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江西省取材・三日目手記

2011-04-23 14:24:21     cri    

 眠い目をこすりながら起きると、あいにくの雨。しとしとと雨の降る中、8時にホテルを出ました。実はこのホテルもかなり山の上にあったのですが、今朝もまた登り続けて行きます。

 「世界自然遺産の三清山に登る」とは、聞いていましたが、詳細なルートは聞いていなかったので、できるだけ荷物を軽くし、雨の登山を覚悟していました。しかし、着いたのはロープウェイの発着場所。下から登るのではないと知って、いささかホッとしたような、ちょっと残念なような微妙な気持ちになりました。西から登り、東へと抜けるコースのようです。

 いくつもの登山コースがあるようですが、様々な形の岩がみどころの南清園を目指します。岩には、「東方の女神」、「三龍出海」などの名前がつけられています。

 しかし、雨足は強まるばかりで、周りは真っ白な霧に包まれて見えません。この登山、どうなるのかと心配していたのは私ぐらいで、皆スタスタと進んでいきます。観光地らしく、お土産ものを売る店が立ち並ぶ道を進み、ロープウェイ乗り場へ。朝が早いにも関わらず、多くの観光客でにぎわっています。

 

人でにぎわうロープウェイ乗り場 

 さて、8人一組で乗り込み、いざ出発。ものすごいスピードで発車しました。

 これには、乗っていた人もびっくりです。前方を見れば、きつい傾斜が続いてるのが見えます。私たちの不安をよそに、ロープウェイはするすると登っていきます。下の景色は、白い霧に包まれ、一体どのぐらい登ってきたのか、まるで検討もつきません。まるで幽玄、夢幻の世界へ迷いこんだようです。

 

ちょっと驚くほどのスピードのロープウェイ

幽玄の世界

 10分ほどして、探索コースに到着しました。ここからは歩いて登ります。しかし、中国の登山、日本の登山とはやや異なります。頂上まで、全て階段で登っていくのです。階段はゆるやかに蛇行しながら、上へと伸びています。

 

天をめざして、どこまでも続く階段

 レインコートを着込み、いざ出発。霧につつまれた山は、ほんの数メートルを行く人の姿も見えないほどです。かなりの観光客が登っているはずなのですが、「声はすれども姿は見えず」です。そこかしこから、「おーい」だの、「やっほ~」だの、にぎやかな声が聞こえてきますが、姿は全く見えません。まるで透明人間たちの登山のようです。

 それでも、時々、木々に囲まれて咲く花に励まされながら足をすすめます。

 最初は、ゆったりと広かった道もだんだんと狭くなってきます。人とすれ違うのも苦労するほどでです。

 聞けば、最初は一区切り60段ほどの階段も、上に行くにつれ、80段、90段と増えていき、それとは反対に道幅は狭くなっていくのだそうです。

 そして、最後は人が一人しか通れないほど狭くなります。岩と岩に挟まれたその先には空しか見えません。空がまっすぐなラインとなるのです。

 人生を示唆しているような場所です。大勢の人と一緒に生きてはいても、人間はやはり一人で対峙すべきものがあると言われているような気がします。

 

天へと続く狭き門?

 それにしても驚くのは、この高さの場所に遊歩道をつくっていることです。観光資源開発にかける、並々ならぬ情熱を感じます。どうやってこの道をつくったのか、と自然の力もさることながら、人間の力もすごいものだと感じます。

 途中、荷物を肩にかついで登る人に出会いました。こんなふうに裏側で働く人がいて、観光が成り立っているのだとつくづく感じます。

岩壁に設置された遊歩道

野菜や生活雑貨を運んでいる

 さて、下山の途中に、急に霧が晴れ、太陽の光が差し込んできました。露で髪も濡れ、冷え切った体に、太陽がくれるあたたかさは何よりもありがたいです。

 気がつけば、さきほどまで真っ白だった景色は、鮮やかな緑に変わっていました。

光をとりもどし、岩が姿を現した

 しかし、霧が晴れたのはいいのですが、先ほどは霧で見えなかった足元の景色もはっきりと見えてきました。驚くべき高さで少々、足がすくんでしまうほどです。

 あまり下を見ないようにして、なんとか無事に下山のロープウェイ乗り場まで辿りつきました。あとは乗って、降りるだけです。

 ロープウェイに乗ると、下には緑のグラデーションが広がっています。やわらかそうな葉が生い茂った山はまるで緑の絨毯のようで、もし落ちても、受け止めてくれそうです。

 下へ降りるにつれて、険しく聳え立った岩も、木々に隠され、すっかり見えなくなってしまいました。

 三清山は、登ってこそ、美しい景色がのぞめる山です。それは苦労した者へのごほうびのようなものかもしれません。

 追記:ひたすら上をめざして、登っていた私ですが、後ろを振り返ると、携帯を手にした王記者の姿が。山の頂上からでも、つぶやく80後(80年代生まれの人を指す)なのでした。

(文・写真:吉野綾子)

 

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