2005年、中国経済は9.9%成長を達成しました。経済規模で世界第4位に躍進、貿易額では第3位、そして外貨準備額では第2位です。かりに人民元が切り上がるようなことがあれば、世界経済における中国のプレゼンスはさらに高まることになります。
中国が経済大国になったのは、「外資を導入し、モノを作り、輸出してきた」という成長パターンが大きく貢献したからです。それには良好な対外関係の維持・発展が中国の持続的経済成長に欠かせなかったわけで、それは今後も変わらないと思います。
21世紀に入り、中国は周辺諸国・地域との経済関係を急速に発展させ、緊密度を増しています。代表的なケースは東南アジア諸国連合(ASEAN)との自由貿易協定(FTA)交渉でしょう。最近では、インドやロシアとの経済関係の展開にみるべきものがあります。2005年には、4月に温家宝総理がインドを訪問、また、中ロ両国では胡錦涛主席とプーチン大統領が4度も会談するなど、中?印、中?ロ関係は大きく前進しました。中国は今年を「ロシア年」「中印友好年」としました。
中国は「世界の工場」、インドは「世界のバック・オフィス」といわれます。ということは、中印両国の経済交流には相互補完的なところが多いということです。両国の代表的産業の1つであるIT産業についていえば、中国はIT製品の製造に、インドはその研究・開発に優れています。ハードとソフト、即ち「軟硬協力」の余地が大きいといえます。
一方、2005年の中ロ貿易をみると、291億ドル(前年比37%増)と大きな伸びを記録しましたが、伸び率では、ロシアは中国の主要貿易相手国・地域の中で最高水準でした。中国にとってロシアは8番目の貿易相手国であり、ロシアにとって中国は4番目の貿易相手国となっています(2004年)。
今年3月、プーチン大統領が訪中し、中国の「ロシア年」の幕が切って落とされます。今年両国は、政治、経済、技術、軍事分野で250余項目の協力関係を構築する予定です。近隣諸国の中で、中国はロシアと最長の国境線を接していますので、友好関係は両国に大きな恩恵をもたらすということになります。
国境問題や歴史的要因などで中印関係、中ロ関係には未解決の問題があり、順風満帆とはいえない面もありますが、成長著しいアジアと欧州の3大国が、かつての対立関係を乗り越えて、「小異を残して大同に就く」積極姿勢を見せているのは、21世紀初頭のエポックメーキングな現象といってよいでしょう。
中国の近隣諸国はインドやロシアだけではありません。韓国は対中貿易、投資関係もさることながら、昨年、日本やEU、米国に先駆けて、中国の「市場経済国」の地位を承認するなど、中国との関係を密にしています。
嫌中意識が強いといわれるモンゴルとの関係はどうでしょうか。中国を意識した開発区や物流網の建設などを通じて経済発展を遂げようとする姿勢が感じられます。近隣諸国で中国と気まずい関係にある国はもうなくなったということでしょうか。
翻って、アジアの経済大国である日本との関係はどうでしょうか。「政冷経熱」の関係から「政冷経温」の関係になるのでは、と懸念されている現状です。「一衣帯水」の関係にある両国が「小異を残して大同に就く」精神で大事に発展させてきた関係が、このままでよいと思っている人は少ないはずです。中印、中ロ関係同様、日中関係の改善を期待したいものです。 (江原規由・『人民中国』より)
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