Ⅰ. 過去5年間の活動の回顧
第11期全国人民代表大会第1回会議以来の5年間は、わが国の発展の道のりにおいて極めて特別な5年となった。国際金融危機のゆゆしい衝撃に効果的に対応し、経済の安定した比較的速い発展を保ったことにより、国内総生産(GDP)は26兆6000億元から51兆9000億元に増え、世界2位に躍進した。公共財政収入は5兆1000億元から11兆7000億元に増えた。都市部の新規就業者数は累計5870万人に達し、都市部住民一人当たり可処分所得と農村住民一人当たり純収入は年平均でそれぞれ8.8%、9.9%伸びた。食糧生産量は9年連続の増加を実現した。重要分野の改革は新たな進展を見せ、開放型経済も新たな水準に達した。革新型国家の建設において新しい成果を上げ、有人宇宙飛行や月面探査プロジェクト、有人深海潜水、北斗衛星ナビゲーションシステム、スーパーコンピューター、高速鉄道などで重要なブレークスルーを実現し、わが国で最初の空母「遼寧」を就役させた。北京オリンピック・パラリンピックと上海万博を成功裏に開催した。四川省汶(ぶん)川(せん)大地震、青海省玉樹(ぎょくじゅ)大地震、甘粛省舟曲(しゅうきょく)大規模土石流などゆゆしい自然災害への対応や災害復旧・復興において大きな成功をおさめた。わが国の社会的生産力と総合国力は目覚ましく向上し、人民の生活レベルと社会保障の水準は目に見えて向上し、国際的地位と国際的影響力も著しく向上した。われわれは第11次5ヵ年計画を首尾よく達成し、第12次5ヵ年計画をスムーズに実施している。社会主義の経済建設・政治建設・文化建設・社会建設・エコ文明建設が大きな進展を遂げ、中国の特色ある社会主義事業の新たな一章が綴られた。
この5年間の主な取り組みとその特徴は以下の通りである。
(1)国際金融危機に効果的に対応し、経済の安定した比較的速い発展を促進した。われわれはこの5年間絶えず国際金融危機のゆゆしい衝撃に対応しながら歩んできた。この危機は、威力のすさまじさ、広がりの速さ、影響の大きさといった点で、百年来まれに見るものであった。われわれは沈着に対応し、マクロコントロールの重点をいち早く果敢に調整するとともに、内需のさらなる拡大と経済の安定した比較的速い成長の促進につながる10の措置を打ち出し、包括的な計画を全面的に実施した。2年で投資を4兆元――そのうち中央財政投資は1兆2600億元――新規増額し、主に保障タイプ住居プロジェクトや農村民生プロジェクト、インフラ整備、社会諸事業、生態環境保護、自主イノベーションなどへの取り組み、それに災害復旧・復興に振り当てた。この5年間で、各種の保障タイプ住宅(低所得者向けの安価な住宅)を1800万戸余り新築し、バラック地区の住宅を1200万戸余り改築した。大・中型ダムと老朽化した重点小型ダムあわせて1万8000基の改修・補強作業を完了させ、重点中小河川の治水事業を2万4500キロ達成し、節水灌漑面積を新たに770万ヘクタール増やした。鉄道が新たに1万9700キロ――そのうち高速鉄道は8951キロ――伸び、北京=上海、北京=広州、ハルビン=大連などの高速鉄道をはじめ多くの都市間鉄道が相次いで営業運転を開始した。自動車道路が60万9000キロ――そのうち高速道路は4万2000キロ――新規開通し、高速道路の総延長距離が9万5600キロに達した。新たに31の空港を建設した。港湾の1万トン級以上の船席を新たに602バース増やした。河川や海を跨ぐ大型橋梁の建設、島と大陸や島と島を橋などで結ぶプロジェクトが相次いで完工した。「西気東輸」(西部から東部への天然ガス輸送)や「西電東送」(西部から東部への送電)、「南水北調」(南部から北部への送水)などの重要プロジェクトがスムーズに推し進められ、一部完成した。非化石エネルギーの開発や利用が加速し、水力・風力発電の設備容量が世界1位となった。汶川・玉樹・舟曲などの被災地は復旧作業により見違えるように大きく変貌した。世界の注目を集めたこれらの成果は、国際金融危機のゆゆしい衝撃に効果的に対応する上で極めて重要な役割を果たし、経済・社会の長期にわたる発展のために確固とした基盤を打ち固め、これまで十数億の人民に幸せをもたらしており、これからも引き続きもたらしていくことだろう。
