、そうだ」。私が「何が?」と訊くと、その子は「お姉ちゃんには笑顔がよく似合うよ」と、やはり飛びっきりの笑顔を見せました。
そう言えば、私はバスに乗ってからずっとブスッとした顔で座っていました。何も話さず、何にも関心を示さず、世の中のすべてのことは私には関係のないことだという態度をしていました。しかし、どこかで誰かが私を見ているということに、この子は気づかせてくれたのです。この子のおかげで、私はしばらく忘れていた笑顔を思い出すことができました。私だけではありません。バスの中の人、全員が笑顔になっていました。そういうことに気が付いた後、窓の外の景色も眠気を誘うものではなく、春の優しさと快活さに溢れたものに感じられるようになりました。
学校に帰って、私はさきほどの出来事を友達に話しました。「情けないでしょ、そんな子供にバカにされるなんて」。友達は冗談半分で言いましたが、私にとっては、バカにされたことより素直な子供に指摘されたことの方が心に強く残りました。
私は気分屋で理論よりも感情が先に立つタイプです。感情の起伏が激しくて、気持ちがすぐに顔に表れてしまいます。いつも自分が満足することが最優先で、自分に関係がないことに興味を感じないまま大学三年生になってしまいました。そうやって生きてきて、私はいつの間にか素直さというものを忘れていました。「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる」ということをあの子は気づかせてくれたのです。
大学3年生は子どもとは言えません。それでも、私の前にはこれからの長い人生が横たわっています。きっと辛いことや悲しいことが、私を待ち受けているでしょう。けれども、そんな時、「お姉ちゃんには笑顔がよく似合うよ」という言葉を思い出して、笑顔で歩んでいきたいと思っています。大きな壁があっても、自分に自信を持って体当たりをしていきたいです。笑顔は自分だけのものではなく、周りの人を元気づけてあげたり、慰めてあげたりできます。私はそんな素敵な笑顔を持った強い人間に成長できればいいなと思うのです。
柔らかい春の日差しに負けないくらい、もっと明るく、もっと元気になって、自分の楽しさをたくさんの人と分かち合えるようになりたいです。あの子からもらった優しさを忘れなければ、季節が夏になっても、秋から冬に変わっても、心の中にはいつも春のうららかな日差しが満ちていることでしょう。
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