「なるほど、なるほど。それを聞かせてくれんか」
「はいはい、あれはいまから百年あまり前のこと。ある商人が地元のお茶"宇紅"を仕入れに来ました。実はその娘はこの地元のお茶"宇紅"作りの名人でもあったのです。そこで商人が山にある娘の家を訪ね、お茶をたくさん買い来たといいました。これに喜んだ娘は、商人にお茶を出したところ、商人はたまらなくなって、実は長旅で腹をぺこぺこにすかしているので、何でも良いから食べさしてくれと言い出しました。そこで娘は弟に手伝わせ、山の溝でとれるどじょうと豆腐を使って、自分が考え出したこの料理をだしたところ、商人はうまいうまいといって瞬く間に料理を平らげてしまったのです。もちろん、腹が減っていたこともあるでしょうが、料理がうまいことは確かでございます。そこで商人はお茶を仕入れ終わると山を降りて、この料理のことをその日泊まった宿の主に話しました。すると宿の主は、そんな料理があるとはこれまで知らなかったと、翌日、息子を山にやり、その娘に町に出てその料理を作って売らないかと話しに行かせたのです。この話を聞いた娘はそれではと息子と一緒に山を下りて、宿でその料理を作り、主に味見させました。もちろん、主はそのうまさに驚き、さっそく金を貸すから山を下りて飯屋を開いてはどうだと勧めます。そこで娘は山奥に何時までも住んでいるわけには行かないと、それまでのたくわえを持って弟を連れて山を下り、宿屋の主に言われたとおり、宿の近くで店を開きました。しかし、その元金は自分と弟がこれまでお茶で稼いだお金を使ったのです」
「そうか?えらい娘じゃのう」
「おっしゃるとおりで、娘は店で"宇紅"を言う美味しいお茶を出すほか、これまで自分が工夫を重ねたかの豆腐料理などを作って出したので、この店はまもなく知られるようになり、繁盛し始めたのです」
「そうであったか?ふんふん。で、そのあとは?」
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