こうして風はどこか行ってしまった。こちらネズミ、風の話に首をかしげていたが、そういえばその壁は昔からそこにどっしりと構えている。
「そうか?風が強くとも厚い壁を吹き飛ばすことはできないんだな」
そこでネズミは、壁のところまで来た。
「もしもし。壁さん」
「おお!なんだい?いやな奴が来たね」
「なんです?挨拶しているのに、変なこといわないでくださいよ」
「でも仕方がないだろう?わたしはネズミが嫌いなんだから」
「ええ?私らネズミが嫌いだって?」
「ああ。それより、なんだい?用があったらはやく言ってくれ。そしてどこかへ行ってくれよ」
「ひどいね。実は、今日はあんたのことを褒めにきたんだよ」
「なんだよ!気持ち悪い」
「まあ、聞いてくださいよ」
「ああ。わたしはネズミは苦手だから用があったら早くしてくれよ」
「はい、はい。実はあんたはこの世で一番偉いんだね」
「ええ?何の話だ?」
「この世で一番偉いって言ってるんですよ」
「ええ?!このわたしが?」
「そうですよ。実は・・」とネズミはこれまでお日さま、雲と風に聞いたことを壁に話した。これを聞いた壁はしばらく黙っていた。
そこでネズミは続けた。
「ということで、壁さん。あんたがこの世で一番偉く、一番すごいことになりますよ」
これに壁は、驚いたように答える。
「冗談じゃない!」
「なにが?」
「どうしてわたしがお前らネズミを嫌っているのか知らんのか?」
「え?どうして?」
「しらばっくれるな!」
「な、なんですよ!」
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