次はかの「三国志」にも出てくる「望梅止渇」です。「世説新語・仮橘(かきつ)」という本からでたということ。これは梅をみて渇きを癒すという意味ですかね。
ある年の夏、曹操は軍を率いて張綉討伐に出かけたが、その日はかなり暑く、空には雲ひとつない。こうして軍は山道に差し掛かり、小さな林に入ったが、木や岩は照りつける陽によって焼けるように熱くなり、兵たちは暑い上に息苦しくなり、昼ごろになってやっと丘の下にやってきた。そのとき、持ってきた水はもう途中で飲み終わっていたので、兵士たちはのどがカラカラだった。こうして兵士たちの歩みも遅くなり、中には疲れとのどの渇きで倒れるものも出た。
これに曹操は慌てた。もちろん、、自分ものどがひどく渇いているが飲む水はなかった。
「これはいかん!この様子では戦機を怠るわい。これでは早く進みこともできない、何とかせねば」
と、曹操は横にいる腹心に聞く。
「この近くに川や泉はないのか?」
「はい、残念ですが、地図にはそのようなものはございません。あるとすればあの遠くの山を越えたところに泉が・・・」
「いかん、そんなことをしていれば、今度の戦には勝てぬ」
こういって曹操は馬を走らせ、前方にある林の前まで来た。そこで馬をとめてしばらく考えたあと、道案内に「わしに考えがある」といい、兵士たちのところに戻って鞭を振りかざし大声を出した。
「みんな。よいか!前の林の中に多くの梅の樹がある。今さっきわしは見てきたが、樹になっている梅は大きくかなりすっぱそうだ!いいか、もう少しがんばればそのすっぱい梅を口にすることができるぞ!がんばれ!」
これを聞いた兵士たち、すっぱい梅をすでに口に入れたような気がし、瞬く間に多くのつばが口の中に広がったのか、急に元気が出てきて足取りも速くなったという。
へえ!青い梅はかなりすっぱいものですが、それを想像するだけ元気が出るんですね。
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