中国で最も美しい村、ブ源を訪ねる
中国のことわざに、「泰山をはじめとする5つの山を見れば、ほかの山は見なくてもいい、江西省のブ源を見れば、ほかの村は見なくてもいい」という言い方があります。
ブ源は、広い中国の地図上では、なかなかみつけることができない小さな場所ですが、中国で一番美しい村として、国内外に知られています。その美しさは一体どこにあるのでしょうか。ブ源県の林顕君書記に尋ねてみました。
「ブ源県は、面積が3000平方キロメートルで、安徽省、浙江省、江西省といった3つの省の境にあり、自然環境がとてもいいです。ここの民俗文化も独特で、ほかの地域で見られない民謡や舞踊があります。ブ源県には古代の村落、建築物、橋がたくさんあります。ブ源の美しさは、自然と文化が融合するところであり、人間と自然が調和した関係にあります。まさに中国古代の哲学思想の天人合一と言えるでしょう」
ブ源の美しい景色に一役買っているのは、菜の花です。毎年、3月か4月になると、多くの観光客が、この菜の花を見にやってきて、非常に賑やかになります。春の菜の花のほかにも、ここは四季それぞれの美しさがあります。これについて、地元に住む、葛健さんは次のように話してくれました。
「ブ源は、いろいろな観光スポットがあります。春になると、菜の花、梨の花、桃の花、つつじの花が見られますし、そして、澄んだ川の流れ、白い壁、黒い瓦の家並み、また、木々が芽吹くのが見られます。このような景色を見て心身ともにリラックスできます」
夏には、竹でつくられた小さな椅子を庭において、扇子を扇ぎながら、夜空の星を数えます。また、水田にいる蛙の鳴き声に耳を澄まし、いつしか都市の喧騒を忘れて田舎の静けさを楽しめるようになります。
秋になると、農民たちは農作物の収穫で忙しい時期です。収穫した農作物は、まず家の天井部分に保存されます。ブ源の建物には安徽省の建築スタイルを取り入れたものが多いです。それぞれの家屋は2階建てで、吹き抜け構造になっていて、上部には梁があります。梁には唐辛子や稲が干されています。建物の2階から見下ろすと、様々な農作物がいろとりどりに並んでいてとても鮮やかです。ブ源県は生息する植物の種類も多く、秋になると、木々の葉は黄色くなったり、赤くなったりして、まるで錦絵のようになります。
冬になると、古代から残っている村落に、歴史の長さを感じます。この時期、農民たちは一年の労働を終え、豚肉の燻製、粽、もちなどを作り、新年を迎えます。ブ源県では新年を迎える前に、農民たちは自分が大切に飼育してきた豚を食べます。新年を迎えるためのご馳走なのです。また、家のドアに対聯と呼ばれる正月飾りを貼ります。大晦日には花火を上げ、爆竹を鳴らします。都市に暮らす人々もこの村を訪れ、昔ながらの方法で一緒に新年を迎えます。
ブ源県の中心部から東へ20キロ離れたところに、安徽省の建築スタイルの特徴を有している、江湾という古代の村があります。この村の建築物の配置は中心となる大通りから、6本の横丁が伸びています。それぞれの横丁は特色があり、素朴でありながら、どこか優雅さをたたえています。また、横丁には明の時代と清の時代の建築スタイルが残されています。横丁の幅は今も昔のまま狭いもので、その脇には木造建ての老舗が軒を連ねています。老舗の店内に置かれた家具、その棚の配置、そして店の壁は全てつくられた当時のままです。この町を歩けば、明と清の時代の商業が栄えた様子を知ることができます。まるで時間のトンネルを通って、タイムスリップしたようです。古代の建物は完全に保護され、井戸、東屋、橋などは安徽省の古代建築スタイルを今に伝えています。
現地で有名な建物は三省堂と呼ばれる建物です。ガイドさんの話しです。
「江湾には、北門街と呼ばれる古代の大通りがあります。多くの古代の建物はここに並んでいます。ここは典型的な安徽省の建築スタイルを示す建物がたくさんありますが、その代表となるのは三省堂です。この建物は清の時代半ばに建てられたもので、清の時代の教育家、仏教学者江謙の先祖の家でした。この建物は200年の歴史があり、中に入れば、建物の特徴がよくわかります。2番目のドアを開けて進んでみると、建物には窓がないことに気がつくでしょう。これは大きな特徴です。今も、一部の住民は、まだここに住んでいるんですよ」
江湾の人々は後龍山という山を神として祀っています。現地の人々は、この地から多くの有名人が輩出するのは、この山のおかげだと信じています。この自然を崇拝することから、江湾の人々は自然環境を大切に保護しています。後龍山に足を踏み入れると、まるで原生林に迷い込んだような気がします。木々は豊かに茂っており、江湾村でも有名な観光スポットとなっています。
また多くの観光客が口をそろえてお勧めするのは、ブ源県の李坑という観光スポットです。李坑はブ源県の方言で"小さい渓流"という意味です。この村に住んでいる人々はほとんどが李という苗字で、みな古代からこの渓流の両側に住んでいる人たちです。そのため、この村は李坑と呼ばれているのです。李坑はブ源県の中心部から12キロ離れた穏やかできれいな場所です。現地の人のコメントです。
「ここはまるで桃源郷のようで、ここにいると気持ちがとても安らぎます。小さな橋、流れる水、特徴的な建築スタイルの住宅があり、まるで中国の水墨画のようです。特に渓流のほとりに住むのは最高です。窓を開ければ、すぐそばに川の流れを見ることができ、とても気持ちが良いです」
観光客の鮑秀英さんは、感想を語ってくれました。
「ここが大好きになりました。特に、古代の文化財や古代文化が見られ、これは観光する価値があります。ここの文化財はこれまで破壊されたことがなく、保存状態がとてもいいです。今回は家族全員で来ました。家族もこの旅に満足しています」
中国の一番美しい村、ブ源県は素朴で、人々と自然が調和しています。多くの人がここを訪れ、心穏やかに静かに過ごします。悩みや不安を忘れてリラックスすることができます。皆さん、もし時間があれば、ブ源県を訪れてみませんか。 (担当:任春生)
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