われわれは経済の安定した比較的速い発展の維持、経済構造の調整、インフレ期待の管理という三者の関係を適切に処理することを首尾一貫して重視し、マクロ政策の先見性・科学性・有効性を高め、政策の方向性・度合い・重点の見極めに意を注いだ。国際金融危機の衝撃が最も激しかった時期には、積極的な財政政策と適度な金融緩和政策を断固として実行に移し、一方ではさまざまな財政政策手段を総合的に運用して政府の支出を増やしたり構造的減税を実施したりし、もう一方では預金準備率や金利などの金融政策手段を効果的に活用してマネーサプライや銀行貸出の合理的な伸びを維持した。われわれはマクロ経済の動向に合わせて、政策の度合いを速やかに調整したり、景気刺激策を適時に打ち切ったりした上で、積極的な財政政策と穏健な金融政策を実施した。財政政策の運用に当たっては、統一した計画の下で各方面に配慮するようにして、総合的なバランスに心がけた。財政赤字の対GDP比は2009年度の2.8%から昨年度の1.5%前後へと下がり、債務残高の対GDP比とともに安全な範囲内に抑えられた。地方政府債務に対する全面的な会計検査と地方政府の資金調達受け皿会社への管理を強化し、経済運営におけるリスク要因を効果的に抑制した。金融政策の運用に当たっては、経済の安定成長、物価の安定化、リスクの回避という三者のバランスの見極めに絶えず意を注いだ。金融システムの運行が安定し、銀行業のリスク回避能力が継続して高まったことで、2007年末から昨年末にかけて自己資本比率が8.4%から13.3%に上昇する一方、不良債権比率が相対的に低い水準に抑えられ、6.1%から0.95%まで下がった。不動産市場へのコントロールを揺るぐことなく実施して、住宅価格急騰の勢いを食い止めた。2012年度には、世界の主要経済体の成長が軒並み減速し、さまざまなリスクが絶えず表面化してくる状況を受けて、われわれは政策の度合いを合理的に調整し、財政予算支出の規模を一定に保つと同時に、支出の構造を最適化し、経済の減速傾向を逆転させ、当初予算の主要目標を全面的に達成した。その結果、GDPの伸び率が7.8%となり、都市部の新規就業者数が1266万人に達し、消費者物価の上昇率が下向きに転じて2.6%まで下がるなど、今年度の経済発展を支える確固とした基礎が打ち固められた。
ここ5年、わが国のマクロ経済は全般的に好ましい状態を保ち、安定した比較的速い成長、物価の相対的安定、雇用の持続的拡大、国際収支の均衡化傾向が見られ、GDPの年平均伸び率が9.3%となり、同じ時期の全世界の伸び率と新興経済体の伸び率をともに大きく上回ったほか、インフレ率もわが国以外の新興経済体に比べてかなり低く抑えられた。わが国は経済が安定し、活力に満ち溢れることになった。
この5年間を振り返ってみれば、国際経済情勢が複雑に変化を重ねながら低迷期を抜け出せずにいるというきびしい局面に立ち向かうに当たり、中央は科学的判断と果敢な政策決定を行うことで、わが国の現代化の進展が外部からの激しい衝撃により大きく混乱してしまうのを効果的に防いできたのである。実践が証明しているとおり、これらの政策決定や配置はまったく正しかったのである。
