李双江さんは、中国で広く知られている民謡歌手です。1939年、中国東北部の都市・ハルビンで生まれました。子供のころから音楽が好きで、歌に対する強い思いから、北京の中央音楽学院に入学しました。そこで音楽の専門的な訓練を受けました。そして卒業後、北西部の新疆ウイグル自治区軍区芸術団、つまり新疆に駐留している中国人民解放軍の芸術団に入りました。そこで、10年間にわたって民謡を歌い続けてきました。
中国の新疆ウイグル自治区には、ウイグル族、カザフ族、タジク族など10あまりの少数民族があり、それぞれ独特の文化を持っているため、音楽もさまざまなタイプのものが共存しています。新疆に10年暮らしていた李双江さんは、「達坂城的姑娘(ダーバンの娘)」「阿拉木汗(アラムハーン)」など、数多くの新疆の民謡を学びました。これはのちに、彼の歌のスタイルを形成するのに大きな役割を果たしました。これについて、李双江さんは、こう語っています。
「音楽を勉強する人は、1度でもいいから、新疆に来てほしい。来なかったら、一生、後悔するかもしれない。なぜなら、新疆には豊かな音楽・文化があるからだ。われわれにとってそこは、大きな学校であり、音楽の宝庫でもある」
この大きな宝庫に、10年にわたって民族音楽の息吹を吹き込んだ李双江さんは、民謡を勉強しながら西洋音楽の要素を取り入れて、独特の歌唱スタイルを築いてきました。それは、明るいながらも厚みがあって、叙情的なスタイルです。このスタイルを活かしながら、歌の技を磨き、ついに中国トップの歌手に登りつめました。李さんは、これはすべて、新疆の民族音楽から「栄養剤」を吸収したおかげだと感じ、今後も、それらの音楽を大事にしていこうと思っています。
「新疆の音楽家は何百年も前からいままで、美しい歌や民謡をたくさん残してくれた。全部、各民族の財産となるものだ。それらの民謡から、少数民族の人々の心を感じ取ることができる。新疆の民謡はいま、新疆ばかりじゃなく、世界各地でも流行している。そんな中、新疆の音楽をもっと研究して、大事にしていくべきだと思う」
李双江さんは現在、解放軍芸術学院音楽学部で教鞭をとっています。新疆の民族音楽から得た知識や感動を今度は次の世代へ伝えていくためです。(鵬)
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