中国では経済発展に伴い、新しい言葉が生まれてきました。それは「留守児童」という言葉です。「留守児童」とは都市部に出稼ぎに行った両親が農村に残した子供のことです。彼らは片方の親と暮らしたり、祖父祖母、あるいは親戚や両親の友達と一緒に暮らすケースがよく見られます。
悦ちゃん(9才)は江蘇省泰州市の泰東実験学校の小学生です。北京に出稼ぎに行った両親と祖父と離れたのは一年でした。悦ちゃんは、「もう一年も父と母に会っていません。、会いたいです。特に新学期の初め、両親が見送ってくれたクラスメートを見てて、うらやましいなぁと思いました。会いたくてたまらない時にも電話しか出来なかった。父と母が学校へ迎えに来てくれて嬉しいと言う夢を時々見ました」と話しました。
泰東実験学校は泰州市の東、駅の南側にあります。周りには大型マーケットがいっぱいあり、大勢の出稼ぎ労働者がここに集まっています。彼らの子供と留守児童の生徒も増えてきました。学校の責任者の陳偉さんは、「今年の一学期(2011年3月~7月)の統計によりますと、小学部の1204人の生徒の中で留守児童は33人、出稼ぎの人の子供は242人がいます。その合計は小学部生徒全体の23%になります。中学部の場合は、512人の生徒の中、留守児童7人、出稼ぎ労働者の子供89人で中学部全員の19%となっています」と話しました。
2008年頃、親と離れている留守児童のため、泰東実験学校がすべての青年女子教師に「先生の母」となり、留守児童に愛をくださいという呼びかけを出しました。そして、多くの教師が応えました。36人の青年女子教師は「教師の母」と書かれた横断幕に、自分の名前を書き込み、ボランティアを志願しました。この活動が始まってから、教師の母のボランティアも最初の36人から83人に増えてきました。全員がほとんど35歳未満です。まだ自分の子も育っていない人たちが、母としてこれらの子供の心を支えていきました。
「両親はいつも離れているから、この子たちの勉強や生活の面倒を誰も見てくれないし、とってもかわいそうです。彼らの先生という立場から、私たちはこの子たちの面倒を見なきゃと思ってきたね」周ママと呼ばれた周雪梅先生はそう言いました。
悦ちゃんはお婆さんと一緒に暮らしています。家には孫の悦ちゃんしかいないので、悦ちゃんはお婆さんに甘やかされて育ちました。両親と祖父が出稼ぎに出ているので、家庭の経済状況は悪くありません。悦ちゃんは食事をちゃんとしないし、毎日遊びまくり、時にはお婆さんが彼女を叱ると耳をふさいで聞こうとしないです。このような状況を知った時、、悦ちゃんのクラス担任―張愛貞先生はひときわ彼女に関心を持つようになりました。張先生は「普段、時間があるたび彼女と話をして、家庭の事情を聞いています。そして、、彼女にお婆さんを尊敬し、言われ事によく従うよう教えています。彼女の成績を高めるため、私は昼休みの時間を利用して補講をしています。時に、家まで行き、彼女の宿題を指導します。ある時、彼女が宿題をしないことが多いので、学校が終わった後、私は自転車で彼女の家まで補講をしに行きました。彼女のお婆さんが私の手を握り締め、感動し「悦ちゃんが元気に育ち、楽しく暮らすならば、私たちは苦労しても大丈夫」と言われました。
張先生のもとで、悦ちゃんは以前より物事を考え、成績もアップしました。勉強にも関心を寄せるようになりました。張先生の話を知ると、悦ちゃんはとても感動し、「食事の時、張先生が私をレストランまで連れて行き、私の大好きな肉の醤油煮込みがあるとき、先生は赤みをすべて私にくれました。6月1日国際児童デーの時に、先生から贈り物をもらいました。私は張先生が大好きで、私のお母さんのようです」と話しました。
学生の涛さんの両親はいつも出稼ぎをしています。彼はお爺さんとお婆さんのもとで成長したせいで、長い間、親の愛情が不足し、性格が内気で、すぐ怒るし、お爺さんとお婆さんの話を聞きません。しかし、『先生お母さん』とふれあい、愛情を受けてから、涛さんはいうことをよく聞くようになり、笑顔も増え、成績が明らかに進歩しました。涛さんのお爺さんは「この孫は性格が内気で、私たちとあまり喋らなかった子だった。毎日楽しくない様子で、彼の成績がよくないのも分かっていた。どうしようと慌てたとき、泰東実験学校の張先生が自発的に『親を代行する』、『先生お母さん』になって、勉強を手伝い、涛さんの生活に関心を寄せてくれました。今はまるで別人のようです。ずいぶん活発になり、近所の人たちと挨拶もするようになりました。成績も上がって、家にいる時は家事を手伝っています。泰東実験学校の先生に感謝の気持ちでいっぱいです」
調べによると、中国の農村には「5800万人余りの留守児童がいます。その中、約57%が片方の親が出稼ぎ労働者、約43%が両親とも出稼ぎ労働者です。出稼ぎで、親が子供と一緒に生活する事が少なくなり、子供との交流も多くありません。子供の心や成長、勉強や生活などに問題が出やすくなっています。
中国の政府と関係部門はこうした事を重視して、多くの措置をとりました。2011年4月、国務院の温家宝首相は山西省の考察活動をした時、学校に行き、「留守児童」の見舞いをしました。温首相は子供たちに、「留守児童として、君たちはもっと自立し、自尊心を強め、頑張ってください」と励ましました。
江蘇泰州市の泰東実験学校での「先生お母さん」たちは、留守児童の問題に関心を持っている多くの人の一部に過ぎません。今、中国では、留守児童に愛情を注ぎ健康に成長できるような社会を築く努力が続けられています。
(路)
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