喩湘蓮(ゆ・しょうれん)さん(70)は1940年に無錫で生まれ、1955年に泥人形工芸の世界に入りました。そして1993年に、輝かしい功績を収めた工芸家や芸術家に贈られる国家レベルの称号「中国工芸・美術の巨匠」を受賞し、2007年には無形文化遺産の代表的な継承者にも選ばれました。この40年間、喩さんは400体に上る無錫泥人形の修繕を手掛けてきました。また、喩さんが生み出した多くの優秀作品は日本やアメリカ、オーストリア、ブラジルなど10カ国以上に出展され、優れた恵山泥人形を集めた精選作品集にも収められています。さらに、京劇の名作「覇王別姫」(はおうべっき)などの伝統劇を題材とした作品5作品と歴史作品を複製したもの23作品が中国民間美術館に所蔵されています。このほか、京劇「海瑞罷官」(かいずいひかん)「十五貫」など13作品が南京博物館に、喩さんが制作した「大阿福」が中国工芸美術館に所蔵されています。
泥人形と普通の粘土彫刻とは大きく異なる、と語る喩さん。手びねりを主として作られた泥人形と、削ることを主とした粘土彫刻とでは、イメージが全く異なるそうです。
「蘇州市博物館に清朝末期から中華民国初期における蘇州と無錫の名作が保存されています。それらを複製して出展しようと思い、大学の彫刻学科の先生を招いたんです。ところが結局、半年かかっても1つも出来ませんでした」
喩さんは、ここから塑像を手びねりの代用とすることはできないことが分かるといいます。「あまりふさわしい例ではないかもしれませんが、数学で例えると、彫刻は減法、塑像は加減法であるのに対して、手びねりは加減法と乗除法の合わせ技なんです」
喩さんによると、具体的な手順は、お土産用の泥人形の場合、おおまかな輪郭をまず作ってから、形を徐々に調整していきます。この調整の過程で、何度も粘土を足したり、減らしたりして形を整えます。工芸品の場合は、脚に始まって、下から上、中から外へといくつかの段階を踏んで一気に形をつくります。そして最後に人形の姿勢を調整します。飛び抜けた腕前を持つ職人であれば、仕上げの段階で、泥人形からいきいきとした表情が溢れ出すといいます。一方で、粘土彫刻の形はひと息に仕上げる必要はなく、繰り返し調整して徐々に完成させることができます。制作時間は3-5日から1週間、さらに長くかけることもあり、この調整は主として道具で行われます。これに対して、泥人形は一貫性が重んじられるため、その日のうちに仕上げなければならず、日を跨ぐことはできません。(翻訳:芋)
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