(2)経済構造の調整を加速させ、経済発展の質と効率を高めた。内需拡大戦略の実施の堅持により、経済成長に対する内需の寄与度が著しく高まり、経常収支黒字の対GDP比が10.1%から2.6%まで下がった。住民消費構造の改善が加速した。2012年末時点には、都市部と農村部の一人当たり居住面積がそれぞれ32.9平方メートル、37.1平方メートルとなり、2007年度に比べてそれぞれ2.8平方メートル、5.5平方メートル増え、都市部100世帯当たりの自家用車保有台数が21.5台となり、2007年度に比べて15.5台増えたほか、観光消費やその他文化関連の消費も大幅に伸びた。あくまでも中国の特色ある新しいタイプの工業化の道を歩み、産業の業態転換と高度化を大いに推進した。わが国の製造業の規模は世界1位に躍進し、ハイテク製造業が付加価値で年平均13.4%の伸びを記録して国民経済における重要な先導的支柱産業となり、クリーンエネルギー、省エネ・環境保護、新世代情報技術、バイオ医薬品、ハイエンド設備製造など多くの戦略的新興産業が急速な発展を遂げた。製品の全体的な品質レベルも継続的に向上した。サービス業の付加価値の対GDP比が2.7ポイント高まり、雇用吸収力の最も高い産業となった。省エネ・排出削減と生態環境保護を着実に推進した。この5年間累計で、製鉄・製鋼・セメントの旧式生産能力がそれぞれ1億1700万トン、7800万トン、7億7500万トン廃棄され、都市部の1日当たりの汚水処理能力が4600万トン増加するとともに、GDP1単位当たりのエネルギー消費量が17.2%減少し、化学的酸素要求量(COD)と二酸化硫黄排出総量がそれぞれ15.7%、17.5%減った。大気の環境基準を改定し、微小粒子状物質PM2.5などのモニタリング指標を追加した。天然林の保護、耕地の森林への復元、砂漠化対策などの重点生態プロジェクトを推進して、この5年間累計で造林を2953万ヘクタール完了させ、砂漠化・石漠化(石灰岩地域で土壌の浸食により岩肌が露出し土地が劣化する現象)した土地を1196万ヘクタール再生し、土壌流失地を24万6000平方キロメートル総合整備し、荒地を18万平方キロメートル整備した。地域発展総体戦略の徹底した実施に当たっては、全国主体機能区計画を公布して実行に移し、西部大開発新10ヵ年ガイドラインなど一連の地域発展計画を制定してチベット自治区や新疆ウイグル自治区などの飛躍的発展をさらに推し進めたほか、農村貧困脱却扶助開発新10ヵ年要綱を策定して実行し、貧困脱却扶助の最低基準を2300元(2010年度の基準価格に基づく)に引き上げ、広域にわたって集中的に存在する特別困難地区への貧困脱却扶助にいっそう力を入れた。中・西部地区と東北地区の主要経済指標の伸びが全国の平均水準を上回り、東部地区で産業の業態転換と高度化が加速するなど、各地域がそれぞれ特色を持ち、相互に促進しあう地域発展の枠組みが形成されてきている。都市化の積極的かつ着実な推進により、5年間で農村から都市への移転人口が8463万人に達し、都市化率が45.9%から52.6%まで上がるなど、都市と農村の構造に歴史的変化が起こった。都市・農村間や地域間の発展の調和性は著しく高まった。
(3)「三農」(農業・農村・農民)への取り組みにしっかりと力を入れ、農業の基礎的地位を打ち固め、強化した。われわれは、工業化・情報化・都市化の深化に合わせて、農業の現代化を継続的に推し進め、農業・農村の長期的な発展と農民の切実な利益に関わる多くの大事業に力を注ぎ、それを成し遂げた。財政投入の拡大により、中央財政の「三農」関連支出は累計で4兆4700億元に達し、年平均で23.5%伸びた。食糧生産農家向けの助成制度や食糧主要生産地区への利益補償の仕組みを確立して充実させたことで、助成基準が年々引き上げられ、そのカバー範囲も絶えず拡大し、助成金の規模が2007年度の639億元から2012年度の1923億元に増えた。