~中国における訴訟・仲裁制度のご紹介~
当事者間で経済的紛争やその他財産権益に関する紛争が生じた場合、『中華人民共和国仲裁法』や『中華人民共和国契約法』等に基づき、当事者の約定した仲裁委員会に仲裁を提起し、又は人民法院に訴訟を起こすことができます。仲裁と訴訟は、どちらも紛争解決の手段であり、法的効果の生じる法制度として中国現行法上の定めにより運用されていますが、異なる点もあります。では、仲裁と訴訟はどのような特徴があるでしょうか。本稿は中国の訴訟と仲裁制度を比較し、共通点や相違点を簡単にご紹介いたします。
一、訴訟と仲裁の共通点
① 紛争を処理する主体は、国家法律の規定により設立された専門機関である(訴訟の専門機関は人民法院、仲裁の専門機関は仲裁委員会)。
② 定められたプロセスに従って進行しなければならない(訴訟は訴訟規則、仲裁は仲裁規則)。
③ 規則、制度の一部は共通している(例えば、保全措置、調停、回避、時効などの制度は、訴訟と仲裁の両方に存在する)。
④ 法的効果が共通している。訴訟の判決も仲裁の裁決も、双方当事者は全面的に履行しなければならない。何れか一方が履行しない場合、相手は強制執行を申請することができる。
二、 訴訟と仲裁の相違点
訴訟と仲裁は、いずれも契約紛争その他財産権益紛争を解決することができるが、次のような大きな違いがある。
① 管轄:
訴訟の管轄には、地域管轄と級別管轄の制度があり、強制力がある。一方の当事者が管轄権を有する法院に提訴した場合、法院が受理した後は、相手方当事者は必ず応訴しなければならない。
これに対し仲裁は協議管轄の制度があり、双方当事者が自由意志でどこの仲裁機関で仲裁すべきかを約定できる(このような約定を仲裁条項という)。
当事者が仲裁条項を定めた場合は必ず仲裁によって紛争解決を図らなければならず、裁判所に問題を持ち込むことができない。仲裁条項は紛争が発生する前に定め、又は発生後に定めることもできる。仲裁条項を定める場合は、仲裁を行う機関と仲裁事由を明確に約定しておかなければならない。
② 受理範囲:
訴訟は一切の民事紛争を処理することができ、一般的な紛争解決手段として存在する。
これに対し、仲裁委員会は平等な主体間で発生した契約紛争とその他の財産権益紛争だけを受理し、婚約、相続などの家事事件を受理しない。仲裁は商事の性質があり、訴訟で取扱う紛争の一部に限られる。
③ 開廷審理の原則:
法院は原則として公開で審理を行う。国家の秘密又は個人のプライバシーに触れる一部の案件については非公開で審理を行うことができる。
これに対し、仲裁廷は一般に非公開で審理を行う。当事者間の商業秘密やビジネス上の信用を守るうえで有益である。
④ 審理担当者の選択:
訴訟事件の審理人員(裁判官や書記官など)は法院が指定するので、当事者は選択できない。
これに対し仲裁事件の場合は、双方当事者が仲裁委員会や仲裁廷の構成人数を約定することができるほか、当事者も仲裁人員を選定することができる。
⑤ 終結までの時間:
訴訟は二審終審制であり、仲裁は1回の仲裁で終結する制度である。
仲裁は訴訟より審理の終結が早いと言える。
三、 特殊な仲裁――「労働仲裁」
中国の法律規定に基づき、労働に関する紛争が解決できないとき、いきなり訴訟することはできない。まずは労働仲裁を経なければならず、仲裁の結果に不服がある場合は法院へ訴訟を提起することができる。労働仲裁には次の特徴がある。
① 労働仲裁は、当事者間(労使双方)の約定(仲裁条項)が必要ない。当事者は労働仲裁に直接提起することができる。
② 労働仲裁は一回限りであり、労働仲裁の結果を不服とする場合、裁判で争うことができる。裁判は一審から始まり、一審に不服の場合は二審もある。
③ 労働仲裁の解決においては『中華人民共和国労働争議調停仲裁法』を適用する。
各種ビジネスで契約を締結する際は、自社の状況に応じて、紛争解決の条項をどのように約定したらよいか、また仲裁を選択するべきかどうかなど、多角的に分析したうえで、必要に応じて弁護士などの専門家にお尋ねになるとよいかと存じます。
以上は上海共同総合法律事務所(日本福庚外国法事務弁護士事務所)の張福剛弁護士(E-mail:fugang.zhang@kyodo-lf.com )により提供されたものです。
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