北京五輪では、北京のほか、天津、上海、香港などでも競技が行われますが、そのうち北京では、全部で31の競技場が設置されています。とくに北京の競技場は、大学の体育館を改造し、あるいは大学の中に新たに造ったことが大きな特徴です。
北京には、大学内に設けられている競技場は全部で6つありますが、その中には、中国農業大学体育館が、大学の中に建てられた初めての競技場となります。ここでは、レスリングが行われます。
責任者の王立剛さんがボランティアに仕事について説明
中国農業大学体育館は、北京五輪のメインスタジアムの国家体育場から西へ2キロくらいのところにあります。ピラミッドに似た近代的な建物で色は黒。正面には入り口の上部に大きな五輪マークが掛けられています。この体育館は、建築面積2万3950平方メートルで、8500人を収容できます。ここの準備状況について、責任者の王立剛さんに聞いてきました。
「競技場の内部は、ほぼ準備ができています。あとは、選手の得点を記録する採点システムの調整などの細かい作業だけです」
競技場の建設では、当然、レスリング場の設置がとても大事だといわれています。王立剛さんらは、その作業中いろいろ苦労したそうです。
農業大学体育館の中
「レスリング場を組み立てる作業にけっこう時間かかりました。レスリング場は1枚1枚の板で組み立てられたものですが、板の下に空間があるとだめです。だから、アマチュア選手に来てもらって、実際にレスリングをやってチェックしてもらいました。板の上に倒れたとき、地面から耳をつんざくような高い音がしなければ合格です。1つのレスリング場には大体109枚の板がありますが、全部試してもらいました」
そして、この競技場では、いままでにない試みをしているのです。それは、レスリング場のそばに、展示台を設けることです。試合開始前に、この展示台に一度、選手に上がってもらって、観客に向けて挨拶ができるように工夫されているのです。
実は、中国がこの試みを去年の五輪テスト大会のときにやってみたのですが、国際レスリング連盟から評価され、北京五輪の本番でもやればいいのではないかと勧められました。それで、正式に取り入れたのです。
五輪期間中、皆さんがレスリングを見に来ると、選手がレスリング場に上る前に展示台に上がって自己PRを行うのが見られるというわけです。試合前に、観客に挨拶して拍手や喝采をもらう、これから試合をするぞ、という意気込みを示すことになります。
ボランティアの劉軍淇さん
また、ここでは、ボランティア活動も始まっています。ボランティアの一人、中国農業大学三年生の劉軍淇さんに話を聞きました。
「ここに入ったとき、まだ、私の大学にオリンピック競技場が設けられるとは知らなかったのです。ただ、せっかく北京にいるから、オリンピックに関する知識を学ぶとともに、現場の雰囲気を味わいたいと思ってボランティアに応募しました。そして、うちの学校でレスリング競技場が建てられて、ここでボランティアをやることになったのです」
劉さんは、競技場の周辺で交通の誘導を担当します。試合を直接見ることはできませんが、五輪の体験になると話します。
「私は、競技場の外で、主にメディアの車両を指定の場所へ案内する仕事を担当します。中に入って試合を見ることができませんが、ここに来る皆さんにサービスをすることも、オリンピックを体験することになると思います」
安全検査担当のボランティアたち
農業大学体育館では、7月27日からボランティアおよそ1000人が全て配置につきました。食品安全のため、これまで学校の食堂で食事をしていた学生ボランティアたちは、すべて北京五輪組織委員会が指定した場所で食事をとるようになり、そして学校を出入りする車両に対しても、安全検査を実施するようになりました。
ボランティアの準備について、同じく農業大学三年生の馬洪飛さんは、こう話します。
「いまは、オリンピックの本番と同じように準備しているのです。だから、自慢じゃないですけど、明日、オリンピックが開幕しても大丈夫です」
こんな、北京五輪レスリング競技場の中国農業大学体育館ですが、ここでは、合わせて18個の金メダルが誕生します。レスリングといえば、日本もメダル獲得がかなり有力な競技の一つですから、皆さんも五輪期間中、この農業大学体育館のレスリング場をテレビで目にすることがあるかもしれません。
(取材・撮影:姜平 翻訳:鵬)
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