農村の金融サービスを強化したことで、「三農」関連の融資残高が2007年末時点の6兆1200億元から2012年末時点の17兆6300億元まで増加した。食糧最低買付価格政策を実行に移して、各種の小麦や籾米の最低買付価格を累計で41.7%~86.7%引き上げた。耕地の保護を強化したり、農民の権利と利益を保障したりしたほか、農村集団所有地の土地収用補償制度の完備に向けた準備作業に大いに取り組んだ。農業科学技術と現代農業の発展をさらに促し、優良品種の育成や、動植物の疫病の予防・抑制、末端における農業技術の普及などへの支援を強化した。水利事業に大いに力を入れ、農村の土地整備を進めたり、高基準農地を造成したりして、耕地面積を1億2130万ヘクタール以上に保った。食糧の総合的生産能力が新たな大台に乗り、食糧の総生産量は6年連続で5億トン以上をキープしたうえ年々増加の傾向を示した。農村の水道・電気・道路・ガスなどのインフラ整備の強化に当たっては、自動車道路を146万5000キロ新築・改修し、老朽家屋を1033万戸改築し、農村人口3億人余りの飲用水安全問題や電力未整備地区に住む445万人への送電問題を解決して、農村の生産・生活条件を絶えず改善した。農村余剰労働力の非農業部門への移転を積極的に導いたことで、農民一人当たりの純収入が堅調な伸びを保ち、都市部と農村部の住民の相対的な収入格差が2010年度から次第に縮小しはじめた。農村総合改革を深化させた。集団所有林林権制度の主体改革(林地の使用権・財産権の明確化)を基本的に完了させ、農村集団所有地の使用権証明書交付に関する取り組みを全面的に推進し、農村の土地請負経営権の登記作業を試験的に繰り広げた。農業・農村の好調な発展は、国際金融危機や各種の自然災害によるゆゆしい衝撃に対応し、経済・社会の発展の大局を安定させる上で、重要な支えとなった。
(4)科学・教育による国家振興戦略の実施を堅持し、経済・社会の発展を支える中核的能力を増強した。われわれは国家中長期科学技術発展計画要綱の実施のペースを上げ、国家中長期教育改革・発展計画要綱、国家中長期人材発展計画要綱、国家知的財産権戦略を策定・実施し、科学技術や教育、文化事業の全面的な発展を促し、国の長期的な発展に向けてしっかりとした土台を築き上げた。
教育事業を優先的に発展させた。国家財政による教育関連の支出は5年間累計で7兆7900億元、年平均21.58%の伸び率となり、2012年度には対GDP比が4%に達した。教育資源が農村や辺境地区、民族地区、貧困地区へ重点的に傾斜配分され、教育分野の公平度が著しく高まった。都市・農村における9年制義務教育の無償化を全面的に実現したことで、1億6000万人の児童・生徒がそのメリットを受けた。就学前教育3ヵ年行動計画の実施により、「入園難」の問題がいくらか緩和された。国の学資援助制度の整備が間断なく進められた結果、困窮家庭の児童・生徒・学生向けの援助システムが確立し、その適用範囲が就学前教育から大学院教育までの全段階に広がり、各年度の援助の規模が約1000億元、援助受給者の数が延べ8000万人近くとなった。中等職業教育の学費免除政策を実施し、農村出身の生徒や都市出身の農業関連専攻の生徒、困窮家庭の生徒をすべて適用対象枠に組み入れた。出稼ぎ労働者に随伴して都市部に移ってきた子供たちが滞在先で義務教育を受けられるようにするという問題がひとまず解決され、現時点で農村戸籍の児童1260万人が都市部で義務教育を受けている。義務教育段階の農村生徒3000万人余りを対象とする栄養改善計画を実施した。小中学校・高校の校舎安全プロジェクトを完了させた。職業教育の基礎能力と特殊教育の基盤施設の整備を速めた。義務教育の学校で業績給制を実施し、教育部直属の師範大学で師範コースの学生向けの学費免除政策を導入し、農村教師陣の強化に取り組んだ。教育の質と水準を全面的に引き上げた結果、高等教育の粗入学率が30%に高まった。国民の教育水準が大幅に向上し、15才以上の国民の平均就学年数が9年以上となった。
