北京五輪では、スポンサーが五輪公園の中に展示ブースを設け、企業文化や製品をPRすることが認められています(もちろん、有料)。北京五輪の理念は「緑色五輪(環境にやさしく省エネを重視する)、人文五輪(文化の深さを五輪の関連活動に溶け込む)、科技五輪(ハイテクを活用する)」です。スポンサーは、この三つのテーマを、各自の展示ブースのセッティングに工夫して盛り込んでいます。しかし、これらの理念を具体化して、人々の印象に残すことはなかなか難しいです。実は、15軒のブースの中、私の印象に残ったブースは一軒だけでした。
まず、この写真を見てください。
これは、五輪セントラルエリアの放送中継タワー、国家スタジアム(愛称:鳥の巣)、緑いっぱいの芝生のほか、特別なものはありません。しかし、広角レンズで同じ場所を撮ると、珍しい風景が見られます。
なんと、この芝生は地面にではなく屋上と外壁に張られているものです。この建物は中国のある大手石油企業の展示ブースで、長さ50メートル・幅20メートル・高さ10メートルの展示ブース全体が芝生に包まれています。
「このブースを訪れる中国人でも外国人でも、からなず壁に張られている芝生に触りたがります。触ってみると、かならず『あっ、本物だ』と驚く」と展示ブースの案内係が教えてくれました。
「建物全体を芝生で包んだのは、世界中でもここだけですよ。ほかの会社は絶対に真似できない」と芝生の敷設を担当する毛宇さんは自信満々に話しました。
90度の角度となる外壁に芝生を植えることはなかなか不思議なもの。毛宇さんの話によると、芝生がはかれ落ちないようにするため、土壌の代わりに特別なマットを使用しています。
この芝生のコスト面について聞きましたが、毛宇さんは、「商業秘密です。正直に言うと、芝生の費用は一般のものとほぼ同じですが、人件費が高いです」と話しました。
毛宇さんは、環境保護の関連施設やサービスを提供する私営企業の取締役で、北京には面積28万平方メートル、上海には面積25万平方メートルの土を使わない芝生の生産工場を持っています。この毛宇さんの工場は、布を織るような形でマット付の芝生を生産していて、年間生産量は500万平方メートルに達しています。このような生産規模を持つ企業は、おおきなマーケットの支えられていると考えられます。
それでは、こういう芝生を植えるメリットとは一体なんでしょう。
まずは、光熱費が抑えられること。
このブースには2400枚の芝生が使われています。ブースの外壁と内壁の間には、60センチの保温層があります。室外と室内の温度の差は常に10度の差を保つことができます。例えば、正午、室外の気温が35度あっても、室内の温度は25度しかありません。エアコンを付けなくても涼しいです。同じ面積の普通のブースは、毎月の光熱費は200万元ですが、このブースの光熱費は毎月10数万元だけです。光熱費に、芝生のコスト、敷設にかかる人件費、メンテナンスの費用を加えても、毎月の費用は70万元弱です。200万元から70万元にと、130万元も節約できました。
それに、土を使わない芝生のマットは水分をたくわえることができ、土に植えた芝生と比べて、水を節約できます。普通の芝生では、毎月の水やりに10トン必要ですが、土を使わない芝生は毎月0.9トンの水しか使いません。
毛宇さんの会社が生産した芝生は中国国内だけでなく、フランスやアメリカなどに輸出されています。毛宇さんは、遠くに見える「鳥の巣」を指しながら、「チャンスがあれば、鳥の巣を文字通りのバーズ・ネスト・鳥が暮らす巣にしたい」と笑いを交えながら抱負を語りました。(文章・写真:姜平)
|