2月3日は旧正月「春節」です。中国人にとって、春節は一年の中で最も重要な祝日で、春節期間中、中国各地、さらに海外の華人が集まる場所で様々な伝統行事が行われます。その中の多くは昔から伝わってきた風習です。

　今回の番組では、春節を祝う音楽をお届けしながら春節の風習についてお話して参りました。

　中国人にとって、春節を賑やかに過ごすのは当たり前のことです。そのため、1ヵ月前から仕度を始めます。「年貨」、春節期間中に必要なものの買い付けは一大事です。それには、家族が着る洋服、年始回りに必要な差し入れ、門に飾る「福」の字、「春聯」、家にかける「農民絵」、大晦日などに鳴らす爆竹などが含まれます。

　「福」の字は幸せや福運をもたらすものとされ、春節に「福」の字を貼るのは、幸せな暮らしへの憧れを表しています。この願いをより強く表現するには、「福」の字を逆さまに貼ります。「逆さま」は中国語で倒すという字「倒」と書きます。「到来」の「到」の発音と同じですから、「幸せが来た」、「福が来た」という意味となります。さらに、「福」の字を長寿のシンボルの寿星、桃、また、五穀豊穣などの模様にすることもあります。

　「福」の字を逆さまに貼る様になったきっかけとしてこんな民話が伝えられています。清の時代、ある親王の家で、使用人が主人を喜ばせるために大きな「福」の字を書いて、召し使いに門に貼らせましたが、召し使いは字が読めなかったので、それを逆さまに貼りました。それを見た親王は、怒って召し使いを鞭打ちしようとしたのです。しかし使用人は機転が利く人で、とっさにこう言いました。「親王は長生きで福の大きい人だとよく聞いています。今、ここに大きな福が到来しました（逆さまになった）。これは吉祥の兆しではないかと思います」。この一理ありそうな話を聴いた親王は「道理で道行く人々が門を見て福が来たと口々に言っているわけだ」と納得し、使用人と召し使いにそれぞれチップを与えました。それからというもの「福」の字を逆さまに貼る風習が始まったのです。

　今年の1月26日は旧正月の12月23日で、この日は「小年」と言います。つまり、この日から正月行事が始まるということです。中国には台所の神様「灶王（釜の王）」がいるという伝説があり、世の中の仕事に関する全ての事をつかさどって、人々の行いを監督する神様と言われています。「灶王」は旧暦の12月23日に玉皇上帝に人々の行いを報告します。そこで、この日、灶王を奉り、いいことを報告するようにと飴と小麦子で作られた「糖瓜」を供えます。

　そして翌日の、旧暦12月24日は大掃除をする日です。

　春節は家族団らんの祝日ですから、どこで何をしていても大晦日の昼までに両親の家に帰ります。

　大晦日で一番大事な風習は「守歳（歳を守る）」です。昔の「守歳」には2つの意味があり、年配の方の「守歳」は「行く年を送る」、時間を大事にする意味があります。若者の「守歳」には両親の寿命を延ばす意味があります。過ぎ去った日を懐かしみ、新しい一年に希望を馳せる、そんな意味です。

　「拝年」は日本の年始回りのようなものですが、中国の場合、家族から始まります。旧正月の１日、目下の人が朝起きてから、目上の人に「拝年」をして、健康や長生き、どんなことも上手くいくように願います。目上の人が用意した「圧歳銭」、お年玉を目下の人に与え、新しい年での健康と吉祥を祝うのです。家の中の目上の人に「拝年」してから、近隣や親族、友人の家を訪れ、挨拶をします。1980年代以降、香港や広東などで流行っている年始回りの挨拶「恭喜発財（儲かりますように！）」という言葉が改革開放の波に乗って、全国で聞かれるようになりました。

　春節には様々な出し物があります。よく見られるのは獅子舞、龍舞、紙で作った竜の船に立ち、手で扇子を振りうごかす「跑旱船」、高足踊り、ヤンゴー踊りなどです。春節期間中の楽しみのひとつに「廟会」があります。これは日本の縁日のようなものです。最初の「廟会」は市場とよく似ていましたが、春節期間中の「廟会」はただの商品売買だけではなく、色々な出し物を楽しむ場所でもあります。（謝東）