自主イノベーションを強力に推進した。中央財政による科学技術への投入額はこの5年間累計で8729億元、年平均の伸び率は18%以上となった。社会全体の研究開発費は対GDP比が2007年度の1.4%から2012年度の1.97%まで高まり、同費に占める企業の研究開発費の割合が74%を超えた。科学技術体制改革の深化と国家創造革新システムづくりの加速について指針を打ち出した。国家技術革新プロジェクトと国家知識革新プロジェクトを踏み込んで実施し、国家科学技術重要特別プロジェクトを着実に推し進めるとともに、国家工学技術センターや重点実験室、企業技術センターを新たに多数整備した。基礎研究と先端技術の研究を強化し、カギとなるコア技術の研究開発で一連の飛躍的成果をあげて、重要製品・重要設備製造の分野でそれまで空白だった部分を大きく埋めた。
人材による国力増強戦略を踏み込んで実施した。ハイレベル・高技能人材を重点とした各種人材陣の育成の強化により、専門技術人材と高技能人材がそれぞれ860万人、880万人増えたほか、留学を終えて帰国した人が54万人に達した。
文化建設を大いに強化した。都市・農村に行き渡る公共文化施設ネットワーク・システムが一応でき上がり、博物館や図書館、文化館の無料開放が全面的に実現した。営利的文化事業に携わる国有機関を制度的に企業化する任務がほぼ完了し、公益的文化事業に携わる機関の内的構造の改革も絶えず深まった。哲学・社会科学、報道・出版、ラジオ・映画・テレビ、文学・芸術などがさらに盛んになり、文化産業が急速に発展した。有形文化財の保護、無形文化財の保護・伝承は重要な進展を遂げた。対外文化交流がよりいっそう活発になった。全国民健康増進キャンペーンと競技スポーツ事業が新たな成果を収めた。
(5)あくまでも人民の利益を第一義に据え、民生の保障と改善に力を入れた。われわれは雇用の創出を民生の保障と改善における最も重要な仕事として、積極的な雇用政策を実施した。政策の重点とした人々への就職支援の取り組みを強化したり、職業訓練と就職サービスの水準を高めたりするため、雇用対策特別資金としてこの5年間累計で1973億元を投入した結果、大学卒業生2800万人と都市部の就職困難者830万人が職に就くなど、雇用情勢全般の安定が保たれた。社会保障システムの整備を全面的に推進する中で、新型農村社会養老保険制度と都市部住民社会養老保険制度を確立し、都市・農村住民の基本養老保険制度を全国に行き渡らせたことで、各種養老保険の加入者数が7億9000万人に達した。企業定年退職者基本養老金の一人当たりの月額を2004年度の700元から現行の1721元まで引き上げた。閉鎖された企業または倒産した企業の定年退職者や、経営難に陥った企業の従業員、労災保険条例公布以前に労災認定を受けていた国有企業の従業員、保険に加入していなかった集団所有制企業の定年退職者の社会保険などの問題を適切に解決した。医薬・医療衛生体制の改革を深め、新型農村合作医療制度と都市部住民基本医療保険制度を確立したことで、全国民基本医療保障体系が一応でき上がり、各種医療保険の加入者数が13億人以上となった。また、都市・農村の末端医療衛生サービス体系の整備を強化したり、基本医薬品制度を確立して末端の医療機関で実施に移したり、公立病院の試験的改革を着実に推し進めたりした。