「その人が、貧乏ではなく、また正直者であればいつでも嫁に行きます」と姫は言うが、そんな若者は簡単に見つかるものではなく、家来の自分としても何とか早く姫を嫁に行かせねばと、常に国王と共に頭を痛めていたのである。
「そうでござるか。で、失礼じゃが、兄上とはどんな人かな?」
「それは心が優しく、人思いの方でござる」
「そうでござるか・・・」
こちら古里は、相手が話しに乗るかもしれないと思っていたので、黙ってお茶を飲み、知らん顔をしていた。
すると、召使いは何かを決心したように、目を大きくし古里に言う。
「古里どの。実は国王の姫さまは、今年で二十七になられるが気に入った相手がいないといまでも一人でおられましてな。姫さまは、相手が貧乏ではなく人がよければよいと申されるが、そのような方はなかなか見つかりま せん。つまり・・どうでしょうかな?」
「それはよい話ですね。相手がお姫様とくれば、兄も必ず喜ぶでしょう」
「そうでござろう。で、姫さまとあんたの兄上を夫婦にさせたいのじゃが、これを国王に話せば、国王もそれはいい相手だとお喜びになるに違いない」
「なるほど、なるほど」
「そこで、あんたとわしとでことを進めましょうぞ」
「そういたしましょう。兄のほうは、私が引き受けます」
「はい。国王のほうはまかしておいてくだされ」
「では、そういうことで」
「いかにも」
ということになり、古里は帰っていった。こうして古里はうれしくなって準備を着々と進め、召使いのほうは、このことを国王にはなす。もちろん、国王はこの召使いを信じきっているので、喜んで「よきに計らえ」とはいわなかったが、早く事を運ぶよう命じた。また召使いがこのことを姫に話すと、姫は相手の人柄を聞き、はにかみながらも首を縦に振った。翌日、古里がまた王宮に来たので、召使いはことの仔細を話し、こうして、吉日を選び、ざくろ兄さんと姫様の式をあげることになった。
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