<中国人民銀行が利上げ発表>
中国の中央銀行である中国人民銀行は先週土曜日(17日)、人民元の預金基準金利と貸出基準金利の引上げを発表しました。それによりますと、中国人民銀行は3月18日から、金融機関の一年ものの普通預金の基準金利及び貸出の基準金利をそれぞれ0.27%引き上げて、預金基準金利は現行の2.52%から2.79%に、貸出基準金利は6.12%から6.39%に引き上げられます。その他の基準金利もそれぞれ調整を行うことになっているということです。
それに先立って、16日に終了した全人代の記者会見で、温家宝首相は、中国経済には「不安定、不均衡、不調和、非持続的と言った構造的問題がある」と指摘した上で、この中の「不安定」とは、つまり、「投資成長率が高すぎて、信用貸付への投入も多すぎて、貨幣の流動性が大きい。さらに、国際収支の黒字も多すぎる」ことを指すと説明を加えました。
一部の経済学者は、温首相のこの発言はすでに、「利上げをほのめかしたもの」だと見ており、また、週末を選んで発表したタイミングについて、「市場関係者に利上げの意味を消化するための時間を与えたいからだ」と見ています。 また、昨年末からのCPI・消費者物価指数の継続的な上昇なども、人々に金利の引き上げを予想させる判断材料になっていたと見る人もいます。
<利上げに踏み切った背景>
今回の利上げのマクロ的な背景に、まずはインフレへの懸念があげられます。早くも、今月初めに、中国人民銀行の周小川総裁は、「インフレは政策金利を決める際の重要な要素だ」と述べたことがあります。
昨年12月から、中国のCPI・消費者物価指数は、連続的に2%以上の伸び幅が続いてきました。そして国家統計局は3月13日、2月のCPIの上昇幅は2.7%だったと発表しました。この上昇幅は、昨年12月の2.8%よりはやや低いものの、1月の2.2%を上回っています。ちなみに今年1年間のCPIの規制目標値は3%以内となっています。一方、中国では、これまでの一年ものの普通預金の利息は2.52%にとどまっています。これはつまり、現在の消費者物価指数の伸び率が続けば、1年ものの預金をしても、20%の税金が引かれた後には、事実上収益がマイナスになるという計算になります。このことが、中央銀行の利上げの決定に、大きな圧力を与えたと言えます。
二番目の要素は、貿易黒字の拡大による金余り現象で、銀行融資が急増したこと。中国税関総署の発表したデータでは、2月の中国の貿易黒字は月間の新記録を更新し、237.57億ドルに達しました。海外から多くの資金が流入してくるにつれ、今年の1月と2月、銀行の融資額が急速に肥大化してきました。中国人民銀行の統計データでは、2月だけでも、新規融資額が4138億元に達し、昨年の同じ時期に比べ、2647億元の伸びとなっています。
このことについて、HSBC・香港上海銀行のチーフエコノミストの屈宏斌さんは、「季節的な要素を取り除いたとしても、年間にすると、新規に4億5千万元の貸付が増える計算になり、中央銀行の目標数値を大幅に上回ってしまう」と指摘しました。
また、ゴールドマン・サックス中国のチーフエコノミストの梁紅さんは、「もしも貨幣総量と貸付が引き続き、急速な伸び率を見せれば、需要の急速な増加と新たなインフレを招きかねない。そういう意味で、利上げは効果的な引き締め措置になるだろう」と指摘しています。
<利上げの総合評価>
中国は、昨年まで、何度も人民元の預金準備率(銀行の預金高に対する中央銀行に預け入れる資金、つまり、預金準備高の比率)を引き上げてきました。専門家筋は、預金準備率の引き上げよりも利率の引き上げのほうが、より厳しい規制手段だが、ただし、0.27ポイントという上げ幅は、たいへん緩やかな幅だと見ています。このような厳しさと緩やかさを持ち合わせた政策決定は、政府が経済のオーバーヒートを抑える決心を示すと同時に、マクロ規制の手段が日増しに成熟化していくことをも表しているものと見られています。
今回の利上げに対して、主として、以下の三つの面での効果が期待されています。第一に、貨幣の信用貸付と投資の合理的な成長、第二に、物価指数の安定化、第三に、金融システムの健全な運行。最終的に、中国の経済が健全で、バランスよく成長し、産業構造の最適化に効果が期待できると見られています。
なお、今回の中央銀行による利上げは、去年8月以来、7ヶ月ぶりのことです。今回の利上げの影響や今後の成り行きなどについて、様々な視点からの分析がありました。
市場への影響について、経済評論家の水皮さんは、「株式市場への影響はそれほど大きくはない。しかし、不動産業界が最も大きな影響を受ける。利上げは貸付のコストを高めるだけでなく、住宅の購入ニーズをも抑え、不動産株は調整せざるをえない圧力を受ける」と述べ、さらに、「今後も引き続き金利の引き上げが予想されているが、必ずしも年内とは限らないのではないか」と見ています。
上海財経大学証券研究センターの金徳環教授は、今回の利上げは「妥当な規制手段」で、「0.27ポイントの上げ幅は安定的、かつ漸進(ぜんしん)的なもので、経済にそれほど大きな影響を及ぼさないだろう」と見ています。ただ、利上げの金融引き締めの効果については、一定の効果が期待できるものの、たいへん限られたもので、「それよりも心理的な効果のほうが大きいのではないか」と金教授は見ています。
一方、 ジャーナリストの侯寧さんは、「今回の利上げは、中央政府が経済発展の過熱状態を抑えていく決心を示したシグナルで、もし功を奏すことが出来なかった場合には、再度の利上げ発表や引き続き、預金準備率を引き上げていく行動に踏み出すだろう」と見ています。
さらに、今回の利上げは、経済発展に対するプレッシャーを軽くすることはできるが、住民の消費ニーズの拡大や、融資構造の調整にマイナスの影響を及ぼしがちで、預金高と貸出高の差額を一層広げ、人民元切り上げのプレッシャーを高める恐れがあるという懸念の声も聞こえます。
業界筋は、今回の利上げについて、中央銀行が貨幣政策の手段の選択で多様化を示したものと見ています。(新華ネットより、翻訳・整理:王小燕)
|