国民の健康水準がいっそう向上し、平均寿命が75歳に達した。都市・農村住民の最低生活保障制度や医療・教育・法律関連などの援助制度を健全なものにするとともに、孤児の成長・生活の保障や浮浪児の救済・保護の制度、農村の「五項目(衣・食・住・医・葬)の生活保護」制度を改革し、充実させた。中国女性・児童事業発展新要綱を公布・実施して、女性・児童の合法的な権利と利益を法律に基づいて保障した。都市部の保障タイプ住宅制度を確立し、健全化した結果、制度の適用範囲が次第に広がり、2012年末時点で12.5%に達した。以上のように、社会保障制度建設には大きな歴史的成果が見られた。また、社会管理を絶えず強化・刷新し、緊急管理体系を確立して健全化し、都市・農村コミュニティーの自治とサービス機能を発揮させたことで、社会の調和と安定が保たれた。
(6)重要分野の改革を深め、経済・社会発展の内的活力を強めた。われわれは時機を逃さずに改革を推進して、一部の重要な分野で大きな進歩を遂げた。税財制の改革を大いに推進する中で、移転支出制度を充実させ、県レベルの基本財政力保障の仕組みを全面的に確立した結果、末端政府の基本的公共サービスの提供能力に向上が見られた。また、公共財政予算、政府系基金予算、国有資本経営予算、社会保険基金予算からなる予算体系の枠組みがほぼ出来上がり、予算外資金が漏れなく予算管理に組み入れられた。そして、国内企業と外資系企業の税制を一本化し、付加価値税のインボイス方式への転換を実現し、ガソリン等精製油の価格と税・費用の改革を実施したほか、営業税から付加価値税への切り替えを試行し、資源税制度の改革に取り組んだ。その結果、経済発展パターン転換の加速化促進に果たす税財制の役割が強化された。金融体制の改革を全面的に深める中で、国有大型商業銀行の株式制改革をスムーズに成し遂げ、政策金融機関の改革を順を追って推し進めたほか、農村信用社(協同組合)の改革においても著しい成果をあげた。また、銀行業に対する監督管理において新たな基準を適用し、創業版(ベンチャーボード)(ChiNext)、株価指数先物取引、信用取引の業務を相次いで新設し、保険業の改革開放を深く推し進めたほか、人民元の為替レート形成メカニズムを絶えず完全なものにし、金利の市場化と資本勘定における人民元の交換性の実現に向けた改革を着実に進めた。そして、マクロ・プルーデンス政策の枠組みを確立し、クロースボーダー取引・投資における人民元の使用を広めた。その結果、わが国の銀行業・証券業・保険業のリスク抵抗力や国際競争力が著しく高まり、国際金融危機の衝撃への対応を成功させる上でのしっかりとした土台がうち固められた。国有企業も改革が絶えず深まり、資質が向上し、競争力が著しく強まった。民間投資の健全な発展を奨励・誘導する指導的意見と実施細則を策定して、非公有制経済の発展環境を絶えず改善した。生態補償制度が確立し、二酸化炭素やその他汚染物質の排出権取引が試行された。事業体分類改革も積極的に進められた。
(7)対外開放を揺るぐことなく拡大し、開放型経済のレベルを全面的に向上させた。外部環境の激変に積極的に対応し、外需の安定化に向けた政策措置を適時に打ち出し、市場の多元化戦略を実施したことで、輸出入総額が年平均で12.2%伸び、世界3位から2位に上昇――とくに輸出額は世界1位に躍進し、その国際市場シェアが2007年度比で2ポイント以上増加――したほか、輸出入の構造が改善され、貿易大国としての地位がさらに打ち固められた。外資の実質利用額が5年間で累計5528億ドルとなり、外資利用の構造と分布が著しく改善され、その質と水準も著しく向上した。「海外に出て行く」戦略の実施ペースを上げ、各種企業が対外投資と多国間経営を繰り広げるよう奨励したことで、金融分野以外の対外直接投資が2007年度の248億ドルから2012年度の772億ドルまで上昇し、年平均25.5%増となり、対外投資大国の仲間入りを果たした。対外開放により、わが国の経済の発展と構造の最適化が力強く促され、先進技術と管理のノウハウが導入され、雇用が数多く創出され、被雇用者の所得が増加したほか、世界経済の回復につながる重要な貢献も生み出された。
