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「おいおい、起きて」と、誰かが私を呼んでいる。うっすらと目を開くと、あたりは真っ暗だった。「起きたかい、よく眠れたかね」と、また言った。声のする方へ目を向けると、一匹のネコがそばにいたので、驚いた。「今夜の月はきれいだから、一緒に見に行こう」と、ネコは言いながら、私を外へ連れ出した。確か、天気予報では今夜は曇りだったのに。
ネコの後について歩いてゆくと私は、ある見知らぬところに出た。道は尽きることなく続いていた。両側には枝をたわわに茂らせた大木がきれいに並んでいる。ネコはその中の一番大きい大木のその左側の隅に入るつもりのようだ。
「そこには道がないみたいですけど。」と、私は言った。
「ばか、君の目はもう腐っちゃったのか。わしの後にちゃんとついて来いよ」
「何だよ、こいつ」
と私が心の中で呟いている間に、その隅に入ったネコの姿は一瞬にして消えた。不思議だ。私もやって見ようかと、足をその隅に掛けるやいなや、引き込まれてしまった。その暗闇の空間みたいなものを抜けると、目の前に大きな満月が現れた。鏡のように夜空にはめ込まれている。このような大きく明るく輝く月は見たことがなかった。
「美しいでしょう。ここに座って」と、ネコは意外に優しかった。
「ありがとう」と私はネコのそばに座った。「春の月は特別だね」と私は言った。
「えっ、なぜ?」と、ネコは聞いた。
「春がめぐってくると万物がよみがえると思われているよね。太陽の光と熱が万物を育てるんだ。それに対して、月の光は太陽の反射したものにすぎないから、生命には何の恩恵もないけど、皆が活発に成長している春に、この春の月の光を浴びると、気持ちが落ち着いて爽やかな気分を楽しむことができるんだよ。」
「よく分からんけど、わしもこんな夜が大好きなんだ。」
「私も好きよ。でも、忙しくて、誰も付き合ってくれなかったから、チャンスがなかったんだ。」
「矛盾してるね。外へ出るのは簡単なのに」
「そんな簡単に言わないでよ。最近、いろいろな事件が多いから、夜の外出は危険だし、寝不足になると翌日は元気も出ないし、それに人から見るとおかしいでしょう。」
「それはただの言い訳だろう。君は本当に面倒くさいね。」
「普通に考えれば常識でしょ。ネコの分際で分かるわけないよ」と私は怒った。怒った理由は図星だったからだ。
「じゃ、どうして今ここにいるんだ?」とネコは私に聞いた。
「それは、あなたに誘われたからよ」
「そうか、わしか」と、猫は独り言を言ったようだった。
ネコの方を振り返るともうそこに猫の姿はなかった。
まあ、いいか。幸いに月はまだあった。めったにないチャンスだから、月見でもしていようか。
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