(8)政府自体の建設を着実に強化し、行政体制の改革をよりいっそう深化させた。政府機関改革の推進により、機能が一元化された大部門体制の枠組みが一応確立された。われわれは、科学的・民主的な政策決定の実行、法律に則った行政の堅持、政務の公開の推進、監督制度の健全化および廉潔政治建設の強化を、一貫して政府活動の基本的準則とした。行政権力の運用の規範化とサービス型政府・責任政府・法治政府・廉潔政府の建設に当たっては、新たに一連の措置を講じてさらなる一歩を踏み出した。科学的政策決定、民主的政策決定、法律に則った政策決定を堅持し、政府の政策決定の手続き――大衆の参加、専門家への諮問、リスクの評価、合法性の審査、集団討論による決定など――を健全化した。行政審査・認可制度改革の深化に当たっては、5年間で2回に分けて498件の行政審査・認可事項の取消しや調整を行った。国務院各部門が取消しや調整を行った審査・認可項目は計2497項目――それまでの全審査・認可項目の69.3%――に達した。政務の公開の強力な推進に当たっては、財政予算・決算の公開や、公務接待費、公用車経費、海外出張費の公開を重点的に推し進めることで、人民大衆が政府の活動をより全面的に知り、政府の行為をより効果的に監督できるようにした。会計検査による監督に関しては、その度合いを強めるにしたがって、効果がますます著しくなった。腐敗反対・廉潔政治提唱の取り組みを全面的に強化し、指導幹部の廉潔・自重実践状況に対する監督・管理を強めた。政府業績管理制度を模索を重ねて構築し、行政機関のトップに重点を置いた行政問責制度を確立してしっかりと実施し、行政の効果・効率の向上に努めた。
一方で、経済・社会の発展に依然として多くの矛盾と問題が存在していることも、われわれははっきり認識している。その主なものを以下に挙げる。◇発展の不均衡・不調和・持続不可能という問題が依然として際立っている。◇経済成長の減速傾向と生産能力の相対的過剰との矛盾が大きくなってきている。◇企業の生産・経営コストの上昇と革新能力不足の問題が併存している。◇財政収入の伸びの鈍化と毎年決まって必要な恒常的財政支出の増加との矛盾が浮き彫りになっている。◇金融分野にリスクが潜在している。◇産業構造が不合理なうえ、農業の基盤も依然として脆弱である。◇経済発展と資源・環境との矛盾が日増しに激しくなっている。◇都市・農村間および地域間の発展の格差と所得分配の格差がかなり大きい。◇社会的矛盾が明らかに増えており、教育、雇用、社会保障、医療衛生、住宅、生態環境、食品・医薬品安全、労働安全、社会治安などの面で大衆の切実な利益にかかわる問題が多く、一部の人々が生活に困っている。◇科学的発展を妨げる体制上・仕組み上の障害がかなり多い。◇政府の機能転換がまだ不十分なうえ、腐敗現象が発生しやすい分野や多発している分野がある。以上の問題には、長年にわたって積み重ねられてきたものもあれば、経済や社会の発展の中で発生したものもあり、政府の活動上の不備や取り組み不足によるものもある。われわれは国家と人民に対する強い責任感をもって、諸般の活動によりいっそう力を注ぎ、これらの問題を速やかに解決し、人民の期待に必ず応えなければならない。
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